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閾値:VT1, VT2, VO2maxについての理解を深める

みなさんこんにちは、川崎です。

今回は論文の紹介ではなくて、専門用語を分かりやすく解説してくれていて、参考になった記事をご紹介したいと思います。

論文やトレーニングの記事などでは、VTやLTやVO2maxといった用語が出てくることがあります。

今までの論文レビューの記事では、読みやすさを意識してこのような専門用語を出来るだけ使用しないで書くように進めてきました(LTやVO2maxは頻繁に出ていますが)。

しかしこれらの用語がどのようなことを意味しているのかが分かると、体のことやトレーニングの目的がより鮮明に見えてきます。

次回の論文紹介では今回ご紹介するVT(換気性作業閾値)のことが分かっていると、ワールドクラスの選手たちの凄さが伝わると思いましたので、今回の記事を先にご紹介してみようと考えました。

また、#21で紹介した「グランツールは選手をどのくらい疲労させるのか?」の論文でもこの概念が用いられています。

ご紹介する記事はTyme Wearという会社のホームぺージにあるもので、こちらの会社ではシャツにセンサーを装着することで運動中の体のデータを可視化する商品がラインナップされています。

英語の記事を意訳、抜粋した形になりますので、その点をご理解いただければと思います。

教科書的な説明は苦手。。と感じる方にも分かりやすく説明がなされていますので、是非読み進めてみてくださいね。

では、さっそくご紹介していきますね。


<参考記事>


閾値とは何か、そして閾値という概念がどのようにトレーニングへ応用できるのかをご紹介していきます。

体は主に脂質と糖質を燃料として運動を行っている訳だが、今回ご紹介するVTという閾値は体が必要としている燃料の配分がどのようなものかを知るためにあります。

前提として脂質と糖質を用いる配分は運動強度によって異なっており、強度が低いほど脂質が、強度が高いほど糖質が優先的に使用されます。(補足:運動強度とはトレーニング中に出力しているパワーの大小です)

強度が低い方が脂質が優先して使われる理由は、脂質の分解はよりゆっくりとしたプロセスではあるものの効率の良いもので、二酸化炭素の排出が少なくて済むから。

閾値の話に戻しましょう。あなた自身の閾値を知りたければ、運動中の呼吸のパターンに注目してみることをおススメします。

呼吸はあなた自身が使用している燃料の割合を反映しています。ある運動強度で燃料の使用配分が変わるタイミングがあり、それに伴って呼吸のパターンも変わります。それが科学的にはVT1とVT2と呼ばれる閾値のこと。

ロードバイクやランニング、ウォーキングなどを低い強度から始めたとき、あなたは一緒に運動を行っている人と容易に会話を行うことができますね。

しかし少しずつ強度を上げていくと、通常のように会話を続けることが困難になってくるポイントに差し掛かります。

このポイントでは早く、深い呼吸が必要になってきます。そのため会話はとぎれとぎれになるか、少ない単語でのやりとりになります。

このポイントが第一換気性作業閾値=VT1と呼ばれるものです。

VT1の強度は人によって様々で、ある人にとってはジョギングの速度、ある人にとってはウォーキングでVT1の強度になる人もいます。

VT1の強度では、あなたの脂質代謝が最も高い状態です。この強度が有酸素能力を効率化させ、脂質を燃焼させます。また、遅筋線維(タイプ1)線維の活動が亢進され、ミトコンドリアの能力も高まります。

エリートアスリートにおいては、一般の方に比べてミトコンドリアの数が多く、脂質代謝(ミトコンドリアが行う)が高いことが研究によって知られています。

そして運動強度がVT1を越えてくると、糖質(炭水化物)が燃料として主になってきます。これは速筋線維(タイプⅡ)の動員が理由です。

筋線維の動員の変化によって脂質の利用が減っていきます。糖質利用によるエネルギー代謝によって二酸化炭素の排出が多くなるため、それに合わせて呼吸はより早く、より深くなります。

VT1以降の強度では血中乳酸も増えていきます。そして筋線維が抱えきれな乳酸が筋内で産生されると、それが筋外へ放出されます。

このレベルの強度以上になると、エネルギー源として脂質は使われなくなり、糖質に頼ることになります。

このレベルの強度が第2換気性作業閾値=VT2と呼ばれます

VT2の強度では、呼吸数はかなり増えて、そして会話は一つや二つの単語を返すことで精いっぱいです。脂質から糖質への完全なエネルギー転換点と言えます。

2019年に発表された研究では、VT2強度のトレーニングではミトコンドリアの呼吸機能とミトコンドリアの数に特に効果は見られないことが示されています。

それゆえ、VT2付近でのトレーニングは一時的に乳酸耐性を高める効果があるものの、強い疲労を残すだけの可能性もあります。

「一時的」ということがキーポイントで、高い負荷と低い負荷の十分なトレーニング量が確保されないために、VT2強度によって得られた乳酸耐性の効果は影に隠れてしまう可能性があります。

そしてVT2強度よりも徐々に強度を高めていくと、すぐにVO2max(最大酸素摂取量)に行きつきます。このポイントは名前の通り、体が取り入れることのできる酸素の最大容量です。

VO2maxに達したら、呼吸は一分間に50-60回ほどになり、疲労が急激に高まります。

VO2max付近でのトレーニングではミトコンドリアの機能向上に効果があります。この強度において体は糖質をエネルギー源として使用し、脂質は使用していません。

そのため乳酸値は急上昇し、強度を維持できるのは短時間の継続に留まります。そしてこの強度は体に高い負荷をかけますので、週に1-2回に留めて軽い、長時間のセッション(VT1付近)と組み合わせると良いでしょう。



いかがでしょうか?私は呼吸の状態と脂質や糖質の利用配分の関係が分かりやすく関連づけられていて、VTという閾値がイメージしやすいと感じました。

記事に書かれていた閾値についてまとめると、

  • VT1:通常の会話がしづらくなるポイント。脂質代謝が最も高い。

  • VT2:会話は1、2単語。糖質代謝が支配的になるポイント。

  • VO2max:もはや会話は難しい。

VT1、VT2といった閾値は呼吸から読み取れる脂質や糖質の利用配分の転換点で、ミトコンドリアであったり、どの筋線維タイプが優先されるかなど、これらの閾値によって運動中体に必要とされる機能が変わってきます。

そしてVT1やVT2が現れる強度が高いほど、同じ強度でも体の負担は減ります。

たとえばAさんのVT2が240ワット、BさんのVT2が280ワットだとします。

レースやヒルクライム中、二人が同じ240ワットで走っていたとすると、Bさんはまだまだ余裕があるのに対して、明らかにAさんの努力度は高く、疲労感が高く呼吸も早くなっていることでしょう。

このような呼吸と閾値の関係を踏まえてyoutubeなどでヒルクライム大会の実走動画を視聴すると、その中のふとした会話などを聞きながら、

余裕で話をされている。この方はまだまだVT1くらいの強度なのだな。とか、

さっきまでの会話よりも単語数がとぎれとぎれだな、強度的にVT2くらいなのかな。

などをイメージしながらより楽しく見ることもできるかなと思います。


今後は論文のレビューに加えて、今回のような記事もご紹介していこうと思います。

是非読んでみてくださいね。

今回も最後までお読みくださりありがとうございました。スキ、フォローを頂けると大変励みになります!

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