（前回からの続き）
神戸大学夜間学部に入学した僕だったが、昼間の学生から差別・侮辱されたことに憤りを覚えて、「こんな大学から脱出して、一流大学に入りなおしてやる！」と決意する。大学受験を迎えたが、東大・早慶はおろか、関関同立にも不合格になってしまう自分がいた・・・そして、親友のカズヤは早稲田大学政治経済学部に合格し、嫉妬に狂うのであった・・・。

第六章　偏差値80を目指す

僕の受験結果は、散々なものだった。英語と国語の偏差値は70を超えていた。数学も65に到達していた。それなのに、東大早慶はおろか、関関同立すら不合格になる始末・・・。

そうか・・・僕は、100の努力をしても、100全てが返ってくる人生じゃないんだ・・・だったら、1000の努力をすれば、100くらいは返ってくるはずだ！

僕は決意した。僕は、英語と国語の偏差値を80まで上げる。
これで、東大すら余裕で合格するレベルになれば、少なくとも早慶は絶対に合格できる。

そういえば、高校受験のときもそうだった。

その時も僕は、同じ中学の親友と一緒に受験した。今回と同じように、彼の成績は僕より悪く、僕が「応援している」という感じの受験だった。僕は塾が「必ず受かる」という太鼓判を押すぐらいの成績だったが、第一希望の高校には落ちた。そしてその親友は奇跡で受かった。その時から、その親友とは会わなくなった。それは通う高校が別々で、住む世界が変わってしまったからだ。

もし早稲田慶應に合格するには、「早稲田慶應など落ちるなんてありえない」こんなレベルまで自分を賢くする必要がある。早慶ならば、どんな過去の問題集をやっても、ほぼ満点近く取れるくらいの力が必要だ。

「運」など作用しない領域に進まねばならない。それが偏差値80だ。

神戸大学夜間、これが僕を動かす原動力だ。「いい大学に行きたい」と心から思わせてくれた。

そして2浪目は親には言えなかった。誰にも言えなかった。だから一応、大学に通わなければならない。単位をとることは親との約束だった。

僕は予備校も辞めた。そんなお金を出す余裕はなかった。今度は独学で大学受験を乗り切るんだ。

神戸大学夜間に僕は一年ぶりに帰ってきた。そしてこれがさらに、僕を異常な世界へといざなうことになる。とんでもないヤツラがそこにいて、僕は出会うことになる。

そのとんでもないヤツの中心が、前半で述べたシンジさんだ。ここまでほとんど触れてこなかった。１年目は、カズヤとの方がアツかったが、ここからのドラマは、このシンジという男と、行動を共にすることになる。

カズヤという男も僕を動かした。しかしこのシンジという男は、それ以上にこのドラマを盛り上げてくれた。

そしてドンドン受験は加速することになる。そして「大学生」の本当の姿を目にすることになる。

ドラマはここから始まる。もしかすると、ここまでは「イントロダクション」だったといえる程、この２浪目は劇的なものだった。

第七章　神戸大学夜間に復学！

僕は１年ぶりに神戸大学夜間に復学した。

大学の授業は、大体４月の上旬から始まる。それまで、家で受験勉強を相変わらず続けていた僕は、久しぶりに大学に行くことになった。授業初日のことだった。

僕は落ちてからの一ヶ月、屈辱に耐えられなくて、ほとんど人間との接触を絶っていた。だからこそ気分転換に大学はもってこいだ。そう思って僕は家を久しぶりに出た。しかしそれは大きな間違いだった。休学するときに考えていた、「落ちたら何を言われるか分からない」という事を忘れていたのだ。

授業初日、一年ぶりに僕はあの長い、そして辛い山道を僕は登り、ようやくキャンパスにたどり着いた。

授業少し前で、食堂でまた勉強しようと向かっていたら、前から見たことのある奴が歩いてきた。王将だった。そうあの模擬試験を見せて、反感をくらった彼だ。僕はとっさに「まずい」と思ったが、もう時すでに遅かった。

彼は僕を発見すると、満面の笑みを顔に浮かべ、駆け寄ってきた。「落ちたんやって？」彼は嬉しそうに僕に声をかけた。僕はようやく気付いた。落ちたらこれが待っているという事を。

王将はあれだけ自分を不快にさせた奴が、見事に失敗して帰ってきたので、本当に元気になっていた。「落ちたんやって？どこ受けたん？そんなに受けたのに全部落ちたのかぁ。オマエには難しかったんやな」と、一方的にしゃべりだした。

そして彼は、最も僕の感情を逆なでする発言をかます。

「やっぱりね。俺は落ちると思っていたよ。オマエは本当に根性がないからなぁ」笑いながらこう言ったのだ。彼はもしかしたらそこまで悪気はなかったのかもしれない。冗談だったのかもしれない。ただ僕は一切笑えなかった。

「違う！あれだけ勉強したんだ！勘違い野郎ではない！」僕はこう叫びたかった。

「本当は受かったんだ！」

ただ僕は結果として落ちた。だから何も言えなかった。

僕は苦しまぎれに、王将にこう返した。

「オマエは龍国大学から仮面浪人で、ここに受かったんだよね。よく成功したね。すごいよ。僕も君みたいだったらなあ。」

龍国から神戸大学夜間と、夜間から東大早稲田慶應ではレベルが全然違う。そんな事情を踏まえての、僕からの精一杯の皮肉だった。しかし彼には僕のそんなささいな攻撃は、全く通じなかった。それどころか、彼はそれを「褒められている」と勘違いして、ご機嫌になってしまったのだ。

「そうやなぁ。龍国から仮面浪人したときは辛かったなぁ。オマエはそういう辛さに耐える力が、無いんや。俺はホンマにあの時は頑張ったよ。仮面浪人とはこういう風にするんやで・・・・・・・」と、あげくの果てには、「龍国脱出」の自慢と「仮面浪人とは」の説教話が始まった。

もう笑うしかないのかもしれない。しかし僕は笑えない。引き続き黙って彼の話を聞くしかなかった。僕は思った。ここでキレて王将に殴りかかっても、何も始まらない。こん悔しさをにぎりしめながら、頑張るしかない、合格するしか道はないのだ、と。

僕は本当に悔いがないくらいに頑張った。だからこの落ちた悔しさは、計り知れないくらい大きい。王将のこの「お出迎え」は本当に脳裏に焼き付いた。ヤル気がますますわいてきた。

王将はこう繰り返した。

「カズヤは受かると思っていたよ。オマエはもっと頑張らなあかんでえ」

王将にはこの時１年ぶりに会った訳で、彼は僕の不合格やカズヤの合格を、何故知っていたのだろうか。後々分かったことだが、僕達の情報はどこからともなく流れ、ほとんどの知り合いには恐るべき速さで広がっていたらしい。「偏差値情報」かつ、他人の不幸話に、彼らがどれだけ興味を持っていたのか分かった。別にこれを否定はしない。夜間に限らずコンプレックスはどこにでもあることなのだ。ただ身をもってこの真実を実感しただけだ。

王将に限らず、高校の友達などからも僕は認められなかった。親からでさえもだ。過程は結局どこからも評価されなかった。僕は自分の中にある「仲良しこよし」という価値観が、もろくも崩れ去っていくのを感じた。

僕は授業に出た。ただ去年休学してしまったので、ほとんど僕は「新入生」みたいなもんである。だから２年生だけど、１年生の授業に出ることになった。僕は正直有り難かった。というのも同期のほとんどの２年生は、僕の不合格を知っており、あまり顔を会わしたくないからだ。しかしそれは間違っていた。

もちろん同期には変な奴がたくさんいたが、この共に授業を受ける「新入生」の方が、数段狂っていたからだ。今考えてみれば「よく揃ったな」というくらい、コンプレックスにまみれた人間達がそこにはいた。

まずは最初の授業、僕は「ヒルマ」「イガ」「ＩＱ」という奴と知り合いになった。全員年は同じの１浪生だった。こいつらが別名「オ−ルスタ−」の代表だ。

「ヒルマ」という奴だが、彼は神戸大学「昼間」を受験して、不合格。そして名前を得るためだけに、この「夜間」に入学してきたらしい。会った時から、「僕は昼間を受験した。一応，関西学院大学は合格した。」と自己紹介をかまし、僕は彼から「夜間にいるけど、本当はもっと出来るんだよ」という意識がビンビン感じられた。やはり卑屈に生きている奴はいない。

そして「イガ」という男だが、彼も立命館大学には合格したが、名前だけ得るためにここに来たらしい。そして傑作だったのが、「自分は小学生の時に、学校の手違いで５年生を２回やってしまった。だからオレは年は君と同じだけど、現役でこの夜間にやってきた」というのだ。

彼は自分が「夜間」に１浪して入ってきたことをエラク気にして、怪しいウソをついて隠そうとしていた。ここにも「俺は本当は頭がイイんだ」というアピ−ルが出ていた。「どんな些細なことでも、自分はバカにされたくない」というプライドが、全面に感じられた。

ここまででも十分おかしいのだが、次のＩＱという奴が一番おかしかった。Ｍｒコンプレックスと言っても過言ではないだろう。

「自分はＩＱ１６０」、彼はそう僕らに自己紹介した。ＩＱ１６０と言えば、「天才」である。

ＩＱは知能指数の略で、学力にはある程度比例すると言われている。普通の人間は１００で、チンパンジ−は８０という感じからすると、彼は間違いなく「天才」だ。本やインタ−ネットで調べてみたが、ＩＱ１６０あれば、本一冊でも一回読めばほとんど暗記してしまう位らしい。まして受験勉強なんか取り組めば、楽々偏差値８０ラインまでくるかもしれない。

しかし彼は受験をやった結果、「夜間」にいることはだけは間違いない事実だ。それに彼のその後の行動などを見ていても、どうにもそんな「天才」だとは思えない。

こういう妙な自慢も、「自分は頭がいいんだ」という表現の一つにしかなかったのだろう。「神戸大学夜間」では、どこに行っても「頭がいいね」とは評価されない。だけど卑屈になれないから、こういう風に自分で自分に「ＩＱ１６０」というブランドを張り付け、「大学名ではなく、このＩＱ１６０で俺を評価してくれ。どうだ、頭がいいだろう」と言いたいのだと思う。

「俺は本当は頭がいいんだ」これを認めてほしい、この考えは僕と同じだ。

しかし「ここにいては認められない。頭がいいってほめられたいなら、イチイチ自分で自慢したくないなら、良い偏差値の大学に行かなければならない、それなりのブランドをつけなければならない」ということに、彼らは気付いていない。いや、気付いているけど行動に移してはいないのだ。これではやはり、今までの夜間生と同じだ。

そして入学した彼らの自慢のし合いを聞いた後、何となく「夜間脱出」めいた話になった。脱出と言えば、「編入」が一番現実的な手段かもしれない。だから彼らは「編入！編入！」と早くも燃えていた。

ところがその後、彼らはその「受験」よりも簡単な「編入」でさえも、手をつけられなくなる。１ヶ月もたてば、そういう話は一切聞かなくなった。

「イガ」は「この大学が好きになったから」と言うし、「ヒルマ」は「俺は勉強をやりにここに来たから、編入なんてくだらない」と返された。

「ヒルマ」や「イガ」はこの後、「受験！受験！」と活発に活動しだす僕に、最後まで「くだらない」とか「何やってんだ」「やめろ」と妨害してくる。そして僕のワルグチを周りに繰り返し、ちょっかいをだす。

１浪目にも言ったことだが、本当に「偏差値」や「夜間」に満足しているなら、僕が脱出しようとしても「無関心」のはずだ。

しかし彼らはそうはいかないのだ。コンプレックスの塊だった。

ただここでも言い訳が一番おもしろかったのは、ＩＱだった。

「編入はどうしたの」と僕が聞くと、彼は「やめた」という。

その大きな理由は、「編入なんて簡単だから、そんなことよりももっと別の試験をやっているよ。レベルが高いことしようよ」というのだ。

彼は現在「司法試験」を勉強しているらしい。司法試験合格によって、「自分は夜間だけど、司法試験に受かったんだ。すごいだろう」と言いたいのだろう。

確かに編入試験はそこまで難しくはない。一般の入学試験に比べると簡単だ。教科数も英語と論文だけである。だからこそその気になれば、真っ先に手にできる勝利だ。「夜間」から抜けだし、堂々と自己紹介出来るブランド大学生になれる。

ではどうして「編入」をやらずに、それより１００倍くらい難しい「司法試験」などに手を出すのか。司法試験などは偏差値７０の東大生でも苦戦するような、最難関の試験である。

答えは簡単だ。彼はほんの少しの勉強も出来ないのだ。だから「編入」のわずかな勉強でさえ辛くて取り組めない。そんな自分をごまかすため、受かりもしない司法試験を、”一応”目指しているのだ。受かるためにやっているのではない。「そんな難関を目指しているんだよ、俺は」というブランドを、手にするためだけにやっているのだ。

世の中にはこういうことがよくある。司法試験や官僚の試験といったハイレベルな場では、「記念受験」という人達が大半である。彼らは「受かる」ために受験するのではなく、「受験した」という証拠を得るために、やってくるのだ。「あぁそんなレベルの高い試験を目指してたんだ。すごいね」と言ってもらうために受験するのだ。

本当に些細なブランドだ。しかし少しの勉強も出来ないＩＱにとって、この些細なブランドにすがりつくしかなかったのだ。編入をすれば楽になる。しかし勉強はイヤなのだ。それに編入はやればそこまで難しくないだけに、「受かること」が求められてくる。「受かる」「落ちる」がリアルに分かってしまう。勝負することになる。傷つく可能性も出てくる。

ところが司法試験なら、「絶対に受からない」という結果がやる前から分かっている。だから勉強なんかしないでもいい。ただ「目指している」という、簡単に手に入るブランドがあればいいのだ。

司法試験合格、これは受験の何倍もの努力が必要だ。だからこそ受験である程度頑張れなかった奴は、ほとんど受かるなんて事はないのではないか。事実、合格者のほとんどは偏差値の高い一流大学出身者ばかりだ。

「学歴」とは「努力出来るか、出来ないか」の基準でないかと僕は思う。だから偏差値の高いヤツは、努力出来る。努力すれば様々なことが、自分のものになる。そういう風にして、彼らは一歩一歩階段を昇り、最終的に「司法試験合格」を手にするのだろう。

もちろん「学歴」なんか関係なく、司法試験合格出来る人達もいるだろう。ただそういう人達は、相当の心がけと「絶対受かる。そのための死ぬほどの努力をしてやる」という熱意がなければならないだろう。

僕はＩＱもそのタイプだと思いたかった。しかし違った。彼は大体２ヶ月程で、「司法試験」から「公認会計士」、「国家一種試験（官僚採用試験）」、「国税調査官試験」ところころ目標が変わっていったのだ。その度に「司法試験なんてやっぱつまらない」とか、「官僚試験なんか簡単。目指す価値なんかないよ」だとか、「口先」が先行し、僕を失望させた。

しかも彼はその度に高い月謝を払い続けて、すべてムダにしていた。これではとても「ＩＱ１６０の天才児」とは信じられないだろう。

彼はもう「コンプレックス」の渦の中に飲み込まれていた。

「夜間」という生活の中で、彼らのコンプレックスはさらに加速する。しかし最後まで行動は一切起こさなかった。そんな彼らだからこそ、僕は全員にとって「敵」と見られた。そういうことが大きな刺激となり、僕を異常な方向へと駆り立てていくのだった。

第八章　僕の受験計画

来年の受験までに、英語国語は偏差値８０。数学は偏差値７０代。社会は６０後半。ここまでやれば、早稲田慶應はもちろん、「東大」まで確実に見えてくるだろう。

この時僕は、受験直前期の時と同じ勉強スタイルを続けていた。それは東大京大一橋早稲田慶應などの一流大学の過去問題を、２回３回繰り返すというやつだ。この時は、早稲田慶應はほぼ全学部持っていたので、近くのコンビニに通いコピ−を繰り返していた。英語や国語はこの調子をキ−プした。

これで実力が伸びるのか分からない。ただ勉強をやっていて「苦しかった、辛かった」この感覚を僕は大事にした。苦しい、辛いと自分が思っているならば、それはレベルの高い難しい問題で、力になっているという事だ。「簡単、ラクチン」と思っていれば、それは簡単な問題であり、たいして疲れるはずもない。よって力がつかない。

世界史と日本史は、まずは漫画を読んで基礎中の基礎を固めることにした。漫画であれば、面白く読み進めて、イメージで理解できる。それから、教科書を読んで論述できるようにペンで紙に文章を書いていく訓練をした。

「不運」など起きえない驚異の偏差値をとり、１浪目の時の様な「逆の奇跡」が起きたとしても、それでも合格を確実に勝ち取る。これを目標にした、僕の「偏差値７０からの大学受験」がついに始まった。「受験に絶対はない」はよく聞く言葉だ。しかし僕は、敢えてそれに挑戦を挑むことになる。

「どうすればいいか」

そんな自問自答が繰り返されるなか、ついに２浪目最初の模擬試験がやってきた。

「受験は才能」このジレンマに、ついに決着がつくときがやってきた。

第九章　夜間生が全国ランキングについに登場！脱出部の結成！

河合塾の全統記述模試の結果が返ってきた。

偏差値は・・・英語　78、国語　75、数学　69、世界史　66、日本史　63
早稲田慶應はどの学部もA判定、京都大学・一橋大学すらA判定だった。

東大はB判定だった。

こんな数字、僕は２年前には想像もつかなかった。「偏差値７０後半」なんて「天才」だと思っていた。

ところが僕はついにここまでやってきた。全国ランキングにも名前が出ている。「天才」でしかたどり着けないと思っていた場所に、僕自身が立っている。そうここまで勉強すれば、誰でも取れる成績だったのだ。

「受験に合格できるか」は分からないが、「偏差値」だけは誰でも取れる簡単なことだった。世間で目の敵にされる様な、「タチノワルイ」ものではなかったのだ。むしろ「正々堂々」としていた。

「僕はもうだまされない。受験は才能じゃない」と決心してからは、もう迷いはなかった。

「このままずっと勉強し続けてやる。そして偏差値も上げまくってやる」

そしておかしな事だが、勉強は楽しくなかったものの、この時から模擬試験は楽しくなった。それは何故かというと、「偏差値がとれるようになった」からだ。

例えばこういうことだ。僕は陸上部で、長距離が得意だ。学校の体育の授業で、みんなが嫌う「長距離」になった時、僕だけは楽しみだった。みんなよりタイムが速くて、活躍出来るからだ。自分が得意だったら、どんなものでも楽しくなるのだ。こんな感覚みなさんにもあるだろう。

信じられないことだったが、「勉強」にもそれが通用した。つまり何のこともない、「勉強」も「スポ−ツ」と同じで、何も「神秘的」なものではなかったのだ。

後に塾で講師をやった時のことだ。そこでは、わざわざテストの点数を生徒に隠し、彼らを傷つけない様に、かなり気を使ったりした。「やりたい勉強、偏差値で学校を選ぶな」相変わらず、こればっかりだ。「差別化」は絶対厳禁だった。ではサッカ−の授業で、差別化しないように、上手い奴はテントの中へ隔離したりするのだろうか。それでは誰も上手くはならないだろう。

「勉強」も「サッカ−」もみんな同じだ。サッカ−でも練習がイヤで、試合やゲ−ムが楽しみなように、勉強でも毎日の勉強がいやだけど、ゲ−ムである「模擬試験」は楽しみだ。だからその試験のために勉強していく。その結果一番嬉しい「合格」がある。それだけのものだった。

それなのに何で「勉強」はすごい事、特別なものと見られるのだろうか。僕はここまで勉強していく事で、自分が教えられてきた「勉強像」が、かなり間違いである事に気付いた。

ついに僕は偏差値７０から走り始めた。見たこともない世界がそこにあり、僕は様々な体験をすることになる。「良い大学」に受かって、人から認められたい、そして何より、自分で自分を認めたい、こう強く願っていた。その気持ち僕をここまで動かした。

そして「絶望」と思われた「合格」も確実に目の前に現れた。迷うことはない。やり続けるのだ。「合格」する、「脱出」する、僕は確かな手応えを感じた。

シンジさんは僕の知る中では、唯一コンプレックス正直に認め、正々堂々戦っている人だった。

関西での最大規模での編入模試でも、論文ランキング２位。英語も受験時代から偏差値７０。編入試験の内申書である、大学の成績はほとんどＡ。つまり彼は編入において死角がない。必ず合格するラインにいた。

やることは何でもやる、身近な編入から確実に決める、そういう強い意志が感じられた。そんな彼を僕は尊敬し、彼も僕を尊敬してくれた。

僕はシンジさんとしょっちゅう一緒に勉強していた。一人で勉強していると、本当にイヤになってくるが、彼と勉強していると「自分もさぼれない」と闘志がわいた。それに何より、「孤独」が紛らわされた。

それでもやはり勉強は、楽しいものではなく、「苦痛」だった。

静かな場所で机に向かって勉強するという事に、僕はもはや耐えられなくなっていた。そりゃそうだ、２年近くも受験勉強をしているからだ。その状況におかしくなりそうだった。楽しいことなんて何もない。限界といえば、限界だった。

だからなるべく外で勉強するようにした。ざわざわしている大学の食堂が、「人恋しい」気持ちを癒してくれて、一番勉強しやすかった。

朝９時くらいから自宅で３時間ほど勉強し、気分転換もかねて大学に移動する。そして昼の１時から、合流したシンジさんと、大学の授業までひたすら勉強。さらに夕方から始まる夜間の授業中も、まるで高校生の内職の様に、勉強し続けた。最後に家に帰っきて、夜の１１時から深夜の１時くらいまで、また勉強。ト−タルで相変わらず１０時間ほどはやっていた。

ところが一つ問題だったのが、「お金」だった。親は僕がまさかまだ受験しているなんて知らない。だから普通にバイトもしているだろうと考えて、大体一月に４万円くらいの食費を、仕送りしてくれた。普通に考えればこれは当然の額だが、受験勉強をしている僕にとって、少し問題があった。

月４万なら、一日１０００円ちょっと使えるわけだが、僕は受験勉強に過去問題コ−ピ−を大量にしていたので、ここでお金を使ってしまった。

大体一日に軽く５０枚以上はコピ−していから、そうすると残りの食費は５００円から７００円程度になってしまう。だから朝は抜いて、昼と夜は２００円ちょっとの食事になった。

大学ではほとんど毎日、一杯２２０円のラ−メンを食べたりしていた。夜はハンバ−ガ−かカップラ−メンが多かった。安くて腹のはるものなら何でもよかったので、ある時は「柿の種」を大量に買い込んで、一週間ほど夕飯は毎日「柿の種」を食べたりした。

それだと栄養的にかなり問題があるので、最後は「自炊」に落ち着いた。お米を１０キロまとめ買いして、毎日少しずつ炊く。そして白米の上に、おかずを一品のせるだけ。そのおかずは豆腐や納豆、ノリ、生卵などが多かった。そんな「穀類生活」に耐えられず、どうしても肉が食べたくなって時は、ハンバ−ガ−の肉を取り出して、おかずにしたりしていた。

また新しい過去問題集を買ったり（１６００円程度）、模擬試験を受験したりする時は（４０００円程度）、もう大変だ。どうしようもないくらい生活が苦しくなったりした。

親に一言「受験するから、お金くれ」と伝えれば、すべては解決する問題だが、１浪目は散々ワガママをさせてもらった身だ。それでも合格しなかった。口が裂けても「２浪する」なんて言えなかった。何よりそんな惨めな自分を見せるのはイヤだった。そんな恥ずかしい自分を見せるくらいなら、黙って勉強する方がよっぽどマシ、と思った。

ところがこんな「受験貧乏」は、僕だけではなかった。僕よりももっと悲惨な人がいた。それはシンジさんだ。彼は編入の予備校に通っていたので、お金が大量に無くなっていた。当然勉強からバイトする時間もなく、本当に貧困だった。彼も僕と同じ様な予算で、食費を立てていた。

彼は大学ではほぼ毎日、１２０円の中ライスに、６０円の小さいメンチカツ一個を注文し、ケチャップをかけて食べていた。２００円にも満たないその食生活は、本当に質素で、「こんなクサイ飯食うのも、今年限りにしたいですよ。早く抜け出したいです」といつもこぼしていた。

栄養のことなど一切気にしない彼の夕食などは、もっとひどいもので、カップラ−メンなどは当たり前。ポテトチップスを２０日間食べ続けたり、チョコレ−トのお菓子で一週間暮らしたりと、もう何でもありの状況だった。

彼は神戸に来てから、１年間チョイもこの生活を繰り返していたため、体が既にボロボロだった。いつも食べ物が入ると、お腹がおかしくなって、トイレに駆け込んでいた。その光景はいつも異様だった。

彼は言った。「もうこんな夜間に居たくないです。コンプレックスに疲れました。人間はこんなもんです。合格はしたいけど、これから長くは生きていたくはないです」と。少し自虐的な感情があったシンジさんは、この生活を苦とせず、むしろあえて自分の身をこの様な状況に置いて、傷つけているとしか見えなかった。

僕は彼を止めることは出来なかった。夜間に身を置く「クサイ」僕達は、昼間の連中が楽しそうにおしゃべりをしながら、爽やかにゴハンを食べているその横で、同じように美味しくゴハンは食べれなかった。それが現実だ。「夜間」を抜け出さない限り、コンプレックスに陥った僕達は、ゴハンでさえ美味しくない。まして幸せには絶対なれないのだ。今年は徹底的に腐るしかない。

信じられないくらいに、僕達の考え方は曲がっていた。しかしこのネジ曲がった考えは、その異常さゆえ、本当に力になった。自分を極限にまで追い込むことが出来た。

僕達はこんな自分たちの活動を、勝手に「サ−クル」化した。

その名は「脱出部」。コンプレックスから抜けだし、真の「自分」を獲得するのが目的だ。別に何かイベントをするわけではない。ただただ毎日ひたすら勉強するだけだ。

大学側に公式に認めてもらおうと思ったが、やめた。怒鳴り帰されるのがオチだからだ。　こうして二人だけの「脱出部」が幕を開け、共に壮絶な戦いに挑んでいく事になる。

去年のカズヤさんとの１年間とは全く違う、ドラマが始まったのだ。

第十章　コンプレックスの巣窟、大学のサ−クルとはこんなもんだ！

そんな僕達だったが、夏休みに入ると「息抜き」のため、月に一回、大学のサ−クルに行くことになった。これが僕を、さらに狂わせた。

サ−クルとは、大学で青春を謳歌する素晴らしいものと、世間では言われている。

ところがこれはデタラメだった。

全てのサ−クルがそうだとは言えないが、少なくとも僕の行ったサ−クルは、楽しみたいけど楽しめなかった。偏差値の低い者には、その「楽しむ」資格がなかった。

参加したのは、あるディベートサークルだった。このサ−クルは神戸大学だけでなく、様々な大学との共同で運営する、全部で２０人ほどの小さいサ−クルだった。「いろんな大学同志、仲良くやろう」、これが彼らのテ−マだった。

ところがこの「共同運営」というのが、一番まずかったのだ。様々に偏差値の違う大学同志が、仲良くやっていけるはずないのだ。２０に近い大人達が、「平和に平等に」なんて、出来るはずないのだ。

なまじっか「ディベ−ト（討論）」で活動するので、サ−クルの権力は「いかに知性をアピ−ルし、ディベ−トで活躍するか」で決まった。となると男性は誰でも「権力」にあこがれるので、ディベ−トでいいカッコを目指す。

ところがここで大問題だ。

そう「大学名」だ。神戸大学のヤツが発言すれば、全員「すごい」となるが、偏差値４０代の大学の連中が発言すると、「調子にのるな」というキツい視線がビリビリと支配する。つまり「偏差値が低い人間は、説得力がないよ」という訳だ。案の定偏差値が低いのに、イキがるヤツは、どんどんサ−クルを脱退せざる得なくなる。

表面上は「人間平等だ。偏差値じゃなく人間性でしょう」と言っているが、実情はとんでもなかった。「あの人は偏差値が低くても、人間が素晴らしい」というヤツもいたが、大体ディベ−トでは静かに目立っていない人間だった。卑屈に生きていれば、偏差値が低くても評判を得ていた。だが卑屈に生きられる人間なんていない。

舞台裏では、偏差値の低いやつは偏差値の高いやつを否定し、高いやつは低いやつをバカにしていた。

気になる女の子の評価でも、「大学名」は確実にブランドとなっていた。もちろんルックスの善し悪しもあるが、正直になれば、「大学名」ブランドが大きな決定力になっていた事は事実だ。

「男はカッコよさか内面」、というのが僕の高校時代だった。ところがここでは「大学名」というブランドが加わった。

基本的に大学生はほとんど暇だ。何かに打ち込んでいる奴なんていない。みんな動きを一斉に止めているので、やはり唯一差が出るのは「大学名」くらいだったのだ。

「大学名」、「権力争い」、「人の悪口」、「男女問題」、それらが渦巻くサ−クルは、ある種「社会の縮図」だった。

僕はといえば、「斎藤はノンキでいいよな」「いつも笑っていられて、うらやましいよ」「バカだな、オマエは」、いつもこうだった。ある時は、「神戸大学でも、夜間でしょ？」と、女の子にまでバカにされた。しかし全部事実だ。反論しても「負け犬の遠吠え」だ。黙るしかない。

僕は完全にナメられていた。ここでも評価の基準は、「神戸大学夜間」だった。

サ−クルで卑屈に生きる自分の姿を見るのが、本当にヤル気を起こさせた。「こんな姿で一生終わりたくない」そう奮い立たせられた。

口でどうこう言っても始まらない、体で分からせてやるぞ！僕はこう決心した。これが全てのきっかけだった。

僕はサークル全員の評価をくつがえすため、英検準１級、河合塾の全統記述模試での勝負をしようと、挑戦状をたたきつけた。相手はもちろん、サ−クル内で権力を握る、「神戸大学、昼間生」だ。

第十一章　夜間学生VS昼間学生、決戦のとき

夏が終わった。僕の受験勉強はついに２年を超えた。実際この頃になると、自分でもかなりの力がついているのが分かった。

日本では英語の受験レベルを超えているとされる、慶應義塾大学の総合政策学部、環境情報学部、通称「ＳＦＣ」の入試問題がある。３、４ペ−ジの難解な英文を読み、３０個の選択肢題に答えるというものだ。以前テレビで、本場のアメリカ人でも「分からない」と言っていたのを見た。それくらい難しいのだ。当然受験界でもバッシングは凄まじく、「合格者の大半は運で決まる」とまで酷評されている試験だ。

１浪目、確かに早稲田慶應レベルは解けたが、このＳＦＣは別格だった。自分では解けることなんて有り得ない、と思っていた。予備校でも具体的な勉強方法が確立されていない程、「有り得ない試験」だからだ。

ところがこれだけ勉強して、何千もの英文を読みこなしていった僕は、ついにＳＦＣまでも、確実に分かる様になっていた。やはり受験に不可能はないのだ。努力すればどんな問題でも、必ず出来るようになる。そう確信した。

「読める！確かに読める！」この興奮は今でも忘れない。あれだけ難しいと思った問題が、確実に出来ている。運ではなく、しっかりと文章構造までがつかめていた。時間は多少かかるが、７割から８割程度まで得点出来るまでになっていた。かたっぱしから「要約」もしていった。

こんなところまで自分を引き上げた。だからその力を、サ−クル中に分からせてやりたかった。勝負だ。誰が一番すごいかはっきりさせてやる。

彼らにこう叫ぶのだ。ここに偏差値８０近くの「夜間」がいるぞ、君たちの大好きな大学名を追い求める、偏差値オタクがいるぞ、と。

矛盾するかもしれないが、「大学名で人は判断できない」という事を、実感させたかった。

どうしたら最も衝撃的か。

僕はこう考えた。この登場シ−ンは、出来るだけ派手な方がいい。

「そうだ、昼間の学生と一緒に受験して、勝負してやればいい」

僕はヤキソバという神戸大学昼間のヤツに、「英語検定準１級、一緒に受けないか？」と誘った。

英検準１級は、偏差値７０レベルの難関試験だ。サ−クルではその時、誰も持っていなかった。サ−クルで評判の彼は、僕の事を「バカ」だとしか思っていないので、快く受験を承諾した。

「一緒に受けよう」と言っている時点で、もう勝負だということだ。しかし彼にとって僕は相手だとも思われていなかった。

僕はサ−クル中にこの勝負を伝えた。

僕は最も得意とするフィ−ルドで、彼と戦うことになった。

「夜間」ＶＳ「昼間」ついにこの勝負がやってきた。あれだけあこがれていた「昼間」の人間と、この手で戦えるのだ。

サ−クル中は「ヤキソバ勝ち」を確実としていた。いや、勝負とさえ見ていなかった。あの斎藤が勘違いしてるぞ、という位だったのだろう。

第一戦は９月の模擬試験。第二戦は１０月の英語検定準１級。公平を期して、勝負科目は英語一教科。これなら大学生、受験生関係ない。周りは何とも思っていなかったが、僕は絶対に負けるわけにはいかなかった。意地があった。

第十二章　驚異の偏差値８０！神戸大学志望者、全国第一位！これが「夜間」の実力だ！

９月１５日。日本で最大規模の模擬試験が行なわれる日、僕はまるで受験本番の様に緊張していた。「まずはここでヤキソバに勝つ。必勝！」こう自分に言い聞かせ、僕は試験会場に向かう。

サ−クル中が注目するわけで、僕の英語以外の成績も、くっついて公表されるわけだ。完璧な成績表を出してやりたかった。

ただ僕には自信があった。英語の他に、その切り札は「国語」だ。

ハイレベルな問題集を片っ端から購入し、すべて「要約」する。早稲田慶応レベルの過去問題も、すべて「要約」する。これを２年間近く毎日毎日やっていると、どんな問題でも解けるようになっていた。古文も大体完璧に近く、死角はなかった。

ヤキソバはバイトの帰り、余裕でやってきた。会場の大教室に入るなり、「模擬試験なんて久しぶりだなぁ。試験といえば、いつも神戸大学の期末試験だからなぁ」と近くに座っている受験生に、ワザと聞こえるような声で話し出した。周りの受験生は会話を止めて、ヤキソバの方を見ていた。当然だ。彼らの憧れである「神戸大学」の学生がここにいるのだ。輝かしい勝者が、今自分たちと同じ模擬試験を受けているのだ。

ヤキソバは確かに勝者だった。俺は格が違う、という自信が満ち溢れている。僕はなおのこと、彼に勝たねばならなかった。

試験は怒濤のごとく過ぎていった。

その後の結果は恐ろしいものだった。僕は返ってきた結果を見て、何がなんだか分からなかった。

「ヤリ過ぎた」

それが最初の感想だった。そう、ここまでヤル必要はなかったのだ。

英語は９割近くで偏差値79だった。数学は76、世界史は68、日本史は65。そして何より、国語は84だった。特に現代文はほとんど間違えていなかった。

僕の志望校には、しっかりとあの大学名が書かれていた。

そう、「神戸大学経営学部、昼間コース」と。

当然Ａ判定だった。そしてぶっちぎりで全志望者中トップだった。全国で１１００人程度が志望していたが、全員敵ではなかった。ダントツトップ、ぶっちぎりの1位だった。

最大の皮肉だった。「神戸大学」全国志望者のトップに立った男が、神戸大学「夜間」なのだ。「夜間」をバカにする「昼間」のトップが、「夜間」なのだ。仮に経営学部じゃなくて、どこの学部を書いても、僕はダントツ一位だっただろう。つまり僕は、その年度の神戸大学トップになった。

続いて英検準１級。その試験に出る単語レベルは、「異常」とも言えるものだった。普通の受験生なら、まず読めないだろう。ただ当時の僕に「分からない」単語はほとんどなかった。

何も問題ない。余裕で合格した。２次試験の面接はあるけど、受験者の９割は受かるので、もう僕は合格したのも同然だ。

ついに僕はとんでもないところまでやってきた。全国クラスというレベルまで、到達したのだ。「夜間生」であるこの僕がだ。

成績表を持った僕は、最初にシンジさんのもとに向かう。

ただ自分で言うのも何だが、僕はこの時正常ではなかった。この成績が僕を少しずつおかしくさせていたのだろう。

彼はいつもの食堂にいて、僕の結果を待っていた。

「どうでしたか？」彼はこの勝負を応援していた。「夜間の意地をみせてやりましょう」これが合い言葉だった。僕は黙って模擬試験と、英語検定の成績表を渡す。

彼はみるみる顔を変えた。そして一言目だった。

「貼りましょうか？」

僕はこの時の衝撃を忘れない。あの極限の状況だったからこそ、出た言葉だったのだろう。「模擬試験を大学中に貼り出す」、こんな事思いも寄らないことだった。

サ−クルだけではない。大学の昼間の連中に全員見せつけてやるのだ。「夜間とはこんなもんだ！偏差値が何だ！」こう叫ぶのだ。

シンジさんは興奮気味に言った。「この成績なら貼り出せます。誰も文句言えないですよ。神ですよ！こんな成績、僕は今まで見たことがありません！いくら神戸大学生でもありえない成績ですよ」と。

昼間だけじゃない。夜間で卑屈にコンプレックスに溺れている奴にも、この成績を見せつけたかった。クラスでは夜間生が、未だに「自分の頭の良さ」をアピ−ルし合っていた。裏では「あいつはバカだ」と友達の悪口をも言い、自己満足している。怪しいプライドが、錯綜していた。ハタから見れば何て惨めな光景だろう。

「コンプレックスなら、正々堂々戦おうぜ！」　僕はただそれだけを、彼らに言いたかったのだ。

その日、僕達は本当に普通ではなかった。「模擬試験を貼り出す」、そんな発想普通なら到底思いつかないだろう。ただあの時は、確かに何でもありだった。

それからの１週間、毎日カップラ−メンにしてお金を作り、模擬試験ビラを５００枚もコピ−した。真っ黒な下地に、模擬試験の成績が張り付けられ、題字には大きな文字で、「僕、夜間！偏差値８０！僕ってすごいでしょ？」「夜間の実力はこんなもんだ！」と踊っている。そして成績表の「志望校」の欄には、「神戸大学昼間コ−ス、全国１位」と書かれ、マジックでグリグリにマ−クしてある。その横には、「夜間、ナメんな！」の文字。一種異様なビラだった。

僕達は夜遅くまで、大学中にビラを貼りまくった。ありとあらゆるところに貼りまくった。掲示板、教室の壁、挙げ句の果てには天井まで張り付けた。その姿はもはや「普通」ではない。「異常」だ。

この時から僕は心に決めた。「もう黙っているのは終わりだ」と。

正々堂々勝負してやる。みんな見ていろ、この僕が偏差値８０の夜間生だ！

僕は自分の中で、何かが変わっていくのに気付いていた。平凡平和で過ごしてきた、あの高校時代が懐かしかった。僕の人生は確かにフツ−だった。ただ今は違う。僕はこの手で神戸大学中を敵に回し、そして全国という舞台で勝負するのだ。

もう後戻りが出来ない、そう僕は自分に言い聞かせた。

次の日の朝、僕はサークルの「ロング」という昼間の神戸大学生からの電話でたたき起こされた。

「あれ、オマエだろう！学校が大変なことになっているぞ！」

彼の声は興奮気味だった。しかし寝ぼけている僕には、彼が何のことを言っているのか分からない。彼は繰り返した。「早く大学に来い！早く！」と。

大学に行ってみると、驚くべき光景が広がっていた。ビラが貼ってある場所には、黒山の人だかりが出来ていたのだ。予想もしないことだった。

普通、大学には様々なビラが貼ってある。サ−クルの勧誘チラシやら、思想団体のメッセ−ジなど、大量に貼ってある。これはありふれている風景なので、誰も足を止めて、それぞれのビラを見たりはしない。

ところが、この「模擬試験」ビラでは話が違った。誰もが通った受験の成績表だ。しかも「夜間」のものである。さらにその数字は驚異的なもの。学生全てがこれに、強力に吸い寄せられた。食い入るように見入っている。「受験なんて終わったよ」こういう勝者達でも、興味津々だった。

僕はてっきり、「へぇ」ぐらいで、流されるもんだと思っていた。誰も関心など示さない、そう考えていたが、大きくその予想はくつがえされる。

その人だかりの側に行くと、「何やこれ？」「夜間が受けたらしいよ」とざわめきあっている。「こんなくだらないものに・・・」とク−ルを装いながらも、我慢できないのか、目を凝らして眺めている。挙げ句の果てには、教授までもが興味深げに立ち止まった。

大学中ありとあらゆる所で、「模擬試験ビラ」の話題がもちきりだった。食堂で勉強していれば、隣に座るほとんどの学生達が、「見た？」「見た！見た！」「何だあれ？」「何でこんな事するんだろう？」など、ビラ事件で盛り上がっていた。

中には「俺は昔、偏差値がこうだった」とか思い出話に花を咲かせる者、「あの成績表は、英語がどうだ、数学がどうだ」と、ご丁寧に分析までする者までいた。もうみんなが夢中である。

大学生活はとかく暇だ。そんな彼らにとって、「偏差値ビラ」は最高のスパイスだったようだ。「そんなに偏差値が大好きか」、僕は強く確信した。

ビラに対しては、もちろん賛否両論あったが、平均して「こんな事するなんて、気持ち悪い。だけどすごい」というのが、昼間の連中の意見だった。

昼間の連中は、一応受験の「勝者」だ。だから余裕があるんだろう。

ところが、夜間では話が違った。

誰もが認めざるを得ない成績を叩き付けてやった。しかも「夜間」がだ。昼間の連中の評判をくつがえしてやった。そして僕は受験を正々堂々戦うことを、宣言してやったのだ。だから僕は、夜間の連中がほめてくれる、もしくは「あの斎藤が・・・すごい」と言われると思っていた。中には僕と同じく、自分のコンプレックスを認め、戦いを決意するものが現れる、とまで思っていた。

しかしとんでもなかった。

クラスに意気揚々と入っていくと、まずは「ヒルマ」が駆けよってきた。そして怒りに満ちた声で、「何であんなことするんや！くだらない！何が受験や！夜間の恥や！」と吐きつけてきた。何を言ってるんだ、夜間がバカにされているのは、オマエでも分かるだろう！逆に評判を上げてやったのはこの僕だぞ、こう怒鳴り返してやりたかった。ただ僕も大人だ。ここは抑えた。

そんなにくだらないなら、無視すればいいだろう、イチイチ構うなよ、僕はこう言った。　すると彼の顔はみるみる引きつり、最後にこう言ってのけた。

「何が偏差値８０や。何にもすごくないで。そんな数字でイキがるなよ」

さすがの僕でも、これにはキレそうになったが、その怒りを通り越して呆れていた。もう彼らには何も伝わらないのだ。

ＩＱは「こんなの誰でもとれるやん。サイトウはアホやで」と繰り返し、僕の悪口を広めはじめ、未だ状況は変わっていない。いや、むしろ以前より状況は悪化した。

その日、昼間の学生と違い、夜間の学生には余裕が無かった。

ビラの周りに黒だかりに集まり、興味津々なところは昼間生と変わらないものの、そのビラに口汚くののしっていた。誰もほめたり、すごいなんて言ったりする者はいない。

「何が受験や、くだらない！何でこんなことするんだ、アホ！」こればっかりだ。

僕は思わず言ってやりたかった。

去年のバクダンにしてもそうだ、「アホ、クサイ、キモイ」と言われているのは、オマエらの方なんだぞ、と。

僕は一躍夜間の中では有名人になった。いや、全員が敵になったと言った方が、良いのかもしれない。名前は知らなくても、教室に入れば全員から注目された。決して良くは思われていない視線だ。中には睨み付けている奴もいる。

僕はビリビリとこの肌で、自分一人抜け出した感覚を感じていた。

彼らはとても元気だった。何故なら僕がとてつもない成績を出しているとはいえ、まだ夜間にいるからだ。彼らは全力をもって、僕を止めにかかった。

「ヤツを外に出して、勝者にしてはいけない」、そんな意識だ。

僕がその日大学を帰る頃、ＩＱ、ヒルマ、イガ、その他のコンプレックス連中が一同に集い、僕を待ち構えていた。

そして僕の目の前で、嫌らしい笑みを浮かべながら、こう言い放ったのだ。

「こんなのたかが模擬試験だよ、くだらない。大学に受かったわけじゃない！こんなビラ、全部剥がしてヤルよ。何にもすごくない！」。

彼らは僕達の模試ビラを、ことごとく剥がし始めた。「正義の味方」になったつもりか、彼らは得意満面だった。

僕は黙って引き下がるしかなかった。シンジさんはこの話を聞き、「ますますここに居たくなくなりました」とこぼす。絶望がさらに深まっていったのだ。

僕は怒りに満ちた。

昼間のヤキソバは僕の成績を見て、「こりゃすごい、オマエはすごいんだな」と認めてくれた。さすが勝者の余裕。ここの成績では負けても、天下の神戸大学生だ。人生では負けてはいない。イチイチこんな些細な勝負に目くじらは立てない。またサ−クル中の評判も一変した。良くは思われないものの、「タダ者ではない」という評価になった。

しかし夜間は全然違う。口で言っても、分からない。ところが体で分からそうとしても、それでも分からない。

とんでもないヤツを怒らせてしまった事を、彼らは気付いてはいないようだ。

僕は決心した。彼らを後悔させてやるまで、僕は敢えて戦ってやる。もう止められないし、止まらない。

（続く）

(Continued from last time) I enrolled in the evening course at Kobe University, but I felt resentment that I was discriminated against by the daytime students. do. When I took the university entrance exams, I found myself failing not only at the University of Tokyo and Waseda University, but also at Dousisha University.

Chapter 6 Aiming for a deviation value of 80

My test results were mixed. The deviation value between English and Japanese was over 70. I had reached 65 in mathematics. Even so, I failed to pass the Waseda-Keio, University of Tokyo, and even Dousisha University.

I see... I don't live in a life where even if I put in 100 efforts, I'll get 100 in return... If so, if I put in 1000 efforts, I should get at least 100 in return!

I made up my mind I will raise the deviation value of English and Japanese to 80. With this, if even the University of Tokyo can easily pass, at least Keio will definitely pass.

Come to think of it, it was the same when I took the high school entrance exam. At that time, I also took the exam with my best friend from the same junior high school. Just like this time, his grades were worse than mine, and I felt like I was cheering him on. My grades were so high that the cram school gave me the stamp of approval that I would definitely pass, but I didn't get into my first choice high school. And his best friend miraculously passed. Since then, I haven't seen my best friend. That's because the high school they go to is different, and the world they live in has changed.

If you want to pass Waseda Keio, you need to be smart enough to say, "It's impossible for someone like Waseda Keio to fail." With Waseda-Keio, you need to be strong enough to get close to a perfect score no matter what kind of past problem collection you do.

We have to move on to areas where "luck" doesn't work. That is the deviation value of 80.

Kobe University night, this is the driving force that moves me. He made me think from the bottom of my heart that I wanted to go to a good university.

And I couldn't tell my parents about the second wave. I couldn't tell anyone. So, I have to go to university. I made a promise to my parents to take credits.

I also quit preschool. I couldn't afford to spend that kind of money. This time, I'm going to get through the university entrance exams by studying on my own.

I came back for the first time in a year at night at Kobe University. And this, in turn, invites me into an anomalous world. There's a hell of a guy out there, and I'm going to meet him.

The core of that outrageous guy is Shinji-san, who I mentioned in the first half. I've barely touched on it until now. In the first year, it was more hot with Kazuya, but from here on the drama will be with this man named Shinji.

A man named Kazuya also moved me. However, this man named Shinji made this drama even more exciting.

And Don Don's exam will accelerate. And you will see the true appearance of "college students".

The drama starts here. Perhaps this second wave was so dramatic that it could be said that it was an "introduction" up to this point.

Chapter 7 Returning to Kobe University at Night!

I went back to Kobe University night school for the first time in a year.

University classes generally start in early April. Until then, I had been studying for entrance exams at home as usual, and I decided to go to university for the first time in a while. It was the first day of class.

For a month after I fell, I couldn't stand the humiliation, so I cut off almost all human contact. That's why college is perfect for a change of pace. With that in mind, I left home for the first time in a while. But it was a big mistake. I forgot what I was thinking when I took a leave of absence, "I don't know what to say if I fail."

On the first day of class, I climbed that long and painful mountain road for the first time in a year and finally arrived at the campus.

Just before class, when I was heading to study again in the cafeteria, a guy I had seen before walked by. he was a prince That's right, he was the one who got the antipathy when I showed him that mock exam. I immediately thought, "This is bad," but it was already too late.

When he spotted me, he ran over with a big smile on his face. "Did you fall?" he said happily to me. I finally realized That this is waiting for you when you fall.

The king had made himself so uncomfortable, but he had failed spectacularly and returned home, so he was really in good spirits. "Did you fail? Where did you pass? Did you fail all of them even though you passed so many? It must have been difficult for you," he said one-sidedly.

And he makes remarks that touch my emotions the most.

"Well, I thought I was going to fall because you really have no guts," he said with a laugh. Maybe he wasn't so mean. It may have been a joke. I just couldn't laugh.

"No! I studied so much! I'm not a misunderstanding bastard!" I wanted to shout.

"I actually got it!"

I just fell as a result. So I couldn't say anything.

In desperation, I replied to the king.

“You were a masked ronin from Ryukoku University, and you passed here. You did well. That’s amazing. I wish I was like you.”

From Ryukoku to Kobe University at night, and from night to Tokyo University Waseda Keio, the level is completely different. It was my best sarcasm based on such circumstances. But he didn't get through my petty attacks at all. On the contrary, he misunderstood it as "praising" and got in a good mood.

"That's right. It was hard when I became a masked ronin from the dragon country. You don't have the strength to endure that kind of pain. I really did my best at that time. Masked ronin does this So...", and at the end of the story, they boasted about "Escape from the Dragon Country" and preached about "What is a masked ronin?"

I may have to laugh now. But I can't laugh All I could do was keep quiet and listen to him. I thought Even if I get angry and hit the king here, nothing will start. I felt that I had no choice but to do my best, and that I had no choice but to pass the exam.

I really tried my best to have no regrets. That's why the regret of this fall is immeasurable. This “welcome” by the king really stuck in my mind. I'm getting more and more excited.

The king repeated:

"I thought Kazuya would pass. You should try harder."

It was the first time in a year that I had met Osho, so I wondered why he knew about my failure and Kazuya's passing. As it turned out, our information seemed to flow out of nowhere and spread with terrifying speed to most of our acquaintances. I found out how much they were interested in "deviation value information" and other people's misfortune stories. I will not deny this. The complex is everywhere, not just at night. I just felt this truth with my own body.

I was not recognized not only by the King, but also by my high school friends. Even from my parents. The process was ultimately not evaluated by anyone. I felt the sense of value of "good friends and good friends" crumbling away.

i went to class However, I took a leave of absence last year, so I'm almost like a "freshman". So even though I'm a second year student, I decided to attend a first year class. I was really grateful. This is because most of the second year students in the same period know that I failed the exam, so I don't want to see them very much. But I was wrong.

Of course, there were a lot of strange guys in the same period, but this "freshman" who was taking classes with me was way out of order. When I think about it now, there were people there who were covered in complexes to the extent that they were like, “Well, I got it all together.”

First of all, in the first class, I got acquainted with guys named "Hiruma", "Iga" and "IQ". All of them were 1st rosei of the same age. These guys are the representatives of the alias "All-Stars".

This guy is called "Hilma", but he took the Kobe University "daytime" exam and failed. And it seems that he entered this "night" just to get his name. From the moment we met, he introduced himself by saying, "I took the exam in the daytime. I passed Kwansei Gakuin University." I felt a binging. After all, there is no one who lives servilely.

And a man named "Iga", who also passed Ritsumeikan University, seems to have come here just to get his name. And the masterpiece was, "When I was in elementary school, I was in the fifth grade twice due to a mistake at school. So I'm the same age as you, but I'm active and came this night."

He was worried about the fact that he had come in one night, and was trying to cover it up with a dubious lie. Here too, there was an appeal that "I'm really smart." The pride that "I don't want to be made a fool of, no matter how trivial," was felt throughout.

It's funny enough so far, but the next one called IQ was the funniest. It would not be an exaggeration to say that Mr. Complex.

“I have an IQ of 160,” he introduced himself to us. Speaking of IQ 160, it is "genius".

IQ stands for Intelligence Quotient and is said to be proportional to academic ability to some extent. Considering that a normal human is 100 and a chimpanzee is 80, he is definitely a "genius". I looked it up in books and on the Internet, and it seems that if you have an IQ of 160, you can memorize even one book by heart after reading it once. Moreover, if you study for the exam, you may easily reach the 80 line deviation.

However, it is an undeniable fact that he is "at night" as a result of taking the exam. Besides, looking at his actions after that, I don't think he's that kind of "genius".

This kind of strange boasting was probably just another way of saying, "I'm smart." In "Kobe University Night", no matter where you go, you will not be evaluated as "intelligent". But I can't be servile, so I want to stick the brand "IQ160" to myself like this and say, "Evaluate me with this IQ160, not the name of the university. How do you think I'm smart?" I think it's

"I'm really smart." Admit it, this idea is the same as mine.

However, "I can't be recognized here. If you want to be praised for being smart, if you don't want to brag about yourself, you have to go to a university with a good deviation, and you have to create a certain brand." they don't realize. No, I'm aware of it, but I haven't taken action. After all, this is the same as the night life up until now.

And after listening to the boasting of those who entered, it became a story like "night escape" somehow. Speaking of escape, "incorporation" may be the most realistic means. That's why they were already burning with "Transferred! Transferred!"

However, after that, they can't handle even the easier "transfer" than the "examination". After a month, I never heard of such a thing.

"Iga" said, "Because I like this university," and "Hilma" replied, "I came here to study, so it's stupid to transfer."

After this, "Hiruma" and "Iga" interfered with me, who started to be active, saying "Take the exam! Take the exam!" And I repeat my walguchi around and make a mess.

As I said in the first round, if you are really satisfied with "deviation value" and "night", you should be "indifferent" even if I try to escape.

But they don't. It was a lump of complex.

But again, the most interesting excuse was IQ.

When I asked him, "What happened to the transfer?" he said, "I quit."

The main reason for this is that, "It's easy to transfer, so I'm doing a different exam than that. Let's do something with a high level."

It seems that he is currently studying for the bar exam. By passing the bar exam, he probably wants to say, "I passed the bar exam at night, but it's amazing."

Admittedly, the entrance exam is not that difficult. It's easier than the general entrance exam. The number of subjects is only English and papers. That's why if you feel like it, it's the first victory you can get. Get out of the "night" and become a branded college student who can proudly introduce yourself.

Then why don't you take the 100 times more difficult "bar exam" instead of "transferring"? The bar exam is the most difficult exam that even a Tokyo University student with a deviation score of 70 will have a hard time.

The answer is simple. He can't even study a little. That's why he can't work on even a little study of "transfer" because it's hard. In order to deceive himself, he is aiming for the bar exam, which he does not even pass. He's not doing it to be accepted. I'm doing it just to get a brand that says, "I'm aiming for such a challenge."

Such things often happen in the world. In high-level places such as bar exams and exams for bureaucrats, most people call it a “commemorative exam.” They don't take the exam to "pass", they come to get proof that they "taken the exam". “Oh, I was aiming for such a high-level exam.

It's a really small brand. However, I had no choice but to cling to this trivial brand for IQ who could not study even a little. Incorporating will make it easier. But I hate studying. In addition, it is not so difficult to transfer, so "passing" is required. "Pass" and "Fail" are understood realistically. You will win. There is also the possibility of getting hurt.

However, in the case of the bar exam, I know the result that I will never pass, even before I take it. So you don't have to study. It's just a matter of having an easy-to-find brand that you're aiming for.

Passing the bar exam requires a lot more effort than taking the exam. That's why most of the people who couldn't do their best in the exam won't pass. In fact, most of the successful applicants are graduates of top universities with high deviation scores.

I think that "educational background" is the standard of "whether you can make an effort or not". That's why a guy with a high deviation value can make an effort. If you put in the effort, everything will become yours. That's how they will climb the stairs step by step and eventually get "passed the bar exam".

Of course, there are people who can pass the bar exam regardless of their "educational background". However, such people must have a considerable amount of determination and enthusiasm to say, ``I will definitely pass.

I wanted to think that IQ was also that type. But no. In about two months, he changed his goals from the "bar examination" to "certified public accountant" to "national examination (bureaucratic employment examination)" to "national tax inspector examination". Each time, I was disappointed by the "lips" that followed, such as "The bar exam is boring after all" or "The bureaucratic exam is easy. It's not worth aiming for."

Moreover, he kept paying a high monthly fee each time, wasting it all. With this, it would be hard to believe that he is a “child prodigy with an IQ of 160”.

He was already swallowed up in a vortex of "complex".

In the life of "night", their complex accelerates further. But in the end, nothing happened. Because of them, I was seen as an "enemy" by everyone. That kind of thing was a big stimulus and drove me in an abnormal direction.

Chapter 8 My Exam Plan

By next year's exam, the English national language will have a deviation value of 80. Mathematics is a deviation value in the 70s. Society is in the late 60's. If you go this far, you will surely see not only Keio Waseda, but also the University of Tokyo.

At this time, I continued with the same study style as the time just before the exam. It is the one that repeats the past problems of top universities such as Tokyo University, Kyoto University, Hitotsubashi Waseda Keio, and so on, two or three times. At this time, Waseda Keio had almost all departments, so I went to a nearby convenience store and made copies repeatedly. English and national languages kept this trend.

I don't know if this will increase my strength. I cherished this feeling of "It was painful, it was painful" just studying. If you think it's painful, painful, it's a high-level difficult problem, and it means you're helping. If you think, "It's easy, it's easy," it's an easy problem and shouldn't be tiring. So I have no strength.

For world history and Japanese history, I decided to first read manga and solidify the foundation of the foundation. If it is a manga, you can read it interestingly and understand it with an image. After that, I practiced writing sentences on paper with a pen so that I could read the textbook and make an argument.

Even if a "reverse miracle" like the first wave occurs, you will still win the pass without fail. With this as my goal, my "university entrance exam from a deviation value of 70" has finally begun. “There is absolutely no way to pass the exam” is a common phrase. But I dare to challenge it.

"What should I do"

While such questions were being asked and answered repeatedly, the first mock exam of the second wave finally came.

The time has finally come to settle this dilemma, "Taking exams is talent."

Chapter 9 Night students finally appear in the national rankings! Formation of the Escape Club!

The results of Kawaijuku's Zento descriptive exam have been returned.

Deviation value: English 78, Japanese language 75, Mathematics 69, World History 66, Japanese History 63 Waseda Keio was graded A in all departments, even Kyoto University and Hitotsubashi University were graded A.

The University of Tokyo was judged as B.

These numbers would have been unimaginable to me two years ago. I thought "deviation value 70 latter half" was "genius".

But I finally made it this far. The name is also in the national ranking. I myself am standing in a place that I thought could only be reached by "genius". It was a grade that anyone could get if they studied so far.

I don't know if I can pass the exam, but it was easy for anyone to get only the "deviation value". It wasn't a "Tachinowarui" thing that would be seen as an enemy in the world. Rather, he said, "Fairly fair."

After I made up my mind, ``I won't be fooled anymore.

“I will continue to study like this.

And the funny thing is that although studying wasn't fun, mock exams became fun from this point on. The reason for this is that "the deviation value can be obtained".

For example: I'm in the track and field club, and I'm good at running long distances. I was the only one who was looking forward to the "long distance" that everyone hated in the physical education class at school. It's because I'm faster than everyone else and I can play an active part. If you are good at something, you will enjoy it. I'm sure you all have this feeling.

I couldn't believe it, but it worked for "studying" as well. In other words, there was nothing wrong with "studying" being the same as "sports", and nothing was "mysterious".

Later, when I was a lecturer at a cram school. There, I took great care to hide my test scores from the students and not hurt them. "Don't choose a school based on what you want to study, the deviation score." “Discrimination” was strictly prohibited. Then, in soccer class, are good guys isolated in tents so as not to discriminate? No one will do well then.

"Study" and "soccer" are all the same. In the same way that I don't like practicing soccer and enjoy games and games, I don't like studying every day, but I'm looking forward to "mock exams," which are games. So I study for the exam. As a result, there is the happiest "pass". That was it.

Why, then, is “studying” seen as such a special thing? By studying so far, I realized that the "study image" that I had been taught was quite wrong.

Finally I started running from deviation value 70. There is a world I have never seen before, and I will have various experiences. I had a strong desire to be accepted into a “good university” and be recognized by others, and above all, to be recognized by myself. That feeling got me this far.

And the "pass" that seemed to be "despair" definitely appeared in front of me. Do not hesitate. Keep doing it. "Pass", "Escape", I felt a certain response.

Shinji-san was the only person I knew who honestly admitted his complexes and fought fair and square.

Ranked 2nd in the paper ranking in the largest transfer mock exam in Kansai. English is also a deviation value of 70 from the time of the exam. Most of the university grades in the transfer exam report are A's. In other words, he has no blind spot in the transfer. He was definitely on the line to pass.

I could feel their strong will to do whatever they had to do, and to make a sure decision starting with the transfer that was close to them. I respected him, and he respected me.

I often studied with Shinji. When I study alone, I really don't like it, but when I study with him, I feel like I can't slack off either. Above all, "loneliness" was distracted.

Still, studying was not fun, but "pain".

I couldn't stand studying at my desk in a quiet place anymore. That's right, because I've been studying for exams for almost two years. The situation seemed strange. Nothing fun. Limits were limits.

So I tried to study outside as much as possible. The bustling university cafeteria healed my feelings of "missing people" and was the easiest place to study.

I study at home for about 3 hours from around 9:00 in the morning, and then move to university for a change of pace. Then, from 1:00 in the afternoon, Shinji-san, who joined us, studied earnestly until the university classes. Furthermore, even during the night classes that started in the evening, I continued to study like a high school student's side job. Finally, I came home and studied again from 11:00 p.m. to 1:00 a.m. I was doing about 10 hours in total as usual.

One problem, however, was money. My parents don't know that I'm still taking the exam. Therefore, thinking that he would normally work a part-time job, he sent me about 40,000 yen a month for food expenses. If you think about it normally, this is a natural amount, but for me who is studying for the entrance exam, there was a little problem.

If it's 40,000 a month, I can spend a little over 1,000 yen a day, but I ended up spending a lot of money because I was copying a lot of past papers to study for the exam.

Since I easily copy more than 50 sheets a day, the rest of the food expenses will be about 500 to 700 yen. That's why I skipped breakfast and had lunch and dinner for a little over 200 yen.

At university, I ate a bowl of ramen for 220 yen almost every day. At night, there were many hamburgers or cup ramen. Anything that was cheap and filling would do, so at one point I bought a lot of persimmon seeds and ate them for dinner every day for about a week.

That would cause considerable nutritional problems, so in the end I settled on "self-catering". I buy 10 kilograms of rice in bulk and cook it little by little every day. And just put one side dish on top of the white rice. The side dishes were often tofu, natto, seaweed, and raw eggs. I couldn't stand such a "grain life", and when I really wanted to eat meat, I would take out the meat from the hamburger and use it as a side dish.

Also, buying new past question papers (about 1,600 yen) and taking mock exams (about 4,000 yen) are already hard. My life became so painful that I couldn't help it.

If you tell your parents, "I'm taking the exam, please give me money," all the problems will be solved, but the first wave was a selfish person. Still didn't pass. Even if my mouth was torn, I couldn't say "I'll do two waves". More than anything else, I hated showing myself so miserable. She thought she would rather study in silence than show herself so embarrassed.

However, I was not the only one who was "poor to take the exam". There were people worse off than me. That's Shinji. He had gone to a transfer prep school, so he had lost a lot of money. Of course, I didn't have time to study and work part-time, so I was really poor. He also had the same budget as me, and was paying for food.

Almost every day at university, he would order medium rice for 120 yen and a small mince cutlet for 60 yen and eat it with ketchup. His eating habits, which cost less than 200 yen, were really frugal.

His dinner, which doesn't care about nutrition at all, is even worse, and cup ramen is the norm. He ate potato chips for 20 days, lived on chocolates for a week, and so on.

After he came to Kobe, Choi repeated this lifestyle for a year, so his body was already in tatters. Whenever there was food, his stomach would go crazy and he would run to the bathroom. The sight was always strange.

He said. "I don't want to stay at night like this anymore. I'm tired of the complex. Human beings are like this. I want to pass the exam, but I don't want to live for a long time." Shinji, who had a bit of a self-deprecating feeling, didn't find this life difficult, but rather put himself in such a situation and could only see it as hurting him.

I couldn't stop him. "Kusai" who put themselves in the night time, we couldn't eat the same delicious rice next to the daytime people chatting happily and refreshingly eating rice. That's the reality. As long as we don't get out of the "night", we who have fallen into a complex don't even eat rice. You will never be happy. This year, I have no choice but to rot thoroughly.

Our thinking was unbelievably crooked. But this twisted idea, because of its anomaly, really helped me. I was able to push myself to the limit.

We arbitrarily turned our activities into a “circle”.

Its name is "escape section". The purpose is to get out of the complex and acquire the true "self". I don't do any other events. Just study hard every day.

I tried to get official recognition from the university, but I gave up. It's because it's the punchline to be yelled at and sent home. Thus, the curtain rises on the "escape club" of just the two of them, and together they will face a fierce battle.

A drama that was completely different from last year's year with Kazuya had begun.

Chapter 10. A nest of complexes, this is what university circles are like!

We were like that, but when summer vacation began, we decided to go to the university circle once a month to take a break. This made me even more crazy.

Circles are said by the public to be a splendid way to enjoy youth at university.

But this was bullshit.

I can't say that all circles are like that, but at least the one I went to was fun, but I couldn't. Those with low deviation scores were not qualified to "enjoy" it.

I participated in a certain debate circle. This circle was a small circle of about 20 people in total, which was jointly managed not only by Kobe University but also by various universities. Their theme was "Let's get along with each other at various universities."

However, this "joint management" was the worst. College comrades with different deviation values can't get along well. There is no way adults who are close to 20 can do "peacefully and equally".

Since they are active in ``debate'', the power of the circle was determined by ``how to appeal to the intelligence and how to play an active role in the debate''. In that case, all men yearn for "power", so they aim to be cool in debates.

But here's the big problem.

That's right, the name of the university. If a guy from Kobe University makes a statement, everyone will say, "Amazing," but if a university student with a deviation score of 40s makes a statement, a harsh look will rule over them, saying, "Don't get carried away." In other words, "a person with a low deviation value is not persuasive." Even though the expected deviation value is low, the guy who is excited will have no choice but to leave the circle.

On the surface, he said, "Human equality. It's human nature, not deviation." Some said, ``Even though he has a low deviation, he's a wonderful human being. If you live servilely, you will gain a reputation even if the deviation value is low. But he doesn't have a human being who can live servilely.

Behind the scenes, the low deviations denied the high deviations, and the high deviations mocked the low deviations.

Even in the evaluation of the girl I was interested in, the "university name" was definitely a brand. Of course, there are good and bad looks, but to be honest, it is true that the “university name” brand was a big deciding factor.

When I was in high school, I was told that a man should be cool or on the inside. Now, however, a brand called “university name” has been added.

College students are basically free. No one is into anything. Since everyone stopped moving all at once, the only difference was the "university name".

"University name", "power struggle", "bad words", "gender issues", the swirling circle was a kind of "microcosm of society".

As for me, it was always like this: "It's okay for Saito to be sober." At one point, even a girl made fun of me, saying, "At Kobe University, it's nighttime, right?" But it's all true. Even if you argue, it's "a loser's howl." I have to shut up.

I was completely taken for granted. Again, the criteria for evaluation was "Kobe University Night".

Seeing myself living a servile life in the circle really made me feel like I was going to do it. "I don't want to end my life like this."

No matter what you say with your mouth, it won't start, I'll make you understand with your body! I made up my mind That's what started it all.

In order to overturn the evaluation of everyone in the circle, I threw a challenge to compete in the Eiken Pre-1st Grade and Kawaijuku's Zento Written Examination. Of course, the opponent is "Kobe University, daytime student" who holds power in the circle.

Chapter 11: Night students vs. daytime students, at the time of the decisive battle

Summer is over. I have been studying for my entrance exam for over two years. In fact, by this time, I realized that I had gained considerable strength.

In Japan, there are entrance exam questions for Keio University's Faculty of Policy Management and Faculty of Environment and Information Studies, commonly known as "SFC," which are said to exceed the level of English exams. It involves reading 3 or 4 pages of difficult English texts and answering 30 multiple-choice questions. I saw on TV before that even real Americans said, "I don't know." That's how difficult it is. Of course, the bashing in the exam world is terrible, and it is a test that is criticized to the point that "Most of the successful applicants are determined by luck."

I was able to solve the Waseda Keio level, but this SFC was a special case. I thought there was no way I could solve it myself. This is because it is an “impossible exam” to the extent that no specific study method has been established even at the prep school.

However, after studying so much and reading thousands of English sentences, I was finally able to understand even SFC. After all, it is not impossible to take the exam. If you try hard enough, you will be able to overcome any problem. I was convinced.

"I can read it! I can definitely read it!" I still remember this excitement. The problem that I thought was so difficult has definitely been solved. It wasn't luck, but I had a firm grip on the sentence structure. It took some time, but I was able to score about 70% to 80%. I also did a "summary" from Katappa.

I pulled myself up to this point. That's why I wanted to make that power known throughout the circle. It's a match. I'll make it clear who's the best.

shout out to them: Here's a "night" with a deviation value of nearly 80, and a deviation value otaku who pursues the name of your favorite university.

It may be a contradiction, but I wanted to make people realize that "a person cannot be judged by the name of the university."

What is the most shocking?

I thought This appearance scene should be as flashy as possible.

"That's right, you can take the exam with the students in the daytime and compete."

I asked Yakisoba, a daytime student at Kobe University, "Would you like to take the Pre-1st Grade English Proficiency Test together?"

Eiken pre-1 grade is a difficult test with a deviation value of 70 levels. No one in the circle had one at the time. He has a good reputation in circles, and since he only thinks of me as "stupid", he willingly agreed to take the exam.

As soon as you say, "Let's take it together," it means that it's already a match. But he didn't even think of me as his opponent.

I told the circle about this match.

I decided to fight him on the field that I'm most good at.

"Night" VS "Daytime" Finally this game came. I can fight with my own hands the "daytime" human that I admired so much.

During the circle, he was sure of a "yakisoba win". No, I didn't even see it as a match. That Saito must have misunderstood, I guess.

The first match is the mock exam in September. The second round is the English proficiency test pre-1st grade in October. To be fair, the winning subject is English. It doesn't matter if you're a college student or an examinee. People around me didn't think anything of it, but I absolutely couldn't afford to lose. It was mean.

Chapter 12 Amazing Deviation Value of 80! Kobe University applicants ranked first in Japan! This is the power of "Night"!

September 15th. On the day when Japan's largest mock exam was held, I was as nervous as if I were taking the actual exam. "First of all, I will beat Yakisoba here. Victory!"

The whole circle will be paying attention, so my grades other than English will also be announced together. I wanted to give a perfect report card.

I was just confident. Besides English, the trump card is the national language.

Buy high-level problem collections one after another and "summarize" them all. All the Waseda Keio level past problems are also "summarized". After doing this every day for nearly two years, I was able to solve any problem. The ancient writings were almost perfect, and there were no blind spots.

Yakisoba came home from a part-time job with plenty of time to spare. As soon as I entered the large classroom at the venue, I said, "It's been a long time since I've had a mock exam. Speaking of exams, it's always the final exam at Kobe University." The surrounding students stopped talking and looked at Yakisoba. Of course. The student of "Kobe University" who is their admiration is here. The bright winners are now taking the same mock exams as they are.

Yakisoba was definitely the winner. I am full of confidence that I am different. I still had to beat him.

The exam passed like a storm.

The ensuing consequences were horrific. When I saw the results returned, I had no idea what was going on.

"It was too much"

That was my first impression. Yes, there was no need to go this far.

English was close to 90% with a deviation value of 79. 76 in mathematics, 68 in world history, 65 in Japanese history. And above all, the national language was 84. In particular, there were almost no mistakes in modern sentences.

The name of that university was clearly written on my school of choice.

That's right, "Kobe University School of Business Administration, daytime course".

Of course it was an A. And it was the top of all the applicants in the middle of the day. There were about 1,100 applicants nationwide, but not all of them were enemies. By far the top, it was the 1st place.

It was the greatest irony. The man who stood at the top of the nationwide applicants for "Kobe University" is Kobe University "Yoru". The top of "daytime" that makes "nighttime" stupid is "nighttime". If I had written about any faculty, not just the Faculty of Business Administration, I would have been by far the best. In other words, I became the top student at Kobe University that year.

Next is Eiken Pre-1st grade. The word level that appeared in the exam was something that could be called "abnormal". A normal student would probably not be able to read it. But at that time, I didn't have many words that I didn't know.

No problem. I passed with ease. There is an interview for the second exam, but 90% of the applicants pass, so it's almost as if I've passed.

I've finally come to the point where I can't. It reached the level of national class. I am a "night student".

With my report card in hand, I head to Shinji-san first.

Even if I say so myself, I wasn't normal at the time. This result must have made me a little crazy.

He was in his usual cafeteria, waiting for my results.

"How was it?" He was cheering for the match. "Let's show our nighttime stubbornness," was the watchword. I silently hand over the mock test and the English proficiency report.

He changed his face. And that was the first word.

"Shall I put it on?"

I will never forget the shock of that moment. It must have been because of that extreme situation that the words came out. ``Put up mock exams all over the university,'' I never thought about it.

It's not just circles. Show them all to the college daytime guys. "Night is like this! What is the deviation value!"

Shinji said excitedly. "I can post these grades. No one can complain. God! I've never seen grades like this before! Even Kobe University students can't believe they're grades."

Not just during the day. I wanted to show this result to the guy who was drowning in his inferiority complex at night. In the class, the night students were still showing each other how smart they were. Behind the scenes, he even speaks ill of his friends, saying, "He's stupid," and is self-satisfied. A dubious pride was entwined. What a miserable sight from a grouper's point of view.

「If you have a complex, let's fight fair and square!」　I just wanted to tell them that.

We were really unusual that day. "Put up a mock test", such an idea would never come up if it was normal. But at that time, anything was possible.

For the next week, I made money by making cup ramen every day, and made 500 copies of mock test leaflets. Mock test results are pasted on a pitch black background, and the title is in large letters, "I am night! Deviation score 80! Am I amazing?" . And in the column of "preferred school" on the report card, "Kobe University daytime course, number one in the nation" is written and marked with a magic marker. Next to it is the letter "Night, don't be disrespectful!" It was a strange villa.

We stuck up flyers all over the university until late at night. I pasted it all over the place. I pasted it on the bulletin board, on the walls of the classroom, and even on the ceiling. It's no longer "normal". "Abnormal".

From that moment on, I made up my mind. "I'm done with my silence," he said.

I will fight fair and square. Everyone, look at me, I'm a night student with a deviation value of 80!

I knew something was changing inside me. I missed my high school days, when I spent my time in ordinary peace. My life was certainly normal. But not now. I will turn Kobe University into an enemy with this hand, and then compete on the stage of the whole country.

There's no turning back, I told myself.

The next morning, I was woken up by a phone call from a Kobe University student called "Long" in the circle during the day.

"That's you! School is in big trouble!"

His voice sounded excited. But I'm half asleep and I don't know what he's talking about. he repeated. "Hurry up and come to college! Hurry up!"

When I went to the university, I saw an amazing sight. Kuroyama's crowd had formed in the place where the leaflet was pasted. I didn't expect it.

Universities usually have a variety of flyers. There are a lot of flyers soliciting circles, messages from ideological organizations, and so on. This is such a common sight that no one stops to look at each leaflet.

However, this "mock test" leaflet was a different story. It's a test report that everyone passed. And it's "nighttime". Moreover, the numbers are astonishing. All the students were strongly drawn to this. He stares intently. "I'm done with exams." Even the winners were curious.

I definitely thought that I would be swept away by just saying, "Hey!" I thought that no one would show any interest, but that expectation was greatly overturned.

When I went to the side of the crowd, there was a murmur of "What is this?" "For such a silly thing..." while pretending to be cool, I can't stand it, and I'm staring at it. At the end of the sentence, even the professor stopped with curiosity.

All over the university, the topic of "mock exam flyers" was a hot topic. When I was studying in the cafeteria, most of the students sitting next to me said, "Did you see it?" They were excited.

Among them, there are those who reminisce about "I used to have a deviation score like this," and even those who carefully analyze it, such as "How is English and math on that report card?" board. Everyone is crazy now.

College life is boring. For them, the “deviation value villa” seemed to be the best spice. "Do you love deviations so much?", I was strongly convinced.

Of course, there were pros and cons to the flyers, but on average, the opinion of the daytime people was, "It's disgusting to do something like this, but it's amazing."

Those in the daytime are the “winners” of the exam. So you can afford it.

At night, however, it was a different story.

I slammed the results that everyone has to admit. And it's "nighttime". I overthrew the reputation of the daytime guys. And I declared that I would fight the exam fair and square. That's why I thought that the people at night would praise me, or say, "That Saito is amazing." I thought that some of them, like me, would recognize their own complexes and decide to fight.

But it was ridiculous.

When I entered the class triumphantly, "Hilma" rushed over first. Then, in a voice full of anger, he spat out, "Why are you doing that? It's silly! What's with the exam? What a shame at night!" What are you talking about, you know you're making fun of the night! On the contrary, I was the one who raised the reputation, I wanted to yell back. But I'm an adult too. suppressed here.

If it's so silly, just ignore it, don't worry about it, I said. Then his face suddenly twitched, and finally he said,

"What's with the deviation value of 80? It's not great at all. Don't get mad at that number."

As expected of me, I was almost irritated by this, but I was amazed beyond the anger. They don't know anything anymore.

IQ repeated, "Anyone can get this. Saito is an idiot." No, the situation is worse than before.

On that day, unlike the daytime students, the nighttime students had no spare time.

They gathered around the leaflet in a dark circle, and while they were just as curious as they were in the daytime, they cursed at the leaflet. No one praises it or says it's amazing.

"What the hell is this exam? Why are you doing this, you idiot!"

I couldn't help but want to say it.

It's the same with last year's Bakudan, and it's you and others who are said to be "stupid, disgusting, disgusting".

I suddenly became a celebrity in the night. No, it might be better to say that everyone has become an enemy. Even if he didn't know his name, he was noticed by everyone when he entered the classroom. It's a gaze that never looks good. Some of them are glaring at me.

With my skin rippling, I felt like I had escaped by myself.

they were very good. Because even though I'm doing incredible things, it's still night time. They tried their best to stop me.

"Don't let him go out and make him a winner," that's the mindset.

By the time I left the university that day, IQ, Hiruma, Iga, and other people with complexes had gathered together and were waiting for me.

And in front of my eyes, with a disgusting smile, he said this.

"This is just a practice test, it's silly. I didn't pass the university exam! Peel off all of these flyers. It's not great at all!"

They started peeling off all of our practice leaflets. Perhaps they were trying to become "allies of justice", but they were proud.

I had no choice but to withdraw silently. Upon hearing this story, Shinji complained, "I don't want to stay here anymore." Despair deepened.

I was filled with anger.

Yakisoba in the daytime saw my grades and admitted, "This is amazing, you're amazing." As expected of a winner. Even if I lose my grades here, I'm still a Kobe university student. I am not defeated in life. I can't be blinded by such a trivial match. Also, the reputation in the circle changed completely. Although it didn't look good, it was evaluated as "not a free person".

But at night it's completely different. Even if I say it with my mouth, I don't know. However, even if I try to understand it with my body, I still do not understand it.

They don't seem to realize that they have pissed off an outrageous guy.

I made up my mind I dare to fight until I make them regret it. I can't stop, I can't stop

(Continue)