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『あっちゃんあがつく だんごでござるぅ~』

★絵本シェルフ★

『あっちゃん あがつく だんごでござるう~』

私自身は小さいころから、1つのテーマに関してたくさんの対象を集めたものが大好きでした。記憶にある一番最初の本は『ウルトラ怪獣大全集』。

そういう好みはたぶん、ずっと変わらないのかな。前回取り上げた『世界の民族衣装』も同じ系列ですね。なんて言えばいいのかな。網羅系?

今でも『世界のサッカーエンブレム』だとか、『特集MLBの全30ボールパーク紹介』だとかの惹句に一撃でやられてしまい、ついつい手元においてあれこれ想像して楽しんでしまいます。

そんな私の息子ハルキも網羅系大好きで、『はたらく車100』みたいなものにはじまり、『妖怪ウォッチ』などの特集や、大相撲にはまっていたときは『平成24年力士名鑑』みたいなものを読みふける園児でした。さっき、仕事場に来る前のこと。直近で入手した網羅系は何かなとハルキの本棚をのぞいたら、書籍では『三国志大百科 永久保存版』で、雑誌は『センバツ高校野球の全出場特集』でした。

絵本に関していえば、ハルキにとって最初の網羅系はたぶんこれ。


『あっちゃんあがつく たべものあいうえお』

これは夢見る詩人エンリコちゃんからプレゼントされたものです。「あ」から「ん」まで、濁点を含むすべてのたべものが網羅されています。

濁点が含まれているのは、濁点の子ども(ぐっちゃんとか、ぜっちゃん)に対応しているからです。やさしいね。

たべものたちがいきいきしていて本当にすばらしい。さらに場面設定がはっきりしていて、食器や周りの小物がリアルに描いてあるのがとても楽しい。

私が好きなのはバーベキューのページ。焼かれているのに楽し気におどっているのが不気味でかわいい。

最後のページは、自分オリジナルにすることができます。

右ページが描いていないですね。

今度、よいタイミングがあったら埋めてみよう。

小さなころハルキが好きだったのは「だ」のページで、「だっちゃんだがつく だんごでござる」という、わりと大人しめのページだったんだけれど、このページになるとハルキはなぜか必ず、口をとがらせて、厳しい表情で一点を見つめ、カチコチのポーズをとるのです。毎回毎回、このページだけ。とても不思議でした。

上の絵は『あっちゃんあがつく』を読んでいたころの、私の脳内に再生された映像です。夏休み。冷たくてやわらかい桐の床にべったりすわって、ハルキをひざにのせて。なつかしいな。

私はイラストなんてふだんはちっとも描かないし、この文章も昼休みにパタパタとせわしなく書いている。だから作者のさいとうしのぶさんの絵のように、細部までは描けないけれど、頭の中にはいろいろと思い描けています。光の感じ。扇風機。向こうの部屋でお化粧をしているマリネコさん。

ゆったり流れていた、幸せな時間。

大切な、思い出しただけで幸せになれる時間。

そして……網羅系の宿命ですね。

幸せな時間とともに思い出されるのは、「あ」から「ん」まで読むための、膨大な時間です。大変だったな。楽しかったけれど。

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こちらのサイトにあった、作者さいとうしのぶさんのインタビューがとてもよかったです。


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