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続けてきたこと、花開いたこと。

2022年度の授業が全て終わって、5年目の仕事は無事に終わった。

最後手前の授業で1年間の振り返りアンケートを書いてもらうんだけど、「私へのメッセージでも、改めて聞きたいことでもなんでもいいよ。コメントつけて返すから」と、最後を自由記述欄にしている。
自由記述だから書いてこない子もいるが、今年頑張ったことや、来年頑張りたいことを読んでしっかり返事を書く。生徒たちがこの一年やり切って、その経験を踏まえてどうしたいかを読むことは、自分がどんな授業をしてきたか、どのようにコミュニケーションをとってきたかを振り返るのに必要な材料になる。

この取り組みも3年目になるが、今年はいつもと違った。
これまではその授業内、大体20分でみんな書き上げて出してくれていたが、「書ききれないので次の授業で出していいですか」と聞いてくる子が何人かいて、後日受け取った用紙には、感想やその子自身に起きた心境の変化がびっしりと書かれていた。
それから、アンケートを最後の授業で返して、授業が終わったら「先生何日までいますか?」と聞かれて、「今週末は会議だから行くよ」と答えると、その日に行ったらなんと2枚に渡る手紙を書いてくれた。初めてのことだったから驚きと、別でしっかり書いてきてくれてありがとう、という気持ちでいっぱいになった。

アンケートに書いてくれる中身も、毎年「授業がわかりやすかった」「成績が上がった」に類することを書いてくれることはもちろん嬉しいし、できるようになったんだとわかるとやっぱり喜ばしい。
今年は成績以外のこと、「対自分」や「自分が授業で取り組んできたこと」への感想を書いてくれた子がそれなりにいた。(以下、コメントは意訳)
3年生のある子は「数学はやっぱり苦手だったけど、先生がいつも明るく授業をしてくれたから頑張ろうと思えた。これからも先生の明るい姿を見習って頑張ろうと思う」と書いてくれて、卒業式の日は自分を見つけてお礼と「これからも頑張ります!」と挨拶をしてくれた。
1、2年生の子は「先生の授業は安心して受けられた」「しんどい時に励ましてくれたのが嬉しかった」と書いてくれた。中には超大作のイラストを描いてくれる子もいた。
手紙をくれた子は、その子自身が昔算数や数学ができなくて、心無い言葉を浴びせられてしんどい思いをして勉強しなくなったこと、自分が教科担任になるまで数学が大嫌いだったこと、でも自分が担当になってからは、ちゃんと取り組めるようになって自分自身に感動したことを赤裸々に書いてくれた。
一番嬉しかったのは、3年前から定めている「授業内で相手を否定する言葉禁止ルール」が、その子にとって転機になったこと。人の頼り方をこの授業を通して学んでほしくて、安心してクラスメイトと助け合えるようにとこのルールを始めたのだけど、まさかそれがこんな形で生きてくると思わなかった。その子自身の過去を乗り越えるためのきっかけになったことと、今まで言及されることがなかったから、「これは果たして効果があるのだろうか?」と、まずは自分の言動から、を念頭にやっていたことだったから、評価されたことで報われた気持ちになった。

携帯のメモ帳に、大学のゼミの先生が記念パーティの時に歴代のゼミ生に送った言葉を今でも残してある。今回のことは、本当にその通りだなと思った。少し紹介したい(一部省略)。

挑戦を続けましょう。このとき、好きなことを好きなようにやりましょう。その意味は次です。
ここ数年、新興国戦略の研究調査に夢中になっています。インドとベトナムにたびたび出かけています。日本企業は、長年積み重ねてきた技術によって、現地で利益率の高いプレミアム市場を創出することに成功しています。
続けていると、意図していないところで評価されることもあることに気が付きました。高効率の熱交換技術が、インドやベトナムのプレミアム市場につながっているなんて、当初は予見できなかったと思います。
日々の努力が何につながっているのかわからないため、諦めてしまうことがあります。また努力を過小投下しがちです。その結果、蓄積や深掘りに至りません。そこで、どうせやるなら「好きなことを好きなようにやりましょう」ということです。好きだから長く続く、続けていると創意工夫が溜まる、状況変化も出てきて当初とは異なる展開も出てくると。一点突破が広範展開になります。

高校の授業であのようなルールを決めてやることってそうないと思う。その時点で自分では挑戦だと思っている。数学に対する「しんどい」思いが少しでも楽になる方法はないか、という仮説もあってルールをいろいろ考えては決めて、実行しての繰り返し。生徒たちからこれまで何も言われることもなく、ただ自分が決めたルールを守ってくれてる、という認識はあった。
今年、「このルールのおかげで自分が変われた」と言葉にしてくれたおかげで、ちゃんと意味あることだったんだとわかって本当に嬉しかった。
4月からも、これからもこのルールはずっと続ける。どんなところでも。譬え言葉にされなくても、ちゃんと意味があることだとわかったのだから。

始める前は否定される
始めれば反感を持たれる
途中で辞めれば馬鹿にされる
報われるには報われるまで続けるしかない
努力が報われるこの気持ちを知ってるのと
知らないのとでは天国と地獄の差だ。

グレート-O-カーン(プロレスラー)

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