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【麻布中合格】発達障害の塾無し受験①

12月偏差値50台→2月麻布合格

「麻布中学校…行けるなら、行ってみたい」
2022年12月。
滅多に意思表示をしない、発達障害の息子の一言。
偏差値50台、進学塾は通えず、1日の受験勉強時間は1時間程度が限界。
本命は発達障害に手厚い横浜の私立中学A。
ですが、その2ヶ月後の2月3日、息子は麻布中学校に合格。

発達障害の「天井が見えないポテンシャル」を実感した2ヶ月でした。

息子のこと、受験のこと、書くべきかどうか、悩みに悩みました。これは個人情報で、社会は発達障害へのスティグマ(偏見)が根強く、親としては情報開示による息子へのリスクが心配です。だからこれまで、我が子の「性別と年齢」は伏せて来ました。
このことを、息子に話したところ「開示して欲しい。自分を含む発達障害を、たくさんの人に理解してほしい。偏見のない社会になってほしい」と回答がありました。自分のことを理解されず苦しんでいる、そんな息子が透けて見えました。

麻布中学校 正門

今回悩みながらもnoteで伝えたいことは、主に以下の3点です。

  1. 保護者、先生、会社の同僚・上司・部下など周囲が発達障害を理解すれば、当事者は並外れたポテンシャルを発揮する

  2. 発達障害の強みは、人によってバラバラ(息子の場合は「麻布の受験限定」で相性が良かったです)

  3. 発達「特性」は全ての健常者にも当てはまるので、発達障害の理解は万人に通じる=万人のポテンシャルが生かせる(ニューロダイバーシティの考え方)

発達障害やギフテッドの子供に限らず、全ての子どもや大人の「可能性」を広げて欲しいので、発達障害の息子の受験を書いていきます。

私が発達障害の理解を広めるために論文500本以上読み、民間資格4種取得し、動画メディア《インクルボックス》を始めたのは息子のためですが、発達障害やギフテッドがLGBTQと同様に理解されるには、日本全国、全世界でリテラシーの向上が必須です。
「発達障害は100人いたら100通り」なので、今回のnoteがそのまま参考になる方はいないと思います。ただ、概念や考え方としてご理解いただければと願います。
長くなってしまいそうですが…

※麻布中受験当日、2022年2月1日朝9:00の様子は、前回のnote「発達障害の受験と、親の支援と、進学先」をご覧ください。

息子のスペックと環境

  • ADHDとASDの特性が強めに出て、ややLDと発達性協調運動障害の傾向

  • 高IQ(だからと言って勉強が出来るとは限らない)

  • ADHD薬「コンサータ」など服用(発達障害は病気ではないため、薬で治るということはありません。服用すると「特性」が少し弱まります)

  • 「コンサータ」で多動・衝動・注意欠如が9時間程度おだやかになる

  • 午前6時に服薬、午後15時に効果が切れ、集中の維持が困難になるため塾には行けない

  • 小学校低学年でイジメを経験

  • 発達障害である事は小1のときに本人に告知。学校も共有済み。

  • 通級に6年間通う

  • 民間の療育に3か所通う X社(1〜4年生)、Y社(1〜3年生)、Z社(5〜6年生) その結果、療育の効果は小学校中学年以降に逓減すると知る

  • 習い事(スイミング、体操、プログラミング、英会話)

毎朝6:30~8:00で勉強

ADHD薬「コンサータ」を飲ませると、多動・衝動・注意欠陥が少しおさまります。これにより学校生活での苦痛を減らし、集中力がある程度続きます。
ただ息子の場合、コンサータは「服用後30分で効果が出る」「9時間で効果が切れる」傾向がありました。(コンサータの効果は12時間とされますが、個人差があります)
そのため、毎朝6:00に起床し朝食と薬を服用、6:30から登校の8:00までが、息子の勉強時間となりました。
放課後はコンサータの効果が切れて集中できないため、毎日の習い事で気分を変えました。
18:00頃に帰宅し、夕飯後に学校の宿題など簡単なものを出来る限りやりました。集中できないので本人も辛く、サポートする親も大変な日々でした。

算数検定で自己肯定感を

発達障害だと、当たり前のことがスムーズに出来なかったりします。例えば「ご飯の食べこぼし」。
この要因は発達障害に由来する「指先の感覚が鈍い」「対象物との距離感を取りにくい」「体幹が弱く姿勢が保てない」など様々あります。
あらゆる事が「できない続き」なので、発達障害支援の基本である「自己肯定感」の確保が重要です。たくさんの習い事をさせたのも「何でも良いから『出来る経験』をさせたい」ためです。

息子は保育園の頃から「文字を読む事」と「数字」が好きだったので小1から算数検定(数学検定)の受験を始めました。
毎日「学校の宿題+算数検定」の勉強で1時間程度。興味関心のある事なのでメキメキと力をつけ小3で数学検定3級(中学卒業水準)に合格しました。

「これは凄い!1級も狙える!」とは、残念ながら、なりませんでした。
ここから先は息子の発達障害の特性により、急激にブレーキがかかりました。
(詳しくはタイミングを見て書きます)

麻布を知ったキッカケは工藤勇一校長

私が公私で大変お世話になっている工藤勇一校長(横浜創英)。
2015年、麹町中の学校改革のお手伝いがキッカケでお会いし、現在は横浜創英でもご一緒させて頂いています。
息子の発達障害やイジメ被害を工藤校長に相談する中、息子にも何度も会って頂き、イベントに招いて頂いたりしました。

工藤勇一校長(インクルボックスより)

2019年のある日、息子が小3のとき工藤校長から言われた一言。

「赤平さんの息子さん、麻布が合うと思いますよ」

岩手出身の私は「麻布中」は聞いた事があっても、バリューや難度は知りません。
とりあえず、何の気なくAmazonで麻布の過去問を購入。

実際に使用した2019年に購入した過去問

算数のページを開いて、
そっと閉じ、
棚にしまいました。

まったく、分からない!
大学受験も数学を選択し、自信があった私、なのに、小学生の算数が、分からない!!
以降、2023年1月に再び手に取るまで、過去問を購入したことすら忘れていました。
ただこれで、息子は「麻布中」の存在を知り、何となく「すごい学校」と思っていたようです。

本命は発達障害に手厚い私立校A

この頃までに息子の本命校は「発達障害に手厚い横浜の私立校A」と決まっていました。説明会や体験学習にも申し込み済みでした。
(その後小5、小6で何度も私立校Aに息子とお邪魔し、先生方の素晴らしい理解と配慮に感動。受験も合格。最後まで麻布と迷いました)

しかしこの私立校Aの受験の合否判定は「体験授業」「保護者面接」「本人面接」「発達の履歴の書類」「筆記試験」と多面的に判断されるため、いくら筆記で高得点を取っても不合格のリスクがありました。
そこで、他の発達障害に理解のある私立校B、Cをピックアップし、万全を期すために勉強もしっかりとやることにしました。

この時、私と息子が唯一知っていた「有名な頭の良い中学校」が「麻布中学」だけだったので、勉強するモチベーションを上げる仮想ターゲットとして、何となく「麻布中学」の名前を出すことがありました。
もちろん、本命ではないことは親子で共通認識していた、つもりでした。

同時並行で、他区の「公立校Dの情緒固定クラス」に進学する方法を、区の担当者や公立校D側に相談し、何とかして「息子にとって安心安全な進学先」の確保に必死に走りまわっていました。(この件もぜひ多くの方に知って頂きたいので、別の機会に書きます)

よって息子の進学先候補は以下の4校に絞られました。
《本命》発達障害に手厚い横浜の私立校A
《滑り止め》発達障害に理解のある私立校BとC
《公立》某区の公立中学「情緒固定クラス」

この頃私は、中学受験のために大手学習塾に相談に行きました。
しかし…
●午後3時以降は薬が切れるので、集中力が続かない
●集団授業だと、他の事に意識が飛んでしまう
●本人は知的好奇心が得られないと、学習に取り組めない
これらの事に配慮してくださる進学塾は、もちろんありませんでした。
田舎者の私でも、発達障害の息子を進学塾に入れて勉強の世話をしてもらうのは無理だと深く理解しました。

結局、息子は自宅学習しか学習可能な環境が得られず、毎日毎日早朝1時間をコツコツ、こつこつ、コツコツと積み重ねました。

そんな受験本番が2ヶ月後に迫った2022年12月。
息子から「麻布に行けるなら、行きたい」発言が出たのです。

12月の日能研模試の偏差値は56→55

進学塾に入塾できなくても、四谷大塚や日能研の模擬試験は「外部生」として受験させていただけます。(前回のnote参照

小1から四谷大塚の小学生テストを年に2回、受け続けました。
日能研模試は6年になってから月に1度くらい受けてきたと思います。

2022年12月の日能研模試の偏差値は56と55。
麻布中の合格判定は「再考の必要あり」

日能研12月4日は偏差値56で麻布は「再考ゾーン」
日能研12月24日は偏差値55で麻布は「再考ゾーン」

受験は合格することも成功体験として素晴らしいですが、全力で取り組んで自分の限界を突破する経験もさせたい。
そう思い、私もインクルボックスで積み上げた発達障害支援の知見をフルに活用し、12月ながら本気で「受かるための戦略的サポート」を始めました。すると、あることに気がつき「もしかすると息子の発達特性と麻布中受験は、相性が良い可能性がある」と思い、息子に、

「このままだと絶対に麻布には受からない。でも、お父さんとギャンブルしてみないか?」

と戦略を提案したところ、息子は二つ返事で、
「分かった、やる」
と答えました。

…かなりダイジェストにしたつもりですが、だいぶ長文になってしまったので、一旦ここまでにします。
次回は、発達障害と発達特性を理解すれば、誰でもポテンシャルが生かせる、と実感した息子の麻布受験ラスト1ヶ月を書きます。

発達障害 塾無し受験②はこちら


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