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じぶん時間を生きる TRANSITION

ここ最近ずっと、うっすらと感じてきたことがあった。
働くことが、楽しくない。決して苦しいわけではない。
けれど、面白そうと思うことをしているのに、成長実感もあるのに、自分で選んだはずなのに、どこか違う。

そんなモヤモヤした状態を読み解くヒントを与えてくれた1冊がこの本だった。
「じぶん時間を生きる TRANSITION 佐宗邦威」

筆者は東大卒、P&G出身と論理的思考のエリート街道まっしぐらかと思いきや、デザイン分野にも長け『直観と理論をつなぐ思考法』などを書いたとても面白い発想をされる戦略デザイナーさん。左脳も右脳もフル回転されて世界を見られているように思っている。

1日は誰しも平等に24時間与えられている。けれども、その捉え方は同じではない。捉え方により時間はいかようにも変化する。

本の冒頭で「変化」には2種類あると説明される。
チェンジとトランジションだ。
チェンジは外的要因による変化で、トランジションは内的要因による変化である。
この本では、後者のトランジションについて書かれており、時間の捉え方の変化によって世界に見え方が変わっていっている様子を実体験をもとに言語化されている。

少し前は輝かしい未来のために、今を行動することを良しとされる価値観が主流だった。
効率よくするために、たくさんのスキルを身に着けた。
エクセルの計算式、シンプルなメールの書き方、入念な会議準備、論理的思考を駆使したプレゼン資料…etc
それは生産性の向上や成長と呼べるものだったが、その先にはいったい何があったのだろうか。

一昔前は、成長することで生活が良くなり、時代が進み、世界が大きく変化していった。けれども、その直線的な成長が鈍化してきた今、世の中は成長することでは大きく良くならないし、変化もしなくなった。反対に、資源を枯渇させ、環境破壊を進めてしまうこととなった。
きっと、個人の成長で得られる恩恵が大幅に減ってしまったのだと思う。

毎日が無味乾燥に感じられた要因の1つがここにあるような気がした。
「成長」「面白そうと思うこと」「やりたいこと」
それに沿って選んでいたはずだけれど、そもそも前提が間違っていた。
それをやってて面白そうだねと周りから言ってもらえること、誰かから求められている成長、それをやりたいと思い込んでいる自分。
深く掘っていくとベースは自分ではなく他人だった。
もちろん、それを選んでいるのは自分なんだけれども判断基準が他人だったということだ。
そして他人の基準が正しいわけではない。
昔は同じ山の上を目指して向かっていた基準がバラバラになってしまった。
だから、どこか違和感があったのだ。

それに対する本書の回答の1つが「豊かさを稼ぐ毎日」へのシフトだ。
それも新しく取り入れるのではなく、自分が何をしている時が豊かだと感じるか思い出すのが大切だと。
解放するようなイメージだそうだ。
深い自分基準での「やりたいこと」を探してビジョンを描いていこうということ。

ビジョンづくりの5つの壁も示されていた。
①考える時間を確保できない
②現実的な制約を意識しすぎて自由な発想ができない
③ビジョンが具体化できない
④独自性が無く凡庸になってしまう
⑤人にわかりやすく伝えられない

まだまだ小物な私は、②と③で躓いていて④⑤の壁まで辿り着けていない。
ただ、最近ようやく毎日が楽しくって仕方なくなっている。

実は現在会社を辞め、現在有給消化中である。
約2か月の休暇を過ごしている最中で、自分と向き合う毎日なのだが
(正確には先日にも出社をしたりしたので、まるっと2カ月お休みなわけではないのだけど)
仕事に時間を取られない毎日で、丁寧に暮らすことと書くことが楽しいなと感じている。
ちょうど子どもたちも夏休みで毎日騒がしいのだけれど、こんな夏休みも今年だけだ。

自分に本当に響くことやものを見つけ、丁寧に選びとって過ごす。
それができて始めて世の中にも還元していける。
自分自身が、他人の軸によって沢山のものを消費している状態では
他人にも他人軸を提供して消費してもらう循環を作ってしまいそうだ。
だからこそ、私が「じぶん時間を生きる」ように少しずつシフトしていくことで、周りにも「じぶん時間を生きる」ことを広げていき、豊かさを稼ぐ世の中へと変貌させていきたい。
じんわり楽しい、豊かな毎日を紡いでいく。そんな生き方を広げる人になりたい。
そう感じた1冊だった。

最後に。
この本を出されたあさま社という出版社。
軽井沢の新しい出版社らしく、この方もじぶん時間を生きることを実践しておられるからこの本を出されたのだと思う。
少しだけ、自分時間を生きる人たちを身近に感じられた、本ってやっぱり良いな。



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