花に嵐のたとえ、は、いらない(flos/R Sound Design)
花を踏み荒らすような人生だ。
それらは、花の見た目をした何かかもしれないし、見た目通り花なのかもしれない。
けれど、僕にとっては、どちらでもいい。
どれだけ足元で咲き乱れていても、気付かずに踏んでしまうこともあるし、気付いてもそのまま踏みつぶすこともある。
僕は、どういう立場の誰なんだろう?
両手を擦り合わせると、花粉がこぼれ落ちた。
*
「花は好き?」
「好きか嫌いか」でいえば、好き。
見ている分には、きれいだから。
花は怖い。
気安く手を伸ばしてで指を切ったり、「触れてはいけない」といい付けられていたのに、それを破って火傷したり、「毒を持っていないから」と抱きかかえては、腕を擦り傷だらけにしたり。
きれいで怖い花。
僕は、それらを余さず、捨てては踏みつぶしてきた。
後ろをふり返ったことはない。ふり返らなくても、わかるから。荒らしてしまったその土地に、また花が芽吹くのが。
結局、僕の腕に残されたのは擦り傷だけで、花を抱えたことなんて、一度もない。
どうしてだろう?
僕自身が、踏み荒らされてきたから?
荒んだ日々を丁寧に
辿った先に花が咲く筈
――『flos』より引用
荒らしたことしかない。
散らしたことしかない。
咲かせたことなんて、一度もない。
僕自身を。
僕自身が育ててきた花を。
どんな花を育てていたのかすら、忘れてしまった。
もしかしたら、あれは幻だったのかな。
だって、僕なんかが、きれいな花を抱えるなんて、ありえない――。
ふいに、目を閉じてみると、かすかに花の匂いがした。
すぐそばで香ったはずなのに、目を開けると、そんなものはどこにも見当たらなかった。
不毛な日々を丁寧に
綴った紙に花を描いた
――『flos』より引用
花を踏み荒らすような人生だ。
荒らすだけ荒らして、当の僕は、花を慈しんでなんかいない。
でも、
そんな僕でも、
花を咲かせたことはあるんだろうか――。
ふと立ち止まり、ふり返ってみる。
そこには、僕が歩んできた路であり、踏みつぶしてきた跡があった。
僕は、ほんの少しだけ絶望した。
flos/R Sound Design feat.初音ミク(2018年)
flos/R Sound Design(selfcover)(2018年)
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