見出し画像

赤井いくらはすじこ派

吾輩は妊婦。名を赤井いくら。

私の手元には常に、「宇宙」と呼んでいるノートがある。
脳から湧き出る毒、偏見、懺悔、野望を思うがままに殴り書き、時にカッコつけた文章で書き綴るノートである。
このノートは、私の家族・親族・友人を超越した私の唯一の理解者である。
そこは宇宙。私の宇宙なのだ。

この宇宙に広がっている数々の星屑、いや、クズを、いくらかネタにして吐き、あわよくば誰かに拾ってもらおうという大変お恥ずかしい自己顕示欲に今日から従順になろうと思う。

自己顕示欲と反対に、私には今日封印しなければならない欲がある。
食欲だ。

正直に言うと、私はスタイルが良い。
そこそこである。中の下である。
いや、下の上である。

書いているうちに自信がなくなったが、
新卒で会社に就職して今日まで、痩せ型のFカップだった。自信たっぷりのFカップだった。

ところが今日、久々に会った母に言われたのだ。
「高校生の頃のいくらに戻ったね(笑)
 太ってる(笑)」
それは言わないでほしかったんだよ、母さん。
高校時代は私の黒歴史だ。
可愛くない、勉強できない、モテない。
くびれのないFカップ。ボンボンボーン。
青春のない、青春時代。

そこからの逆転劇は我ながら凄かった。
うまくいきすぎた。
キラキラの志望校には受験料という名の寄付金を支払うだけになったが、そこそこの私大文系に合格して上京。
初めての一人暮らしで痩せる太るを繰り返すが、そこそこ仲の良い男子もいる大学生活。
そこそこの大学の割にはアベノミクスの恩恵を受けてそこそこの大手に就職。
入社日に出会った隣の席の同期と恋愛関係になり、社会人3年目で結婚。
結婚式もそこそこ盛大にやったった。
いやぁ、うまくいった。
この見た目、この家柄、この頭脳にしては最大限にうまくいった。
この数年が私の真の青春時代だった。

それが、高校生の私に戻っただって?
許せない。許せない。

でも、世間には太っていても精神を安定させて幸せに暮らしている人だっているじゃないか。
自分に言い聞かせてみる。
ええじゃないか、太っていても。
ええじゃないか、ええじゃないか。

いや、嫌だ。

なぜなら、
既婚者の身ではあるが世間からは少しだけ可愛いと思われていたいから。
なぜなら、
少しだけ周りから羨ましいと思われていたいから。
なぜなら、
自分は成功者だと思っていたいから。
なぜなら、
お前よりは可愛いから。
なぜなら、
お前よりは幸せだから。

醜い感情が常日頃私を支配しているのがよく分かる。人と比べることでしか勝った気になれない、負け犬の性分が痛々しい。
なんてしょうもない人間だ。

だが、妊婦の食欲とは恐ろしい。
こんなにも太りたくない人間が、
執筆中の今気がつけば出前サイトを開いてしまっている始末である。
人には負けたくないが、食欲にはあっさり負ける惰性に満ちた人間だ。

いいのだ。私には自己顕示欲がある。
これから、欲に負けることも、人と比べて負けることも、その自分の性分に心底呆れることも、全てをネタに、エンタメにするのだ。
ここを訪れたあなたに、ご覧いただこうではないか。

さて、先ほど開いた出前サイトには「ドライバーが配達に向かっています」と表示されている。

令和の世は便利で、そして強欲な人間に小さな満足感と大きな敗北感を抱かせる天才である。

#赤井いくらはすじこ派
#エッセイ
#日記
#自己紹介

この記事が参加している募集

自己紹介

#創作大賞2024

書いてみる

締切:

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?