花に嵐のたとえ、は、いらない(flos/R Sound Design)

花を踏み荒らすような人生だ。


それらは、花の見た目をした何かかもしれないし、見た目通り花なのかもしれない。


けれど、僕にとっては、どちらでもいい。


どれだけ足元で咲き乱れていても、気付かずに踏んでしまうこともあるし、気付いてもそのまま踏みつぶすこともある。


僕は、どういう立場の誰なんだろう?


両手を擦り合わせると、花粉がこぼれ落ちた。





「花は好き?」


「好きか嫌いか」でいえば、好き。


見ている分には、きれいだから。


花は怖い。


気安く手を伸ばしてで指を切ったり、「触れてはいけない」といい付けられていたのに、それを破って火傷したり、「毒を持っていないから」と抱きかかえては、腕を擦り傷だらけにしたり。


きれいで怖い花。


僕は、それらを余さず、捨てては踏みつぶしてきた。


後ろをふり返ったことはない。ふり返らなくても、わかるから。荒らしてしまったその土地に、また花が芽吹くのが。


結局、僕の腕に残されたのは擦り傷だけで、花を抱えたことなんて、一度もない。


どうしてだろう?


僕自身が、踏み荒らされてきたから?

荒んだ日々を丁寧に
辿った先に花が咲く筈

――『flos』より引用

荒らしたことしかない。
散らしたことしかない。


咲かせたことなんて、一度もない。


僕自身を。
僕自身が育ててきた花を。


どんな花を育てていたのかすら、忘れてしまった。


もしかしたら、あれは幻だったのかな。


だって、僕なんかが、きれいな花を抱えるなんて、ありえない――。


ふいに、目を閉じてみると、かすかに花の匂いがした。


すぐそばで香ったはずなのに、目を開けると、そんなものはどこにも見当たらなかった。

不毛な日々を丁寧に
綴った紙に花を描いた

――『flos』より引用

花を踏み荒らすような人生だ。


荒らすだけ荒らして、当の僕は、花を慈しんでなんかいない。


でも、


そんな僕でも、


花を咲かせたことはあるんだろうか――。


ふと立ち止まり、ふり返ってみる。


そこには、僕が歩んできた路であり、踏みつぶしてきた跡があった。


僕は、ほんの少しだけ絶望した。

flos/R Sound Design feat.初音ミク(2018年)

flos/R Sound Design(selfcover)(2018年)

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