「茶道」の読み方。さどう?ちゃどう?

Twitterでこんなことを呟きました。

 これをそのまま続けるなら、このように書くつもりでした↓

「…武家の役職としての "さどう" の読み方がいったん珍重されたのかなと。音読み訓読みで違う意味を示す必要がなくなって統一したものの、今では「茶」を「さ」と読む機会が減り、子どもや外国の人でも読みやすいよう「ちゃ」に回帰しつつあるとか?」

 と。ここまで考えてみたところで、省いてはならない大切なことを思い出しました。
「ちゃどう」と「さどう」の読みわけで違う意味を示す必要はないが、流派の違いを示す必要は時と場合により発生する、という現在の状況です。

 ツイートで呟いた「厳密に言えば、ちゃどうが正しい」云々は、流派を区別するために使わない、ごく一般的な読み方としての話に限定されるわけです。

 さあ、ややこしくなって来ましたね(笑)。
 分かりやすい説明を、NHK放送文化研究所の引用に求めてみましょう。
 画像をクリックすると元ページに飛べます。

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(引用元:NHK放送文化研究所『最近気になる放送用語』)

 これが基本形。
 そしてこちらが応用…と言って良いのかな、流派を示す際の使い分け方です↓

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(引用元:NHK『歴史秘話ヒストリア』)

 小見出しでピンと来た方は大河ファンですね?
 そう、2009年に放送された大河ドラマ『八重の桜』の解説の一部です。私も欠かさず見てました^^

 では、私がテレビで「ちゃどう」と読ぶのを聞いたのは、裏千家のニュースだったのではないか?という疑問を感じる方もいらっしゃると思いますが、そうではないニュースで数度「ちゃ」読みをしていたのを聞いたことがありました。

 そもそも、調べれば調べるほど「さ」読みの方がイレギュラーだということが分かります。

 役職としての茶頭(さどう)がなくなったあと、そのまま「ちゃ」読みを一般化すれば良いのに、なぜわざわざ「さ」読みにシフトしたんでしょうね?

 個人的には、身分階級の崩壊とともに、昭和中期に向かって起こる「大中流階級社会」への流れのはしりを感じさせられたりするわけです。

 かつて、武士より上の階級の人々が使うものを、平民以下の者が使うことは許されませんでした。足袋を履くのも、馬に乗るのも、マゲを結うのもご法度(商人は異なります)。
 言葉も、武士と平民ではまるで違っていたわけです。階級の低い者が身分の高い人々と同じ言葉を話すことが許されなかった背景がまずあります。

 のちに身分階級が廃止され、垣根がなくなって行く社会の変容の中で、それまで使わせてもらえなかったものを堂々と使うことの楽しさ、小気味の良さが、言葉の「音」にもあったのではないだろうかとの想像に、ふと至りました。

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 茶道と言えば、抹茶を用いて行う上流階級の伝統文化というイメージがありますが、江戸時代の初期から煎茶を用いた煎茶道がじわじわと庶民の世界に浸透していた流れも、興味深い背景のひとつ。

 流行や形式は、少し前の時代の影響を強く受けます。
 だからこその「さ」どうだったかもしれない、と、ひと時、楽しく想像をめぐらせました。


 しかし時代が流れて、今や難解な漢字や読み方は常用から外される憂き目にあっています。海外から来る人たちにも読みやすい言葉や表現、文章に変えて行こう、という動きも国が提示している。
 WEBのライティングでも「漢字をひらく」と言って、微妙なニュアンスや難しい形の漢字は次々とひらがなに ひらかれて います。

 となると、漢字から受けるイメージと発音は、なるべく近い方が良い。
 原点回帰で「ちゃどう」が増えてもおかしくはない、との考えに至りました。
 時代の流れに対して、「さどう」読みが、少しずつふさわしくなくなって行くような手触りを得たわけです。


 日本語には音読み訓読みがある。ひとつの字に複数の音が含まれるという、珍しい構造をしていることが、このような音の変遷をまねく原因でもあるかもしれません。
 そもそも方言や外来語、流行などの多様な刺激を受けて発音が変化するのは、そう珍しくないことです。
「おや?」と思う発音に出会ったら、そのルーツを探ってみるのも面白いものですね。

 茶道を取り上げるニュースは年間を通して多くはありませんが、これからも意識して耳を立ててみることにしましょう。
 日本語を愛するわりには、普段ずいぶんいい加減な言葉をしゃべっているので、時にはこうやって膝突き合わせて、母国語と向き合うのも大切なことかと感じます。







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