【要約】小町谷朝生「装飾における心性ーその系譜化への試み」『芸術と装飾』(山本正男監修)pp115-144(1986)

【要約】

本稿は、日本の装飾における心性(心に与える)特徴を明らかにすることを目的としている。
まず、西洋においては装飾は「秩序の表出」であるとされ、「秩序とすなわちその本質とする見方が確立されているかのように思われる」。西洋の装飾はパターンや反復による展開を重んじ、そして装飾それ自体の自立性をさけるために作られた造形であると考えることができる。
その一方で、日本の装飾は、絵画や創作の延長によって作られたものであると考えることができる。さらに具体的にいえば、霊力に関わる心性の作用の日常化のため文様は用いられている。
この特徴を明らかにするために本稿では、心性としての装飾に意味を考察、仮説したのち、装飾古墳、飾り言葉、そして文様の分析を行なっている。例えば、本稿では「装い」と「飾る」ことの違いから、「装い」は通常の状態から逸脱する威嚇する行為であるといい、「飾る」は汚れをはらう浄化の役割を担うことを明らかにする。装飾は後者の飾る行為に値するという。そして、浄化としての役割をもつ植物を装飾文様として日常化させ、平面に止まらず空間自体に影響させる日本独自の装飾の意味を作り出す。このような日本の装飾に対する心性は表現として、西洋と異なる発展をするのではないだろうか。


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