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「光る君へ」うろ覚えレビュー《第1話:約束の月》

言っておくが、自分は平安時代は大好きだ。待っておったよ、この時を。
だから、これは好きすぎて書いちゃうレビューであって、悪意ないです。
ただ、時に私のざっとした性格が出てしまうことがあり、ドラマの内容がうろ覚えだったり不定期なのは許してね。

時代考証の倉本一宏先生

まずは、国際日本文化研究センター教授の倉本一宏先生。この方が私が長く推している歴史学者の先生だ。藤原氏が権力の中心にあった国風文化の時代の男性貴族たちが残した日記を中心とする古記録と呼ばれる古文書研究の第一人者である。同時代に書かれた藤原道長の『御堂関白記』、藤原実資の『小右記』、そして藤原行成の『権記』などの最高権力に関わる者たちの記録の現代語訳は、歴史好きを魅了する。

その倉本先生が『光る君へ』の時代考証を担当されている。先生が発信されるSNSやウエブ記事などから、「史実」であることと「フィクションのドラマ」としての妥協点を見出す難しさなどが伺われる。が、未だ謎の多い平安時代だ、そこはある程度作り物であっても、エンターテイメントとして楽しむべきと思う。先生も折れておられる部分も大いにある様子だ。でも一方で、「倉本先生が時代考証されてるのだから…」という安心感はハンパない。

倉本先生の著書である『藤原道長の権力と欲望』(文春新書)の著者近影は楽しいぞ。平安貴族の正装である束帯姿の先生は、とってもお茶目だ。

オトナの紫式部と藤原道長が出ない件

安倍晴明登場から始まったこの第1回。つかみは上々だ。
いかがわしい感じは、ユースケ・サンタマリアの陰陽師が優勝である。
実際に上記の古記録群には道長を中心とした平安時代エリートたちの間で安倍晴明が当たり前に活躍している記録が残されている。実在人物なのだ。

『光る君へ』の番宣には必ず登場する「他人の手紙の代筆の仕事はめっちゃおもろいと思うねん」とか言う紫式部が、なんとドラマ第1話に出てこなかった。1話だけではそこまで主人公は成長しませんでした。

まひろと呼ばれる少女(将来の紫式部)と三郎と呼ばれる少年(のちの藤原道長)という子供らで話を進めるとは。ただし、倉本先生もおっしゃってましたけど、2人は同じ藤原北家出身とはいえ、史実においては幼馴染同士だった可能性はなさそうだ。ましてや恋に発展など噴飯もの、と言いたいところだが、大人になってから道長が紫式部を夜に訪ねて行ったこともありまーす(「紫式部日記」)。真偽のほどは定かではないが妾だったとする記録(「尊卑分脈」)などがあったことから、ソウルメイト的な今ドラマの設定となっていくんだろう。

しかし、落井実結子ちゃん演じるまひろの素晴らしいこと。かわいいし。

絶対にこの絵は、まひろ子供時代

藤原道長は弱い牛若丸みたいだったな。
「俺、怒るのきらいやねん」みたいなこと言ってたが、そのへんが、道長のこれからの生き方に反映されそう(史実では大人になった道長が怒りまくってた場面もあったようだが)。

そのへんでぼーっとしていたうちのじーちゃんに少女のまひろについて尋ねると、
「紫式部は大人かと思っていたら、意外と若い」
とのこと。
その誤解は希少なので、私から訂正はしていない。

また、少年三郎についても尋ねると、
「かなり昔の話なのでよく存じ上げません。コメントすることはございません」
だと。わざと丁寧な言いようなのが憎たらしい。
今のじーちゃんは昨日や今日の短期記憶は怪しいけれど、1000年前などもっと昔の記憶は薄れてないはずなんだが。

いきなりクズ登場

平安時代だけど、事件発生である。誰だよ、平安時代は蹴鞠と和歌ばかりで退屈だと言うのは! 全体としてこの第1話の話は、血なまぐさい事件、そして上級貴族である藤原兼家の家に逆らえない、下級貴族の藤原為時を中心とするまひろの家族の様子など貴族社会の厳しさが表れていた。
実は、平安時代には少し当たればエグい話は沢山ある。

このように初回のドラマではっきり刺激的な場面が描かれるのはNHKのドラマへの意気込みの現れか。お菓子につられて早く三郎に会いたいと急ぐまひろちゃんの眼の前で、三郎の兄ちゃんである藤原道兼が彼女のお母さんを殺してしまうとは。紫式部の母親の死因はよくわかってないはずなんだが、それをドラマは上手に利用した、というわけである。
ところで、お公家さんが持っている刀も結構鋭いもんなんだな。
事件のおかげで三郎はお菓子を持ったまま待ちぼうけだ。
前よりも沢山のお菓子を用意していたのにね。


間違いなくこれは藤原道兼

今回の藤原道兼の行動で、その後予想される花山天皇との事件なども含めて(少しあとになるけど、まず間違いない。楽しみ)ドラマ上でのクズ的な役回りを引き受けたのはわかった。道長がストーリー上無難な性格になりそうな予感がするから、こういう極端な人って必要よね。

一応私の息子のエル(現在15歳。前回noteに登場して以来成長している)に「ちょっとひどくないー? この事件。エルだったら(母である)私を守ってくれる?」
と尋ねてみる。

エル「でも、僕が前を歩いていたら、後ろを歩くお母さんが後ろから刺されても、僕は何もできないでしょ」
私「ええー。じゃぁ、見殺し?」
エル「見殺しってどういう意味?(外国暮らしのエルは日本語が時々怪しい)」
私「エルはお母さんが殺されるところを見るだけで助けてくれないってこと」
エル「違うよ。僕は見ていないんだからね。知らない間にお母さんが殺されちゃうんだよ」
私「ああそうですか」

最近のエルはクールに成長中である。

今後の見どころ

すっごい言うのを我慢してたんだが、私的にはこのドラマでもう絶対に注目したい人物がいる。ドラマの中でどこまで大切に描かれるかどうかはわからないが、登場したら大騒ぎするので覚悟していただきたい。その人とは、「権記」を書いた藤原行成である。藤原行成である(重要ポイントの繰り返し)。
どんなに素晴らしい人かはおいおいノロけることにしよう。
だが、ドラマではなんとなく軽く扱われる予感がしている。

他にも目が離せない人物は沢山いる。
・和歌も漢詩も管弦にも優れた超エリートだが道長に出世を越された藤原公任
・道長にも一目置かれたご意見番の藤原実資
・好色でいろいろヤバい花山天皇
・超潔い女性の清少納言
・一条天皇の最愛の人で清少納言が崇め奉る中宮・定子
これは私のイメージだが、
ドラマでどう描かれるか。
そのあたりも見届けたい。

例えば、明智光秀が本能寺の変を成功させたあと歴史から消える、徳川家康が天下統一して落ち着く、など通常なら大河ドラマのゴールというものはだいたい想像がつく。だけど今回「光る君へ」のゴールとはどこだろうか。
道長か紫式部の死なのか。

ところで、平安時代の有名女性の中で私の一番のお気に入りは清少納言である。が、彼女を演じる俳優さんの名前がファーストサマーウイカなんよね。役者さんが問題なんじゃないけど、できればもっと普通の名前の俳優さんがよかった。名前を呼ぶのが少し恥ずかしいのは、私がKY町出身のせいですか。なんでそんな名前になってしまったのか。
「初夏(ウイカ)」だけでいいじゃん。
どっちかといえば、ユースケ・サンタマリアに軍配を挙げる私だ。

では、ごきげんよう。

もちろん美男美女の光源氏と紫の上。だろ?