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いいなと思うパワーゾーンの名前とその理由

こういう名前だと分かりやすいなと思ったゾーンの名前とその理由をまとめてみました。



Zwiftなどのゾーン設定は素晴らしい

まずはじめにお断りしておきたいことは、この記事は従来のゾーン設定にケチをつけたい訳ではありません。

Zwiftに代表されるゾーン設定は非常に素晴らしいものだと感じていますし、それに倣って私もトレーニングをしています。

ここで書いていこうと考えていることは、今まで書いてきたMLSSやクリティカルパワーの概念を当てはめて、各ゾーンに解釈しやすい名前をつけてみたというものです。

何をどういう風に置き換えてみたのかをご説明していきますね。



基準を推定FTPからCP(クリティカルパワー)へ

以前の記事で、20分全力走やランプテストで推定されたFTP値というものが1時間維持できるパワーよりも高くなりやすいことをご紹介しました。

そして論文を調べていく中で、実際に1時間維持できるパワーの指標としてはMLSS(Maximal Lactate Steady State)パワーが適していて、FTPテストで推定される値よりも少し低い値がいいらしいということも分かりました。

ここから、FTPテストによって推定されたFTPパワーが「1時間維持できる最大のパワー」という意味合いから外れてしまっているケースがあると考えられます。

そこでクリティカルパワー(CP)の登場です。

クリティカルパワー(CP)はVO2maxゾーンとそれ以下を分ける信頼度の高い指標です。

FTPテストで推定されたFTPパワーは人によって意味合いかなり異なってしまう現状がありますので、クリティカルパワー(CP)を用いて、100%CPが「VO2maxゾーンの境界線」という基準を採用すると各ゾーンの意味合いがより安定するのかなと個人的に感じています。

クリティカルパワー(CP)のパワー値はFTPテストで推定されたFTPパワーよりもやや高い値になるようですので、クリティカルパワーの測定テストを行ってご自身の場合を確かめてみることをおすすめします。



VO2maxゾーンを200%CPまで

クリティカルゾーンの記事で触れた無酸素パワー容量から計算すると、クリティカルパワーの2倍のパワー(200%CP)で50秒前後維持できる計算になります。

陸上400m走が「究極の無酸素運動」と言われることからも、この辺りを無酸素ゾーンとVO2maxゾーンの境にすると良いのではと考えました。

ちなみに120%CPのパワーだと4分30秒前後維持できる計算になります。



LTゾーンを「High Lactate」

1時間維持できるパワーに近いMLSSパワーはクリティカルパワー(CP)の90%ほどの値だとされています(かなり幅があります:参考1, 3)。

ですのでCPを基準にゾーンの設定を行うと、MLSSは上図のところに位置します。

従来オレンジ色のゾーンは「LT:乳酸閾値」と呼ばれていましたが、実際は乳酸閾値よりも高いパワー出力が含まれます。

そのためこのゾーンは「High Lactate」といった、血中乳酸が徐々に上昇するパワー領域を意味する名前がいいのかなと考えました。



テンポゾーンは「Low lactate」

テンポランといった場合は乳酸閾値(MLSS)強度帯を維持して走るトレーニングを意味することが多いかと思います。

その意味で、緑のゾーンをテンポとするとやや範囲が広すぎると感じます。

Low Lactateといった、低い値ではあるけれど血中に乳酸が貯まっているという意味合いにしてみました。



持久ゾーンを「Fat Oxidation(脂質代謝)」

持久ゾーンでトレーニングする場合、メインの目的は脂質代謝の向上にありますので、より直接的な名前へ。



全体像

今回の記事では推定FTPパワー(FTPテストの結果)からCPパワーに基準を変えて、各ゾーンの名称もそれに合わせて変更してみました。

20分全力走やランプテストで推定されたFTP値を使われている方は、推定FTPよりもクリティカルパワー(CP)の方が高い数値になりやすい(10w前後:参考2)ので、一度3min all-out testを実施されるとCP値が分かります。

ヒルクライムやレースの実走から60分パワーが分かっている方も、是非一度3min all-out testでクリティカルパワー(CP)を計算してみてください。


以上、ゾーンの名称を変えることでトレーニングの際に今何をトレーニングしているのかをより明確にイメージできる名称に変えてみました。


今後認識が変われば違ったゾーン区分や違った名前がいいなと考えるようになりそうですが、今現在考えるゾーンのいい名前について書いてみました。

ご参考になれば幸いです。

最後までお読みくださりありがとうございました。


参考文献

  1. Galán-Rioja, M. Á., González-Mohíno, F., Poole, D. C., & González-Ravé, J. M. (2020). Relative Proximity of Critical Power and Metabolic/Ventilatory Thresholds: Systematic Review and Meta-Analysis. In Sports Medicine (Vol. 50, Issue 10, pp. 1771–1783). Springer. https://doi.org/10.1007/s40279-020-01314-8

  2. Karsten, B., Petrigna, L., Klose, A., Bianco, A., Townsend, N., & Triska, C. (2021). Relationship Between the Critical Power Test and a 20-min Functional Threshold Power Test in Cycling. Frontiers in Physiology, 11. https://doi.org/10.3389/fphys.2020.613151

  3. Mattioni Maturana, F., Keir, D. A., McLay, K. M., & Murias, J. M. (2016). Can measures of critical power precisely estimate the maximal metabolic steady-state? Applied Physiology, Nutrition and Metabolism, 41(11), 1197–1203. https://doi.org/10.1139/apnm-2016-0248


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