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レアルマドリードのキャンプに参加しました(4)

こんにちは! 藍澤誠です。

レアルマドリードキャンプのレポート第4話です。

(3)はこちら

キャンプに限らず、練習やイベントに参加する際に何も準備をしないで臨むのはつまらない。それを分かっていたハルキは秘密裏に「スペイン人コーチに会ったときに言うための挨拶」を考えていました。

Mucho gusto. Soy Haruki.
Me gusta el REAL MADRID.
Quero ser un jugador de futbol como Luca.
Encantado, por tres ders.
初めまして。私はハルキです。
僕はレアルマドリードが好きです。
ルカのようなサッカー選手になりたいです。
3日間よろしくお願いします。

行きの車中、ブツブツとつぶやいている小学6年生。自分で電子辞書を使いながら考えたスピーチ。調べたり覚えたりするのはものすごく時間がかかるのに、口に出したら10秒くらいで終わっちゃう。その上、正しいスペイン語か確証が持てない。なのにドキドキはマックス

そしてキャンプ会場に到着。スペインからやってきたのはダニエルコーチ。最初の全体向け挨拶が終わると、子どもを送り届けた親はグラウンドを離れることになりました。別れ際、私はハルキに「緊張してる?」と尋ねてみた。

「うん。ちょっと」
珍しく素直に緊張を認める。
「練習よりさ、スピーチに緊張してるんでしょ」
「うん。練習は緊張しないよ」
「勇気を出すのが目標だし、早く言わないとずっとドキドキしっぱなしになるね」
「そうだね。わかってる、わかってる。じゃあね」

その後――結局タイミングを逃して言えずじまいかな、と予想していたんだけれど、ハルキはきちんとスピーチを敢行したらしいです。憧れのスペインサッカーへ向けて、小さくも大きな一歩を踏み出した。

「おお、言えたんだ!」
「うん」
「Muy Bien! すごいじゃん」
「Gracias! ありがと!」
「伝わったかな?」
「たぶん、ね」

小さく笑って、そのまますやすやと眠る。高速道路は空いていて、街の光がとてもきれいだ。

うーん、自分もトライすべきだよな・・・せっかくの機会だし、ハルキも勇気を出したということなので、私もスペイン語で「東京は寒いですよね。マドリードもこのくらい寒いですか?」というような会話を調べ、暗記してコーチに話しかけてみようと決意しました。

しかし――翌2日目の練習後、一瞬だけコーチと会話するチャンスがあったにも関わらず、私は会話を切り出せませんでした。あーあ。ハルキのように勇気を出すのは本当に難しい。

口で言うのは簡単――それは、私自身、自分に対して常に言い聞かせています。実際に体を動かし、プレイしてみるとわかります。

走れ。取られたら取り返せ。周りを見ろ。慌てるな。勇気を出して仕掛けろ。ドリブルせっかく練習したんだろう――これらを上から目線で、発破をかけるように口に出すのはすごく簡単だ

でも、実際行うとなると、どれも難しい。
本当に疲れていたら走れない。取られるような相手からは簡単に取り返せない。周りを見ても打開のヒントは見つからない。慌ててないつもりでも慌てているように見える。仕掛けようと思ったところで味方が見えてパスを選択した。練習したのはドリブルだけではないし・・・

だから私はハルキと何年も、一緒に練習してきました。疲れているときにどうしたら走れるか。取り返すときにはどのような気持とスキルを駆使して敵を追うべきか。いつ、どこで、何を見るべきか。落ち着くための工夫、パスとドリブルの優先順位のつけ方・・・そうしたことを考えてハルキと共有して、一緒に乗り越えようとしてきたつもりです。

そして今回、ハルキはスペイン語で話しかけるという行動を私より先に取りました。ここで離されちゃダメだよな。私は最終日に再びチャンスをうかがい、わずかな勇気を出してコーチとスペイン語と英語混じりで話をしました。結構、話が通じて、最後に一つ、伝えたかったことが言えました。


「ハルキはマドリードのキャプテン、セルヒオ・ラモスと同じ誕生日なんです」
「おお、それはすごい!」


最大級に濃かったキャンプが終わり、東京に戻って爆睡、目が覚めると12月31日。のんびり大掃除をしていると、この3日間の激闘が遥か遠くのことのように思えてきました。

「あんなに濃かったのに、忘れちゃいそうだね」

うっかりすると、すべて夢だったような気さえします。

「楽しかったね」
「うん」
「忘れたくないね。ぜんぶ覚えていたい」
「じゃあ、新しいノートにまとめてみる!」

そして・・・ハルキはスピーチを考え始めたときのように、3日もかけて数ページにわたって学んだことをまとめました。スペインサッカーへ向け、次の一歩を踏み出すために

以下、ハルキがまとめたノートの抜粋です。


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