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投資AIを自作するVol.3

前回は、株価を予測するためにはデータが必要な事、考え方として企業の業績を見るファンダメンタル分析と、株価の動きを見るテクニカル分析がある事を書いた。

ファンダメンタルの罠

しかし、ファンダメンタル的には問題がなくても、株価は全く上がらない事も多々ある。今回はこの「ファンダメンタルの罠」について考えたい。

新日本建設(1879)


私が長年注目している銘柄に、マンション建設などを手がける新日本建設(1879)がある。純利益率が平均4%程度の建設業の中で、毎年9%近くを稼ぐ優良企業だ。

有利子負債(借金)が長年0なのに、現預金などすぐに換金できる現金同等物を700億円以上保有しており、倒産の可能性は限りなく低い。業績も24年3月期の純利益予想が122億円と、着々と増やしている。配当利回りは年2~3%と安定している。四季報のデータを見ると、常にROEが10%以上の文句ない水準だ。

1000円入りの貯金箱が900円

しかしこんな新日本建設株は、「おかしい」事に、時価総額(24年1集の会社四季報では682億円)が現金同等物(同746億円)を下回っていたのだ。正直何を言っているか理解しにくいと思うが、暴論と思いつつごく単純化すると「1000円入っていて、利子が2%以上つく貯金箱が、900円で売られている状態」だった。

「いやいや、そんなおいしい話はあり得ない。おかしいだろ!」と誰でも思うだろう。でもこの状態は長年、私が知る限りで3年は続いていた。

この異常な割安状態は、さすがに市場で認知されてきたようで、2022年頃からの株価上昇で解消されてきた。2024/4/26時点では時価総額が現金同等物をかなり上回っているようだ。

「お宝銘柄」か「残念銘柄」か

このような「現金同等物>時価総額」という「超お宝銘柄」があったとしても、それが市場で認知されなければ、ずっと割安で放置されたままになる。「こんなおいしい銘柄は、いつかみんなが気付くはず。今のうちが買いだ!」と思って飛びついたら、数年間は全く見向きもされなかったら…。

しかも、東京エレクトロンなどの半導体株が年間数十%上昇している中で、あなたは不人気な新日本建設株を保持し続けることができるだろうか。ちなみに私はウォッチしつつ、(他の銘柄で儲かっていたこともあるが)結局は新日本建設を買えなかった。

デジタルアーツ(2326)

もう一つ、情報通信業のデジタルアーツ(2326)についても紹介したい。ネットセキュリティー専業で「i-FILER」などを扱っている事で知られる。企業や学校のパソコンによくインストールされており、聞いたことがある人もいると思う。

この会社はソフトウェアが売り物のため、製造業と比較して設備投資がかからず、純利益率が30%以上と非常に稼げる会社である。5年で売上高が倍(19年3月期58億円→24年3月期予想115億円)、利益が2.2倍(19年3月期19.6億円→24年3月期予想44.7億円)となるなど、成長性もある。利益も着々と積み上げている。ファンダメンタル的には文句のない水準だ。

それなのに、株価は21年の直近ピークだった1万円前後からほぼ半減の4500円程度だ。「ファンダメンタルは文句ないから、いつか上がる。これは過小評価だ!」と思っても、株価が半分になっても持ち続けられるだろうか。

人気がなければ買われない

この2銘柄に共通しているのは、「人気のなさ」である。新日本建設は元々は知名度が圧倒的に低く、「お宝銘柄」であることを認知されていなかった。このためしっかり利益を稼げる優良企業なのに、PERが4倍以下とあり得ない水準で放置されていた。

逆にデジタルアーツは、知名度はあるものの、成長性に疑問を持たれているのが原因だろう。

デジタルアーツの株価は利益の成長に伴って上昇を続け、19年にピークの11240円をつけた後、コロナまで5000円台と半減していた。

ところがコロナ禍に対応するため、児童・生徒に1人1台の端末を配布した、国の「GIGAスクール」構想で、タブレット等に同社製品が搭載されたため、期待が一気に高まって株価が上昇し、再び1万円台に乗せていた。しかし21年末に1の一万円台から右肩下がりで、コロナ前を下回っているのである。

これは「我が社は○○によって利益を増やします」という、明確なメッセージが出せていない、あるいは実行できていないことが原因だと考えている。

どれだけ知名度があっても、どれだけ利益は伸びていても、成長のストーリーがイメージできない銘柄は買われない。何せ上場企業は3900社以上もあるのだ。

ファンダメンタル分析だけで簡単に儲けられるほど、株は甘くないという事だろう。

次回はテクニカル分析の弱点について。

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