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#41 量と強度、どっちが大切なの?【量推し編】

トレーニングについて調べていくと、

「トレーニングは量が大事」

「高強度インターバルが能力を引き上げる」

と、様々な意見があることに戸惑われる方がいらっしゃるかもしれません。

一体なぜ、このように様々な意見に分かれてしまうのでしょうか?

それをひも解くために、意見の土台となっている論文をピックアップしてみます。

今回は「量」推し論文のご紹介です。

是非、読み進めてみてくださいね。



8人のサブエリートランナーの6カ月間のトレーニング

トレーニング「量」によってパフォーマンスが変化するのかを見るためには、より長めの経過観察が必要になってきます。

6週間などの短い期間だと、あまり効果がはっきりしないことが予想されますね。

そこで今回ご紹介する論文では、サブエリートのクロスカントリーランナー8人のレースに向けた6カ月間のトレーニングを追跡しています。

平均年齢は23±2歳、VO2maxは70±7mL/kg/min。

選手たちの6カ月間のピリオダイゼーションプランは図のようなものでした。

◆Preparate(準備期)
ほとんどが低~中強度のトレーニング。90-100km/週

◆Specific(特異期)
レースに向けた適応を目指した強度の高いトレーニングも交える。90km/週

◆Competitive(試合期)
レースに標準を合わせたトレーニング。40-50km/週



低強度のトレーニングは全体の70%

この論文の調査では心拍数によって強度がモニタリングされています。

予めラボで呼気ガステストからトレーニング強度の転換点となる指標と、その時点の心拍数が測定されました。

トレーニング強度は3つに分類されています。

ゾーン区分は簡単には、

◆ゾーン1:低強度
ロングスローディスタンスなど、軽い負荷

◆ゾーン2:中強度
テンポ走やマラソンペースなど

◆ゾーン3:高強度
インターバル走など

という区分です。

調査の結果、各ゾーンの割合は平均でゾーン1が71%、ゾーン2が21%、ゾーン3が8%でした。

このような割合でトレーニング強度が分配されるのは珍しいことではなく、むしろ一般的にみられる割合です。

この論文では、これらのデータと目的としていたレースでのパフォーマンスにどのような関係があるのかを分析していきます。

低強度、中強度、高強度のトレーニングとパフォーマンスに一体どのような関係があったのでしょうか?



レースの結果と低強度Trの量に高い相関あり

それぞれの選手が費やした各ゾーン帯でのトレーニング時間と、

・中距離(4.2kmクロスカントリー、約13分前後)
・長距離(10.1kmクロスカントリー、約35分前後)

との関係が分析された結果、低強度帯のトレーニング時間(量)に有意な相関関係がありました。

低強度のトレーニング時間が長いほど、レースタイムが早いという関係です。

一方で中強度、高強度のトレーニング時間とレースの結果には関係がみられませんでした。

レースタイムは縦軸の下になるほどタイムが早い結果です。

中距離、長距離どちらもレース中は高強度帯でレースが展開されます。

にも関わらず、低強度帯のトレーニング量とレースの結果に高い相関がありました。

この結果から、この論文では低強度トレーニングの「量」がパフォーマンス改善のカギを握っていると結論づけています。

もちろん筆者は中強度、高強度帯のトレーニングが必要ないと言っている訳ではありません。その点は考察で強調していますので、「低強度帯だけでいい」といった解釈にはならないように注意してくださいね。

また検証人数が少なかったことや、比較対照のグループがなかったこと(たとえば低強度帯のトレーニング量を半分にするなど)などが研究の課題だと挙げられていました。


いかがでしょうか?

今回はトレーニング「量」を推す論文をご紹介してみました。

確かにエンデュランスアスリートはランナーに限らずサイクリストでも多くのトレーニングを低強度帯で行います。

これは単に流しているだけではなく、しっかりと体の適応を狙ったものだということですね。

私たちは何となく高強度帯の辛いトレーニングに目がいきがちですが、低強度帯のトレーニングも大事なんだということが学べた論文でした。


今回も最後までお読みくださりありがとうございました。

次回はトレーニング「強度」を推す論文をご紹介する予定です。

また読みにきてくださいね。

ご紹介した論文

Esteve-Lanao, J., San Juan, A. F., Earnest, C. P., Foster, C., & Lucia, A. (2005). How do endurance runners actually train? Relationship with competition performance. Medicine and Science in Sports and Exercise, 37(3), 496–504.


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