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太陽の季節

旦那の本棚にあったこの本を、初めは時々眺めていただけだった。太陽の季節、黒っぽい単行本の背表紙。そして運命のときが来て私は石原慎太郎さんの一部に出遭う。
わたしとは異質の世界に連れて行ってくれた。生まれた環境も、時代も、主人公ふたりの、この恋に対する対処も。
なんで好きあってるのに素直にならないんだこのふたりは。ほんと馬鹿みたいだ。
でも英子には失恋が、竜也には初めて本気で、女性を好きになった戸惑いとそれを認めない負けず嫌いの性分が顔を出した。本の中では二人の愛の描写もあって、惹かれ合ってるのはよくわかる。だが、一線を超えたあたりから、恋の様相は変わってくる。英子は前の恋の痛みを二度と味わいたくない。だから、竜也を好きでも、もう、素直に愛せない。心に防御が働くのだ。竜也は初恋の喜びを味わったのもつかの間、すぐにそれを茶化す悪魔が出てきて、素直になれない。
しかし、心は嘘をつかない。
どんな思いで英子は最後に息を引き取ったのか、どんな思いで竜也は英子の遺影をみつめていたのか。

この本は私には衝撃だった。悲しかった。でも最後の竜也の涙が、希望だった。
私達は真剣に愛に向き合わなければいけない。でも、他者との恋愛よりもまず、自分を目一杯愛してあげることだ。


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