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小説で伝えるということ

長い長い手紙のように、小説を書きたい。回りくどくても、小説にしかない伝え方、伝わり方が必ずあって、それが物語の秘めた大きな可能性のひとつだと思う。

明確に伝えたい人がいるときもあれば、過去の自分に伝えたくて書くときもある。けれどいつかは、出来るだけ多く、同じような悩みを抱えた人に届けたいと思う。

ひとりきりの苦しい夜に寄り添うような、ほんのりと淡く光る豆電球のような創作をしたいというのは、ネットに作品を上げ始めた当初から意識している。最初はそれは、自分のための灯火だったように思う。ずっと信じて進んできた道を見失って、何処にも行けないような気持ちだった時、その小さな明かりを頼りに生きていた。

孤独や絶望は人並み以上に知っていると思うからこそ、今はそういった苦しみを抱えている人の導になれるような物語を紡ぎたい。それはきっと、綺麗で希望に満ちたものだけではなくて、刃物のように痛々しくて鋭い感情だったり、どろどろとした感情だったりも含まれる。一般的に醜いと形容されるような感情まで、丁寧に大切に拾い上げて、そこに私なりのひとつの答えの形をあげたいな、と思う。物語を通すからこそ、その意味が重さを増す一方で、そのまま伝えるよりずっと、優しく控えめに提示してくれるのだ。

誰か一人にでも届いてほしい、と祈りを込めて、私はこれからも物語を描き続ける。でも、届かなくても叫び続けよう。叫び続けることこそが私の生きる意味であり、私の灯火でもある。そうやって声を上げるうち、誰かが拾ってくれることがあれば、これほど嬉しいことはない。

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