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おすそわけ日記 259「別腹の定義」

今日は駄々をこねる日。「病院行きたくないです…お外でお茶するなら、行ってもいいです」

と、八十歳を目前にした母にねだる、五十四歳の娘よ、如何に。

母が「行きましょう!たまには外に出ましょう!」

寛容な母よ、ありがとう。

即行で医者の予約をして、サクサク着替えて、二人で家を出る。


ばびゅんと通院を済ませ、新橋の小川軒へ。

手抜かりない私は、ケーキも予約していたのであった。この短時間に、全くもって。

ここしばらく、モンブランが食べたかった私たち母娘。

モンブランに喜ぶ、けろとあにさん。

やったー!和栗のモンブランだよ。

中に栗が丸ごと入ってて、品のいい甘さで美味しい。

小さいのに満足感がある。


そう、満足感。

満ち足りてるんだけど、実は、もう一個予約してあるんだ。

じゃじゃーん!

前のめりになる、けろ。
後ろで、まぁ、落ち着けと宥める、あにさん。

ショートケーキです。

私と言えば、生クリーマー。生クリーマーと言えば、ショートケーキ。

満足感はね、あったんだけどね、ショートケーキは別腹なんだ。


モンブラン一個で満足した母を前に、一人、ふふふと微笑みながらフォークとナイフを動かす私。

幸せだなぁ。


数席しかない店内は、一人客ばかりで、とても静か。微かに音楽が聞こえる。

最初の曲、『コンドルは飛んで行く』だったんだよね。いや、好きだからいいんだけど。

今はジャズが流れている。

時折、手と口を止めて、窓の外や壁にかかった絵を眺め、喫茶店に居る時間を味わう。


思えば、母と二人でお茶したのって、一年ぶり位かなぁ。

外食するなら家でと我慢して来たけれど。

やっぱり、街を眺めながら、ぼうっとお茶を飲む時間は、何物にも替え難い。

ずっとずっと、このまま、ここに居たいなぁ。


この時間を過ごすためなら、いくつでもケーキを食べ続けられるんじゃないかと思う。

静かに喫茶店で過ごす時間が、私にとって、何よりも別腹。



【今日の一枚】新橋小川軒にて

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今日もおつきあい頂いて、ありがとうございます。

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