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いつもとちょっとだけ違う”アルネ”の話

9/9。

5:00起床。

天気は晴れ。





――あっつい。

――いらっしゃい、アルネ。


アルネ。


ボクにしか見えない、ボクだけの女の子。


以前は時々しか現れなかったけど、最近は週に一度は顔を見せるようになった。


――何飲む?

――ポカリ。

――……。

――何よ。

――ううん、なんでもない。


今まで、コーヒーやお茶を飲んでいるアルネしか、見たことがなかったから。なんだか、くったくたに疲れているみたいなので、ポカリに氷をたっぷり入れてあげた。


――ところで、そんなに暑いかな。だいぶ涼しくなったと思ったんだけど。

――ここはね。……ちょっと、さっきまで暑いところにいたから。

――どこ?


アルネは、唇の前に人さし指を立てて「しーっ」といった。だから、ボクもそれ以上は訊かなかった。


――まあ、涼んでいきなよ。

――うん。


ポカリは1杯分しか残っていなかったので、ボクは白湯を飲んでいた。冷たいものと、熱いもの。なんだか、妙な光景だ。


――変な顔してる。


アルネが、ふいにいった。


――変な顔?

――うんざりしているのに、満足もしている顔。

――……それは、たしかに変な顔だな。


ボクは今、そんな顔をしているのか。はて、と思わず首をかしげる。


――小説はどう?


すでにポカリを飲み終えたアルネも、首をかしげた。


――小説……。今のところは順調だよ。


ボクは今、新人賞に応募する長編小説を書いている。それは、自分にとってとても重要なことで、その分、書けば書くほど、疲弊していく。そんな小説だ。


――ああ、つまり、そういうことなのか。


ボクは、一人納得した。


――ボク、本当に変な顔をしているんだね。

――うん。……でも、悪くない顔だよ。


アルネは、ボクの顔を覗き込むと、ふふっと笑った。


――ありがとう。……ところで、アルネもそんな顔をしているかもしれない。

――そう?

――うん。「やっちゃったなあ」と思っているけど、後悔は一切していない顔。

――ふふ、そうかもね。


アルネは立ち上がると、その場で一度くるりを回った。


――ポカリ、ごちそうさま。もう、行かなきゃ。

――行かなきゃいけない場所が、たくさんあるんだね。

――それは、君も同じでしょ?


ボクが手を挙げると、アルネも同時に手を挙げた。


――いってらっしゃい。

――いってらっしゃい。……お互いにね。

――うん。ボクはボクの、そして君の旅路の無事を祈ってるよ。





「僕だけが、鳴いている」


これは、
ボクと、ドッペルゲンガーのドッペルさんの話。


連載中。


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