結婚指輪はありません
「結婚しました」というと、ふと移される目線。左手の薬指。
ん?っとされる顔。
はい、そうです。結婚指輪はありません。
***
一緒にいるようになって4年。
私は夫が時計以外のアクセサリーをしているのを見たことがない。
夫も私が年に数回誰かの結婚式のために、ピアスをプスッと開通させてるのを見るくらいでしか、私がアクセサリーを付けてるのを見たことがないはずだ。
そんな私たちが結婚するとき、“結婚指輪”は早々に「いらない」に分類された。
その代わりというわけではないけれど、新婚旅行はちゃんと行こうということになった
(むしろ、新婚旅行に行きたくて結婚した節がある)。
そうして、出かけたヨーロッパ周遊旅行は、「結構長くね?」と言われるほど、社会人としては長めの19日間に及んだ。
その途中のいつからか私たちは「結婚指輪ないの?」の質問に笑顔で答えられるようになっていた。
そのきっかけとなった、パリで見つけた〈Michael〉という名の2つの靴、ロンドンで買ったアウターの話をします。
レペットの〈MICHAEL〉
レペットは入籍の日にも買ってもらった大切なブランド。私がちゃんと大人になるための道しるべ。
入籍の日に買ってもらったのは〈CENDRILLON〉 。「指輪はいらない」なんて言いながら、「シンデレラ」の意味を持つ靴を選ぶあたりが、我ながら乙女だ。
(ちなみにその前夜、階段から落ちて血まみれの足で「シンデレラ」という名の靴をフィッティングした。なかなかドラマチックでしょ)
今回は〈MICHAEL〉 というパテントのローファーを選んだ。マイケル・ジャクソンをオマージュした靴。
ときにはシンデレラのように、ときにはマイケルのように。軽やかにステップを踏み続けていたい。
パラブーツの〈Michael〉
靴好きな夫が選んだのは、パラブーツ。フランスでは、大人の男になったら履くべき靴と言われているのだとか。
数あるフランスの高級靴。いくつかのお店をのぞく中で、普段使いできるいい靴にたどり着いた。
今期のフランス限定モデル〈Michael〉。限定のタグがかわいい。
ちなみに、2つとも〈Michael〉という名の靴になったのは偶然。パラブーツは孫の名前が由来でミカエルと読むのだそう。
もともと一緒のものを買おうなんて言っていて、結局それぞれ好きなものを買ってしまった。その結果、偶然にも同じ名前の靴だったなんていうのも、私たちらしくていいじゃんと思っている。
バブアーの〈BEDALE〉
ロンドンに着く前はトレンチコートが欲しいと思っていたが、ロンドンに到着してびっくり。トレンチコートを着てる人は全然いない。
そして、ロンドンのジェントルマン、レディたちはこぞってバブアーを羽織っている。
イギリスの老舗アウトドアブランド、バブアーの定番モデル〈BEDALE〉。ロンドンから戻ると東京はすっかり初夏の気候で、せっかく買ったそれはまだ出番がなく、オイルがしみしみで、ペカペカしっとりした質感がちょっと照れ臭い。
夏が終わり、いくつもの季節が巡るその中で、いつの日かロンドンで見かけた紳士、淑女のように着こなせるようになるのだろうか、なんて考えたりして。
***
軽やかに歩ける靴、丈夫なアウターは、カジュアルな私たちになかなか合っている気がしているし、この話をした友人たちは、「たしかに」と頷いてくれた。
オーセンティックなデザイン、変化を楽しめる素材は、一緒に時間を重ねていく楽しみもあるんだろうなとか言ったりして。あとづけだけど。
思い描くのは、いつの日かレペットのローファーとパラブーツを履いて、アウターにはいい感じに馴染んだバブアーを羽織ってデートをする風景。
ヨーロッパで見かけた紳士淑女のように、公園やカフェで会話もまばらにのんびりするくらいのデートが理想だ。
私たちに結婚指輪はありません。
パリとロンドンで見つけたいい感じの靴とアウター、それを身につけて過ごす日常がはじまったところ。
それはそれで割に幸せな日々です。
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