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子供に関わる、すべての大人たちへ。日本に必要な「真のアート教育」とは

僕がOVER ALLsを立ち上げた当時もだし、今もずっと言い続けているんだけど、正直アートに対して特に思い入れがあるわけではなくて。

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ただ一つだけ、小学校の時にアートとの印象的な出会いがあって。ピカソのゲルニカっていう絵。

ピカソの絵って何も知らない小学生からすると、変な絵を描く人に見えると思うんだよね。だからぐちゃぐちゃな絵を描いている子を見たら「あなたの絵、ピカソみたいだね。」なんて会話をしたりしてね。

ある時、先生が「みんな、ピカソの絵をどう思う?」って質問したんだよね。そしたら、「変な絵を描く人!」って答える子も多くて、みんな小学生で無邪気だからキュビズムなんて理解が難しくて。それと一緒に、「実はすごく美しい絵も描いていたんだよ」と、他の絵を見せてもらったんだよね。

その当時はプロジェクターなんてものは無かったから、OHPのようなフィルムで投影する機械があったから、それを用意して「カーテン閉めて!」って言われて、みんな一斉にカーテンを閉めたんですよ。

そしたら、壁一面にピカソの「ゲルニカ」が投影されて。ゲルニカって、元々すごい大きい絵なんですよね。そのほぼ実寸大でみせてくれて。

その瞬間、今でも覚えてるんだけど、鳥肌がゾゾゾゾゾって立って。

なぜかというと、ゲルニカは実は戦争の残虐なシーンを描いていて、それをあのキュビズムという手法で表現しているわけですよね。それを実寸大で見たら、ピカソが前に描いていた写実的で美しい正確な絵よりも、はるかに恐ろしく感じてしまって。

牛は叫んでいるように見えるし、首か何かを斬られているような人の断末魔も聞こえてくるような。その恐ろしさを表現するためにキュビズムという手法で描かれていて、それらがドワーっと伝わってきたときに、「うわあ、すげえ」って思ったのを、実はこの会社を始めた時に思い出してね。

今の日本の美術教育やアートの教育、図工もそうだけれど「図って、工作」するですから正解を求めているんですよね。美術も「美の術」であって、キュビズムを”理解”させようとしていると思っていて。だから、無理なんですよね。日本がアート後進国である理由は、僕はその点にあると思っていて。

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そうではなくて、本来アート教育というのは感じさせることが重要だと思うんです。圧倒的な本物を見せ続けるだけでも十分なんですよね。それで、1人でも2人でも、どんどんアートをみて鳥肌が立つような子たちを増やしてあげることが、僕はアート教育で大切なことだと感じていて。だから、子供たちに一回でもいいから幼いうちにそういう機会を与えるために、教育者たちはもっと頭をひねっていろんな場所に連れて行ってあげることで、日本は変わると思う。

僕はこんな見た目ゆえに教育のシーンにはなかなか入りづらいところもあって、まずは会社から日本を変えてやろうとオフィスアート事業に力を入れていて。その後には、必ず教育の分野にも踏み込みたいと思っていますね。教育を変えれば20年後の日本は必ず変わっているはず。だから、今のうちに小学生にアートの教育をもっとやりたい。それはもっと感じさせることに重きをおいたアート教育ですね。

ただこれを言うと、「地元のボランティアやアーティストにお願いしてやってます」という人も出てくるのですが、それでは少し違うと思っていて。失礼かもしれないけど、本物のアートはボランティアでは示すことはできない。だからこそ、僕たちがもっと一線級で頑張らなければならないと思っているし、一線級のやばい人たちを小学生と対峙させないといけないんですよ。

例えば、名和晃平さんの彫刻や村上隆さんの涅槃図といった作品を早いうちに子供に見せてあげてほしいと思う。国内のアーティストの名前ばかり挙げたけれど、海外のアーティストも含めて本物のアートに出会う機会を子供たちに増やしてあげてほしい。

そのために、一つは本物の作家さんたちの作品が展示されている場所に足を運ぶとか、OHPではなく最新のプロジェクターもあるのだから、そういった機材を使って絵を見せるのも良いと思うよ。ARやVRといった技術もあるしね。

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なぜ僕がこれだけ日本において「アートが必要だ」「アートが重要だ」と言い続けているかというと、現代の日本はアート後進国だと言われているけれど、元をたどると日本は庶民アートの先進国のはずなんですよね。

だって、「モナリザ」のように有名なアートは必ず宗教の寺院や教会の強い権威があったところに置かれていたもので、貴族や王様がオーダーをしてそれを描いて納めるという、庶民が楽しむようなアートからは遠かったものなんですよね。

ところが、世界で一番有名な日本のアートといえば「浮世絵」ですよね。その浮世絵は庶民のもの。そう考えたら、実は1700〜1800年代ぐらいの欧州ではアートは貴族や王族のものだった時代に、日本ではすでにアートは庶民が楽しむものだったということで。

では、今浮世絵がどこに繋がったかというと、おそらく漫画に繋がったのではないかと思っていて。だから日本は漫画大国なんですよね。そうすると、庶民がアートを扱うという点においては日本は天才的なんです。他の国や、民族の追随を許さないくらい天才的なのが日本人なわけで。

だから僕は、そういう圧倒的な本物のアートを子供たちに見せることによって、20年後のアート大国はパリでもなく、ニューヨークでもなく、間違いなくここ日本、東京が中心地になっているということを予言します。

石油も産出できない、天然ガスもゴムもそんなに今はたくさん採れないといわれている日本。資源があんまり無いんですよね。そういう状況だったからこそ、加工貿易で高度経済成長を歩んできたわけですが、それすらも今や、中国や韓国の方が家電領域でパワーを増してきていて。

加工貿易というものが徐々に日本の中で細くなってきてる中で、次は何で勝負をするべきかと考えたら、もっとアカデミックな領域にいく必要がある。

その答えは一つなんですよ。文化、つまり「アート」ですよ。だから日本がこのまま大国の地位を守り続けるためには、アートがものすごく大事なんですよ。なので、もっとアートをやらなければいけない。

とすると、今のうちに国としてもアートにもっと予算をかけなければいけないというのがひとつ。そしてもう一つは、教育の方で子供たちにアートのシャワーをどんどん浴びさせる。日本が20年後もGDPでトップ3位に入るためには、この2つが非常に重要と僕は考えています。

なので、これだけ僕はアートの会社必死になって立ち上げてやっているんです。(了)

東京の壁画アートカンパニーOVER ALLsの代表・赤澤(@overalls_aka)が「日本とアートとビジネスとその他諸々」を語る「AKA Channel」シリーズ

※本文は、動画の音おこしを行い、読みやすく一部編集したものです。

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