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《ドラマ》 anone

坂元裕二脚本のドラマ、「anone」を観終わった。あ〜良かった。最終回は涙が止まらなくて、ずっとティッシュを手に持ちながら観ていた。

このドラマはリアルタイムで観ていたんだけど、けっこう忘れている部分が多く、というかたぶん、その時には今みたいに分かることが少なかったから、なんとなく観てスーっと消化してしまっていたんだと思うんだけど、全然違う印象ですごく良かった。


まず、すずちゃんが可愛いね。演技がすごく良い。普段のボーイッシュな服装に前髪の長いショートヘアが似合っているし、亜乃音さんが買ってくれた花柄の赤いワンピースはそわそわしていて可愛い。あの役はすずちゃんでないとしっくりこないと思う、というほどにすずちゃんが似合っている。

亜乃音さん役の田中裕子も。「Mother」のうっかりさんと、「Woman」の母親と、「怪物」の校長先生を直近で観ているから、なんとなく身構える所があったけれど、「anone」では、上手くいかないところもあるけれど、暖かみがあって優しくて、本当にお母さんっていうような役柄で、安心して観ることができた。

あと瑛太がすごいよね、作品を観れば観るほどに思うんだけど、途中で瑛太だっていうことを忘れてしまう。だって、「最高の離婚」の光生さんと同じ人だとは思えないし、最近だと「あなたがしてくれなくても」の陽ちゃんも嫌すぎて、瑛太に見えなかったもんね。

余談だけれど、瑛太が出ている作品は、「オレンジデイズ」と「まほろ」と「アヒルと鴨のコインロッカー」が好き。「最高の離婚」と、「それでも、生きてゆく」も。


このドラマを観ている途中で、これは普通にできない人たちの物語なんだな、と思った。そして、自分の居場所がなくて、宙ぶらりんな人たちの。

他の坂元作品でもよくあるんだけど、血が繋がっていなくても、一つ屋根の下で暮らして、一緒にご飯を食べれば家族のような存在になれること、そうやって助け合って、お互いを大事に思って生きていくことが自分の支えになること、そういうことを大切に描いているような気がした。


机を囲んで、ご飯を一緒に食べるシーンがすごく好き。ハリカちゃんが子供のように、聞いてほしいこと面白かったことをいつまでも話しているシーン、きっと子供の頃には体験できなかったことを、家族のような人たちに出会えて、嬉しくて安心して、話したくなっちゃったんだと思うと、良かったねって微笑ましく感じる。

亜乃音さんや青羽さんや持本さんもそういう優しい表情をしていた。自分たちも辛い経験をしてきたからこそ、ハリカちゃんが伸び伸びしてくれることが嬉しかったんじゃないかなって。


それと同時に、こうやって犯罪を犯すことでしかコミュニティを作ることができないっていうことに、なんとも言えない気持ちになる。けれど、実際にそういうことってあったりするんだろうなって。

今回の偽札を作るきっかけは、脅されてとか、助けてもらった恩があるからとか、そういう理由だったけれど、秘密を守るという義務があったからこそ、関係が深まったというか。でも悪いことをしたおかげで、そういうことに巻き込まれたおかげで、仲間に出会えたとも言えるし。


“でも亜乃音さんもそうだけど 青羽さんも持本さんもそうだけど
誰も誰かを恨んだりなんかしてない
つらいからって つらい人がつらい人傷つけるの
そんなの一番くだらない バカみたい”

中世古さんは世界を恨んで生きていたけれど、同じように辛い過去があって、世界を恨んでもいいはずのハリカちゃんにこう言われた時に、確実に何かを受け取っていて。

悪いことをしたけれど、人を傷つけてきたけれど、こうやって真正面から言ってくれる人がいて良かったねって思う。これからは自分が辛くない生き方ができるといいね。


そして、一概に悪いことだけじゃなくて、その出会いがなかったら今の自分がいないから、そういうことも引っくるめて生きていくんだっていうハリカちゃんが強くて輝いて見えた。

“人生はやり直せる”と言うけれど、積み重ねてきたものは確実にあって、良くも悪くも、それがあるから今の自分がいるわけで、それはやり直すんじゃなくって、乗り越えていくものだよなあと思ったりする。

ハリカちゃんも初めは、自分はどうなっても良いと言っていたけれど、亜乃音さんや青羽さんや持本さんと過ごす中で、人として大切にしてもらって、だから自分のことを考えられるようになったんだって思うと、良かったって思う。彦星くんとの関係もそうだよね。


“大切な思い出って支えになるし お守りになるし 居場所になる”

“人生何がうれしいって 悲しくて悲しくて やりきれない出来事があっても
いつの間にか笑えるようになるんだな〜って”


そうやって、居場所がなかった、普通になれなかった人たちが、自分たちで居場所を作って、それを大切に思って、その場所を支えにして生きていくっていう物語なんだなって思った。


そういう、人が関わることの暖かさを坂元裕二は書いていることが多くて、どういう考えを持って、生きているんだろうって思う。ドラマ自体が優しさの塊なんだよね。

小さいところで言えば、悩んでいる誰かの心が軽くなれば良いなというメッセージに見えるし、大きく言えば、この世界を良くしたいという思いを感じる。作品を観る人のことを考えて作っている気がするから、人類愛みたいなものを感じるから、好きなんだよね。

日テレ系坂元作品の3作目ということだけれど、他の2作(MotherとWoman)みたいな社会的問題を感じるテーマでもありつつ、坂元作品特有のポップでテンポのいい会話劇も観られて、バランスの良い作品だった。


ということでとりあえず自分の中のゴールまでたどり着いたので、次は本を買って読むことにする。楽しみだな。


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