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人に好かれたいなら、朝井リョウになれ

クラスに1人は、誰にでも好かれるやつがいなかったか。

盛り上げるのが上手というわけではなく、「なんとなく好き」を全員から獲得できているのだ。

人気者はたくさんの支持を集められるが、裏では嫉みや妬みも同時に抱え込んでしまう。人間関係のゴタゴタに巻き込まれがちなのである。

一方で、「誰にでも好かれる」やつはうまくやる。人間関係を俯瞰し、目立ちすぎず、かと言って気遣いも忘れない。そして何より、謙虚なのである。

朝井リョウのエッセイはとても謙虚だ。「若くして直木賞作家」という輝かしい肩書きがあるにも関わらず、低姿勢を貫いている。

そして彼の強みはなんといっても、自虐がうまいことである。私は彼を、自虐の天才だと思っている。自虐ネタは使いすぎるとクドいが、うまく使えば好感度をあげられる。

朝井リョウがエッセイで使っている自虐ネタをいくつか紹介しよう。

◆馬面猫背の私
…恋人の話や、オシャンティーな話をするときに、自身の容姿を持ち出してうまく中和している。

◆お腹が弱い
…常にトイレが近くにあるかどうかチェックを欠かさないという朝井リョウ。便意との凄絶な戦いを描くエッセイは傑作である。

◆私服が絶望的にダサい
…自分で服を選ぶと高校生みたいになるため、スタイリストに選んでもらった同じ服を何度も着ている。

他にもエッセイの随所に自虐がちりばめられているのだが、それは文脈によって際立つものなので割愛したい。

ここで私が強調したいのは、朝井リョウは決してネガティブなオタクなどではなく、世間一般でいう「陽キャ」の類いだということである。

例えば


・友人の結婚式の余興で、作家の柚木麻子と替え歌を披露。
・職場の同期にドッキリをしかけるため、同期全員を巻き込んで計画を立案、実行。

といったことをしている。

陽キャでなければしようと思わないことを、朝井リョウはエッセイで、あたかもそれが日常であるように述べているのである。

先に述べたように、クラスで人気を集める人気者は色んな悩みを抱えがちである。しかし朝井リョウの場合は、自虐を上手く利用することによって、敵すら味方につけてしまうのである。

「若いくせに直木賞作家だなんて」と快く思わない人もいるだろう。そういった人たちを手なずける自己演出を、朝井リョウは行っているのである。

最後に、私からもひとつ、人から好かれる方法をお教えしたい。

それは、「人のおすすめを必ずチェックし、感想を言う」である。

考えてみてほしい。じぶんがおすすめしたものがとても気に入られたら、その人のことを好きにならないだろうか。

なぜならそれは、承認欲求が満たされたことと、共通認識のある仲間が増えたことで、2つの喜びを同時にえられるからだ。

これから他人からなにかをおすすめされたときは、必ずメモをして、感想を伝えることをすすめたい。

そしてもっと人から好かれるために、朝井リョウのエッセイ「時をかけるゆとり」「風と共にゆとりぬ」を読むことを、おすすめしたい。

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