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読書感想文――西加奈子さんの「ふる」を読んで

 西加奈子さんが大好きで、とにかく彼女の本を全部読もうと思って、内容なんて調べずに買った本――「ふる」。

 手元に届いて、早速裏表紙を読んだ。

「仕事がアダルトビデオへのモザイクかけで、趣味はICレコーダーでの隠し録り。」

 怯んだ。

 なにしろ私は修道女あがりのような人生を送っているので、この小説は随分と私から遠い世界の話かもしれないと思った。そして、おそらく理解できないかもしれないとも。

 そして、読んでみるも、やっぱりピンとこなかった。西さんの文体自体が大好きなので、読むのだが、うーん……みたいな気持ちが続く。時々、手にとっては2ページほど読み、うーん……を繰り返した。

 ところが、本の半分近くにきたころで、猛烈に引き込まれていった。そして、最終的には涙が流れ、自分では触れることができなかった心の奥深いところが浄化された。

 「晒す」

 これが、私の心を捉えたテーマだった。

 晒すことが、愛することなのではないか。そう思っている自分に「ふる」を読んで気づいた。
 
 私自身、裏表がない性格なので、建前を上手につかいこなすみんなを、ずるいな、と思う。

 「そんなに、隠すんだ?!」って。

 もちろん、言っていいことと悪いことはある。何事にも節度が必要だ。でも、「こんなに、言葉にしないとわからない世界において、ちゃんと伝えないってどういうこと?」

 そんな気持ちがあるので、私は大切な人とは心をさらけ出して話す必要があると思っている。
 
 もちろん、さらけ出すと言っても、愛を持って。

 愛を持って、さらけ出してくれたら、どれだけ深い心の交流があるだろうか。どれだけ、満たされるだろうか。

 「ふる」を読んで、初めて「自分の本音を自分で聞いてあげて、自分を隠さず見てあげることが何よりも大事だ」と思っている自分に気づいた。

 西さんの本を読むと、自分に出会う。西さんの小説って、さらけ出してる。だから、救われる。

 やっぱり、小説ってええなぁ~。



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