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『ぴったりの塾を探すのではなく、ぴったりの親になろう――オーダーメイドの服みたい 小学生への文章指導で注意すること(3)』学ビ舎いろはに004

こんにちは。
藍澤誠/Jの先生です。

「小学生への文章指導で注意すること」シリーズの3番目の記事です。

前回の文章で、このように書きました。

何とか合格できたとしても、待っているのは、学校主導の、中学入学直後から始まる大学受験勉強だと思うと私としては気が重いです。では、親はどうすればいいでしょうか?

本日の文章は、以下のどれかに当てはまる人向けです。

・つい子どものやることに口出ししたくなる人
・子どもが中学受験をするかもしれない親
・子どもを受験勉強的な型にはめたくない大人

◎関心の柱を作る

「子供の文章力アップ」のために親ができる唯一(?)のことは、

子どもの関心に対して、できる限り心を寄せてあげること

です。たとえば受験を考えている小学5年生の娘が「虫」が好きだったとします。そんな親が最初にすべきは彼女に合った塾を探すことではなく、彼女に合った親になることだと思います。

たとえ自分が「虫嫌い」だったとしても寄り添っていく。そうすることで「このテーマに関してだったらいくらでも語れる!」という「子どもの関心の柱」を作ってあげることができます。

誰かに対して思いっきり語れる柱(ここでは虫)があれば、作文問題において、どのようなテーマでも、その柱から書くべきことを派生させて解答することができます

親ができることしては具体的な文章指導ではなく、文章に書きたくなるような内容を作ってあげることだと思います。

◎関心の柱を太くする

私が虫に興味がある子の親だったら、「関心の柱を太くする」ために以下の3つのことを実行します。

(1)親自身の「推しの虫」を見つける

お子さんは虫が好きですが、あなたは好きな虫がいますか?
記憶をたどって「あの虫ならまだマシかな?」と思える虫を探してみましょう。私は「トンボ」に昔興味があったので、たぶん「トンボ」を入口に虫の道に入ろうとします。子どものころにどうしても捕まえたくて捕まえられなかった「オニヤンマ」をターゲットにすると思います。

実際の虫の中に好きな虫がいないなら、『はらぺこあおむし』のように、絵本やアニメの作品の中に「推しの虫」を見つけるのもよいでしょう。そして推しの虫について、子どもに質問したり、子どもといっしょに調べたりします。そのようにして、親子で学びながら遊び、遊びながら学びます。

(2)フォローすべきセンパイを探す

「さかなくん」のように、「虫に詳しい人」を探しましょう。その人を追っていくことで、いきなり世界が広がります

はるか昔の時代から「少しのことも先達はあらまほしきことなり」と兼好法師がアドバイスしてくれているようにその道のセンパイを見つける、この人の情報を追っていると詳しくなれるというセンパイをフォローすることで、関心の柱が強固になります。

※あえて調べないで初心者状態を楽しむという選択肢ももちろんあります。

(3)虫仲間を見つける

私なら会う人にかたっぱしから「虫にはまっている人、誰かしりませんか?」とインタビューしまくります。そうすると、世の中には、必ず「同好の士」がいるものです。同じ年代でなくてもぜんぜん構わないです。虫のことが大好きな人を探してきて、その人、あるいはその子と仲良くなりましょう。

学校は「ただ年齢が同じだけの集団」で、一生ものの友達ができる可能性は必ずしも高いわけではないです。しかし、趣味をベースに友達になれそうな人を積極的に探していくと、しかもその範囲をネット上にまで広げていくと、運命の人に会える確率はぐっとアップ! 子ども同士が仲良くなるだけでなく、親同士が仲良くなるなんてパターンまであり得ます。

最高の仲間が得られたら、正直受験なんてどうでもいい……といったら言い過ぎかもしれませんが、受験勉強のためと思って始めたことが、すばらしい価値を生むのだとしたらそれはすてきなことだと思います。

◎関心の柱をベースに作文を書く

問題:「友情」というテーマで、自分の体験をもとに作文を書きなさい。

 僕には学校には友達がいません。僕のことを嫌っている人ならたくさんいます。でもぜんぜん平気です。学校じゃないところに仲良しの友達がいるからです。
 その友達は虫が大好きです。僕たちはトンボの博物館で偶然で会いました。三年前から今まで、いつでも虫のことを話しています。その人は大学生です。アルバイトしたお金でラオスとかインドネシアとか、外国の島にいったりしているのでかっこいいし自分もそうなりたいです。科学の雑誌にもインタビューがのったこともあってすごいです。
 虫には友情はありません。なんなら共食いもあります。人間を好きな虫なんて聞いたことがありません。蚊が人間によってくるのは人間が好きだからでないです。虫には「心はない」と僕は思います。心がないというのは人間にとっては悪いことです。友情なんてありえません。そんな心のない虫のことを好きになるのも変な感じがしますが、僕は虫と友達です。
 もし中学校に入って人間の友達ができたら嬉しいかもしれませんが、僕には大学生の友達や虫たちがいるから、今ある友情をこのまま大切にしていきたいと思います。

◎オーダーメイドの服みたい

このような文章を書くことで自分自身が整理され、気持ちが楽になる。その結果、合格にちょっとでも近づくことができたらすごく良いと、藍澤誠/Jの先生は思います。

書いた文章については、受験に詳しい先生よりは、「せんせいあのね」的に、なんでも話せる先生に見せると、よいリアクション・アドバイスがもらえると思います。大前提として「作文を書いた子に寄り添う」があり、その上で、構成的に破綻しているところや、言葉遣いを勘違いしているもの、漢字のミスなどを修正する。私はそのような姿勢で教えています。

こんな文章書くの、うちの子むりです!

それもよくある話です。自分ひとりで文章がぜんぜん書けない子だったり、圧倒的に国語が苦手な子については、親や先生は子どもにインタビューしながら、さきほど私が書いたように「自分だったらこんなふうに書くかな」というサンプルを、大人自身が示すべきだと思います(※もし親自身も作文ができないなら、代わりにできる人を探すというのは虫好きを探すのと同じ手法です。必要なら私が作文をみてもいいですが、そんな手間をかけなくても周りに文章を書くことが好きな大人はたくさんいると思います)。

そういうのズルくない? と思うかもしれませんが、「数学の証明問題」や、「社会の記述問題」には、ちゃんと模範解答がありますよね。それを覚えることは悪い事でしょうか。まったくノーヒントで証明を自分なりに展開できる人っているんですかね? 自分の心を乗せやすい作文のフォーマットを準備することは悪くないと思います。

※受験に受かりやすいが先ではないので注意です。

ああなるほど、こんな感じで書けばいいんだ!
ああ、オレってこんなことを考えていたんだ!


じっくりインタビューしながら、自分で書けない子の想いを整理し、それを文章の形に大人がしてあげる。これもまた私が塾でよくやっている手法ですが、この「自分の想いを整理してくれた文章」というのは、「合格するための模範解答」ではなく、自分の分身のようなものです。自分のサイズをていねいに測ってもらった上でできた、オーダーメイドの服みたいといったらよいでしょうか。

小学生に文章指導をするのならば、その子の関心の柱ができるように立ち回り、とことん理解を示してあげたいものです。そして文章が苦手な子については、文章のプロトタイプを何パターンも作り、その子自身にそれをアレンジさせて持たせてあげるのがいいのではないかと藍澤誠/Jの先生は思います。いいセンパイ、最高の仲間が得られ、たがいに理解し合える親子関係が築けるといいですね。応援しています!

5に続く

過去の記事一覧

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◎001~010

001『鳥の種類は書くべきか? 小学生への文章指導で注意すること(1)
002『文章指導を丸投げしない 小学生への文章指導で注意すること(2)』
003『保健室よりも音楽室』

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