4タイトル

オンとオフのなめらかさ『最善手ドリル』★4★

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こんにちは! 藍澤誠です。

◎お便り紹介

ここでお便りを紹介します。noteネーム、電動ドリルさんから。

藍澤さん、こんにちは!
ドリル形式すごくいいですね。私もアイデアをマネていいですか?

1秒でやらせと分かるお便りですみません。「ドリル」という形式は、そもそも私のアイデアではなく、妻マリネコさんが見つけたアイデアです。

この『最善手ドリル』の連載を始める前、私の頭の中で「3択の出題コンテンツ」は確定していたのですが、よいタイトルが思いつきませんでした。そこで妻にも協力してもらい、「ドリル」という言葉を見つけました。

「最善手」は将棋の用語ですが、将棋に留めておくにはもったいない、深みのある概念です。最善手=正解というより、最善手=「投げ出したくなるような複雑な局面・すでに固定化してしまった定跡」にも、「納得できる正解がある・新しい未知の一手がある」と仮定する。そして粘り強くアプローチをしていくイメージです。

将棋の棋士、羽生善治さんのイメージされている「最善手」は、「自分に有利になるための手」ではなく、「将棋界そのものが発展していく手」です。個人個人の最善手が、地域や社会に、幸せと発展をもたらす。そんなイメージをタイトルにこめてます。電動ドリルさん、回る準備OK?! 世界中に穴を空けまくってください!

【問題】

あなたは生徒の一人、ピクミン(小5女の子)に「今週の運動会を観に来て欲しい」とリクエストされました。しかし、誘われた日が「その月にある唯一の仕事がない日」という状況。さて、「今週の運動会を観に来て欲しい」という彼女の誘いに対して、どのように対応したらよいでしょうか。

①「行けたら行く」とあいまいに返事をして、当日に決める。
②授業に差し支えが出るので、ハッキリ断って体を休める。
③休みの予定なので、「行くね」と伝える。

制限時間1分

【解説と解答】

【①:「行けたら行く」とあいまいに返事をして、当日に決める】が最もダメな選択肢だが、気を抜くと選んでしまうので注意されたい。

「自ら参加したいイベント」として位置づけること=「当事者になる」ことができないと、あいまいな答えになってしまう。当事者になるつもり(覚悟)がないのに、生徒に期待を持たせてしまう発言は(その期待を裏切るかもしれないので)悪手といえよう。仮に行かないと決断しても、応援したいなら方策はある。たとえば前日に手紙を渡すなど、メッセージを送ることも可能だ。当日まで判断を先延ばしにしてしまうと、前向きな手が何一つ取れずに終わってしまう

◎オフの定義

②も良くない。「授業に差し支えが出るので」というスタンスが、今後、あらゆる場面で自らを苦しくさせてしまう。今回のような判断は「運動会に行きたいかどうか」だけで決定したい。

定量化はできないが、たとえば90パーセント「運動会に行きたい気持がある」にも関わらず、10パーセントの「授業に差し支えが出るかも」で行かなかった場合、当日は気持よく休めるであろうか。ベッドで昼まで寝ていることと、運動会に行って応援するのと、どちらが自分の得たい体験なのだろうか。塾の教室では得られない、さまざまな情報を運動会では得ることができる。その情報を使って、その子との関係性を深め、その後、より適切な判断を重ねていくことができる。

(1)「運動会を応援してきて、疲れて夜にぐっスリープ」
(2)「昼まで寝て、夜になかなか寝られず、次の日疲れが抜けていない」

どちらも大いにありそうなシチュエーションだ。(1)の方が健全に思えるがいかがか。

◎オンとオフのなめらかさ

休日=完全オフの日、としてしまうと、休日と仕事の日の「なめらかさ」が損なわれてしまう。もっと言えば、「日」単位でオン・オフを切り替える必然性はゼロだ。「仕事の予定が入っていない日=オフ」と考えると、「オフがぜんぜんない」という苦しい気持になってしまう。仕事の有り無しではなく、「自分の心の自由度」を軸に、今がオンであるかオフであるかを評価したい。その時その時で、オン・オフが切り替わる。それは分単位。あるいは秒単位。オンも楽しい、オフも楽しい。そう考えると、「その月にある唯一の、仕事のない日」を、過度に評価することはなくなる。一方、平日にもたくさんの「オフ」な瞬間が含まれていることに気づく。自営業の場合、流れの中で、なめらかにオン・オフを楽しまないと苦しくなってしまう。

◎運動会の会場は遠くて、電車とバスを乗り継いだ。普段乗らない路線。ちょっと新鮮な気持。面白い看板。見慣れない商店街。気持がのびやかになる。→オフの状態
◎初めて足を踏み入れる学校。与えられた役を頑張っている保護者たち。ふだん会えない生徒の親やおじいちゃん、おばあちゃん。生徒の友だちに紹介される自分。気持がピースフルになる。→オフの状態
◎ゴール前で転んじゃう場面、学校最高記録を出せた瞬間、たいしたことなさそうに見える組体操を観て涙ぐんでいる親の視線。こうしたものを行く前に想像するのは難しい。生徒に対峙する際の情報が増える。来て良かったと改めて思う。→仕事に活かそうとする姿勢はオンの状態

今日(2018年5月14日月曜日)はすごく忙しい日だった。しかし昼すぎに近所の大学まで散歩に行って、そこで遅い昼食をとった。これはオフ。そこで偶然、塾の子の母親に会っていろいろ話せた。帰りはパン屋さんに立ち寄り、お店のお姉さんとおしゃべりをして戻ってきた。お姉さんが昔働いていたところで、私も働いていたことが判明して、盛り上がる。この1時間30分は完全にオフだった。

最善手:③:休みの予定なので、「行くね」と伝える。

◎実戦の棋譜を見てみよう

ピクミンに誘われた当時、私は最悪手を取りました。①と②のミックスです。教室では「行けたら行く」とあいまいに返事をし、②「オフの日くらい休みたいな」とダラダラ。

しかし、気持いい秋風が部屋に吹き込んできたとき、突然「今からでも行かなくちゃ」という気持になりました。私が遅れて運動会の会場に着くと、生徒の席にいたピクミンは「きょろきょろ」していました。そして私の姿を見つけるなり、ぶんぶんと手を振ってくれたのです。誰かにあんなに待ってもらえた体験は初めてでした。あとで聞くと、私をずっと探していたとのこと。この瞬間のことを想うと、今でも感動しますし、待たせちゃったことを申し訳なく思ってしまいます。その後「行った方がいい」と思った場所には(遅れてでも)必ず行くようになりました。

誘ってくれてありがとう、ピクミン。


★5★へつづく

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