『図解即戦力 暗号と認証のしくみと理論がこれ1冊でしっかりわかる教科書』(暗認本)レビュー

著者の光成滋生様から『図解即戦力 暗号と認証のしくみと理論がこれ1冊でしっかりわかる教科書』(暗認本)を頂いたのでレビューさせていただきます。

知識レベル

まず、この本を読む前のレベルを参考までに書いておく。

・理系(非情報理工系)
・応用情報
・共通鍵・暗号鍵・署名の基本的なことを知ってるぐらい

本書の特徴

まず、本書をざっと見てわかるのはタイトルに違わぬ図の多さだ。ほぼ全ページに図があるのでは?と思うほどに図が充実している。
暗号は送信者と受信者それぞれに役割があり、何段階も関数を通して暗号化・復号が行われるので、文章だけだと全景を掴むことが難しい。図解されていることで何が行われているか大雑把につかむことができる。

細かいテーマごとに章が分けられ、章末にまとめが付されていることも知識の整理に非常に役立った。

また、本書は2021年10月に出版されたばかりということもあり、最新の情報が掲載されている。常に危殆化の危険を孕んでいる暗号の解説書としてはとても重要だと思う。加えて、現在開発中のものなども掲載されていて楽しく読むことが出来る。

印象的だった部分

・暗号化モード
AESに鍵のビット数以外のバリエーションがあることを初めて知って驚き。同じAESでもモードによって大きな違いがあり、非奨励のものも存在することは実用的にも知ることが出来てよかった。

・Let's encrypt
古いAndroidの問題などで名前は知っていたが、よく知らなかった。証明書発行を自動化したことで広く使われるようになったんですね。

・ビットコインとブロックチェーン
当然のことだが、ブロックチェーンでも暗号や署名が重要な役割を持つことを具体的に知ることが出来た。署名の検証鍵のハッシュがビットコインの所在を示すこと・署名鍵の所有がビットコインの所有を意味すること、などとてもおもしろかった。
マイニングで行われる計算についても軽く触れられていたが、効率が悪いことしてるんだなぁと思った。道理で大量の計算が必要になるわけですね。
ビットコインが一般化するには何かブレイクスルーが必要そうな印象を受けた。

・k-of-n秘密分散
こんな方法がある事自体を初めて知った。
核発射スイッチみたいでかっこいいと思った(小学生)

まとめ

暗号・認証は情報化の進展に伴って生じてきた必要に応じて、開発・実用化されていてそれは現在も続いている。

本書は各技術の必要性や用途を丁寧に説明しており、詳しくない人が暗号・認証の基本的なことを知るのに適している。それだけに留まらず、各技術を世代ごとに図解していて、それぞれの脆弱性とそれに対する改良を知ることができる。
広い範囲をある程度深く解説されているので、また必要に応じて読み返すことになりそう。

暗号・認証について知りたいときに手に取る1冊目として間違いなく、長く使える1冊だと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?