銀の森

本と音楽と映画が好きです。

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最近の記事

「街の上で」~切り捨てられた瞬間の輝きを抱えて~

そこで確かにあったはずの時間、もう見ることもできないし思い出す人もほとんどいないかもしれないけれど、そこで起こったはずのこと。  毎日を暮らしてくことは、そういうことの積み重ねだ。いわゆる映画やドラマになるような刺激的なものではないかもしれないが、飲み会でのふとした会話、初めてできた彼女と初めてセックスをしようとして失敗した時のこと、バイト先のカフェで出会ったお客さんを漫画の聖地巡礼に案内した時のこと、立ち寄ったライブハウスで知らない女性に煙草をもらったこと…… 退屈な日

    • 使いにくい「生理休暇」について思うこと

      生理のときは、いつもつらい。生理の前も、つらい。 おなかがよじれるような痛み、猛烈な眠気や身体のだるさに襲われ、いつもは記憶に底に眠らせているはずの嫌な記憶が、ふと鮮明に思い浮かぶ。いろんなことに苦しみながら、この世の終わりのように悲しくなってしまう。 いつもは一人でまっすぐ歩いていける毎日を、背中を丸め、ふらふらとやっとのことで進みながらどんよりとした不安でいっぱいになる。朝、目が覚めて布団から起き上がるまでにいつもの何倍以上の時間がかかってしまう。 やっとのことで会社

      • 映画「椿の庭」感想・思い出の宿る場所

        ※ネタバレを含むので、映画鑑賞済みの方向けです※  いままで忘れていて、そんなことがあったこと自体も覚えていなかったような過去の出来事をふいに思い出すということは、誰にでも経験があることだと思う。ふと耳に届いた音楽だったり、たまたま読んだ小説の一説だったり、紅茶に浸したマドレーヌだったり、そんな些細なきっかけが、引き出しの奥にしまわれたものを目の前に映し出す。そのたびに、思い出というのは一体どこに宿っているのだろうと考える。   「椿の庭」をみて、そんなことを思った。 ス

      「街の上で」~切り捨てられた瞬間の輝きを抱えて~