見出し画像

胃が痛くなりやすいタイプ『ポニイテイル』★51★

前の章を読む

「おいしそう! ウチも飲んでいい?」

ユニはそれには答えませんでした。角がもどって元気が出たのか、ユニときたら落ち着きがないことに、今度はあどがいたデッキチェアの方へトコットコッと、早足に行ってしまいました。銀色のボウルの中の金色スープは、オレンジのようなあまずっぱいかおりがしました。

「これ、なんて名前の飲み物?」
「星くずスープです」

ユニはまた、こっちをむかないで話しかけてきます。
あどは見た目がおいしそうなものは、とりあえず食べたり飲んだりするようにしていました。

「これ、飲んじゃうよ、いただきます!」

ボウルに口をつけて、星くずスープをゴクリと飲みました。
絵の具をとかした水を飲むとこんな味がするかもしれません。

「マズーーーイ!」

ユニは遠くで笑いながら、あどの頭の中へ語りかけました。

「星くずスープはクスリですから、おいしいはずないですよ。ボクもきらいです」
「なんで……ゲホッ、なんで、クスリって教えてくれなかったの。スープって言ったじゃん」

それはあどが今まで飲んだ、どんなクスリよりもまずい味でした。

「もしクスリっていっても、きっとあどちゃん、一口飲ませてっていったでしょう」

ユニはからかうようにいいました。あどの性質を利用した、まるでプーコみたいないたずらのしかたです。舌の上とのどの入り口に、いやな苦味がのこっています。

「このまずいクスリは、何にきくの?」
「星くずスープは胃薬です」
「胃薬……はっ! わかった!」

あどはユニにむけて、ズバリ言い放ちました。

「こ、これはもしかして、うちを消化しやすくするためのクスリなのね! これからうちを食べるつもりなんだな! さすがプーコの手先!」
「は? バカなこといわないで! そんなはずないでしょ!」

ユニはかわいい顔をこちらに向けて、声をあらげました。
こんなふうに、仕返しの冗談にかんたんにひっかかってムキになるのも、ちっとも怖くないのもプーコに似ています。

「ボクはちょっと、胃が痛くなりやすいタイプなんです。だから1日3回、8時間おきに星くずスープを飲んでいるんです」

あどは『ユニコーンと胃薬』の組み合わせがおかしくて、かわいそうなことなのに思わず笑ってしまいました。

「プーコも胃薬を飲んでいるんだよ。11歳なのに、いろいろなことを心配しすぎて胃が痛いんだって。あ、ウチとプーコはもう12歳か。ユニはね、プーコって子に雰囲気がそっくりなんだよ……ていうか、なんでウチらのこと知ってるの?」

ユニはデッキチェアの方から足をそろえたまま、音もなくスーーーッツとすべるように近づいてきて、あどの目の前でキュッとストップしました。

「ボクはとてもしんちょうに選んで、プーコさんに決めたのです」
「プーコに決めた? 何を決めたの?」
「ボクはプレゼントを手渡す子として、プーコさんを選んだんです。これは12歳になったプーコさんへのプレゼントなのです」

ゆるそうだった金色の角は、額の穴にしっかりはまっていました。


『ポニイテイル』★52★につづく

読後📗あなたにプチミラクルが起きますように🙏 定額マガジンの読者も募集中です🚩