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ふたりが近づく様子

話がしたい、言うなれば
声を聞きたいから電話をしよう。

なんて、俺にもわたしにも言えそうにない。
そう思ってひとまずワン切り。
切るのが早すぎた。
せめて2秒、いや1.5秒はコールを待つべきだった。
メッセージは送らないでおく。
折り返しがあったらすぐには出ない。
3コールは待ってみる。

「何かあった?」優しい声がした。

電話の向こうで電車の音が聞こえたから
家は駅の近くなんだろうと思った。
そういや、どの辺りに住んでるんだろう。
まだ俺とわたしはそこまで踏み込んだ仲じゃないし。

眠たくなってきた。もう寝よう。
まだ起きてる。電話を切ろう。先に切って。
なんてことを遠い意識のなか弱い声で掛け合う。
いくつになっても始まりは同じだ。

電車の音はもう聞こえないから、
うんと時間が経ったということは
気づかないうちに、寝落ちる。またね。

こんなふうに相手が思っていたら最高かしら。

「知らない間に眠ってた」

おはようと一緒にメッセージ。

翌朝あいさつしたりする人なんだなと思った。
俺もわたしも今度からそうしようかな、嬉しいし。

朝か昼か夜かに、偶然連絡がとれたら
同じ時間軸を生きてるって気づく。
こちらもあちらも紛れもなく朝はおはようだし
昼や夜に気づかなくてよかった。

ーー男女共の一人称を入れて両方の視点を一つにしてみたーー

2019/01/25

#ストーリー #文章 #文筆

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