明日美言

はじめまして、明日美言と申します。趣味で小説を書いています。作品はステキブンゲイなどに…

明日美言

はじめまして、明日美言と申します。趣味で小説を書いています。作品はステキブンゲイなどにも投稿しております。まだ作品の発表を始めたばかりのペーペーで、自己の何を紹介すればいいのか分からないくらいの素人ですが、ご縁があって、何かの機会に作品を読んでいただくことができれば幸いです。

マガジン

  • 小説『雨下の向日葵』

    他サイトでも連載している長編作品です。投稿は基本的に毎週水曜の週一回を維持したいと思っています。お時間のある時に、よければご一読ください。

最近の記事

小説『雨下の向日葵』放課後ビッグバン⑤

読んでいただいてありがとうございます。この記事は続けて投稿している小説の第七回となります。 前回→小説『雨下の向日葵』放課後ビッグバン④|明日美言 (note.com)  放課後、生徒が皆出るのを待ってから、教室の扉を施錠し、鍵を職員室に返して学校を出た。校門を出た後の私の足は、自然といつもの帰り道、つまり応幕方面ではなく、氏方面へ向かっていた。私はストレスがたまると、それを金を使うことで発散しようとする悪癖を持っている。その悪癖こそ、まさしく今私を書店へと駆り立て、稼いだ

    • 仮想惑星

       木星はコーヒー牛乳で出来ている。初めてあの惑星に出会った時から、それは疑いようのない真実だった。  五歳のクリスマスに、両親がくれた五冊の図鑑。そのうちの一つ、「うちゅう」の本の中で、私と木星は出会った。側に添えられた説明文には目もくれず、私はただ、ただその柔らかそうな写真に惹きつけられた。とろけるような優しい白と、淡い茶色の縞模様。その吸い込まれるような色合いの美しさの前では、太陽の輝きも、地球の青さも何もかもが色あせた。そして、その色は、母がいつもコップに入れてくれるあ

      • 小説『雨下の向日葵』放課後ビッグバン④

        読んでいただいてありがとうございます。この記事は続けて投稿している小説の第六回となります。 前回→小説『雨下の向日葵』放課後ビッグバン③|明日美言 (note.com)  翌日。  今日の五限目は、家庭科室での裁縫の実習だった。進級してまだ二か月も経っていないのにもう実習をするのかという不満を腹の底で弄びながら昼食を終えると、必要なものと読みかけの小説をもって、足早に二年二組の教室を出た。どうせ教室に居てもやることがないなら、静かな家庭科室で読書をしたいと思ったのだ。  移

        • 小説『雨下の向日葵』放課後ビッグバン③

          読んでいただいてありがとうございます。この記事は続けて投稿している小説の第五回となります。 前回→小説『雨下の向日葵』放課後ビッグバン②|明日美言 (note.com)  校門を抜けて、帰り道を歩き出す。私の通う四高は、小高い丘の上に建っているから、登校の時には登山と揶揄されるような長い坂道を登ることになるけれど、帰りは逆に、町中を縫う用に張り巡らされた坂が私の味方になってくれる。とはいえ、調子に乗って勢いをつけて歩きすぎると、革靴の中で足が擦れて痛んでしまうから気をつける

        小説『雨下の向日葵』放課後ビッグバン⑤

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        • 小説『雨下の向日葵』
          7本

        記事

          小説『雨下の向日葵』放課後ビッグバン②

          読んでいただいてありがとうございます。この記事は続けて投稿している小説の第四回となります。 前回→小説『雨下の向日葵』放課後ビッグバン①|明日美言 (note.com)  西校舎は、その名の示す通り、東校舎と平行して建てられた西側の校舎だ。丁度二十年前、この学校が前身となった工業高校から、今の普通科の高校になった際に建て替えられた東校舎とは違い、何十年も前に建造された古い建物だ。老衰した校舎は、その安全性が疑問視されていて、再来年、丁度私がここを卒業する次の年に建て替えが行

          小説『雨下の向日葵』放課後ビッグバン②

          小説『雨下の向日葵』放課後ビッグバン①

          読んでいただいてありがとうございます。この作品は続けて投稿している小説の第三回になります。 前回→小説『雨下の向日葵』2018年春―②|明日美言 (note.com)  私はコーヒーが嫌いだ。苦くて、そのくせ飲めないと、子供だお子様だと馬鹿にされるからだ。コーヒーが苦手だというのは、例えば人参が嫌いだとか、トマトが嫌いだとかいうことと何も変わらないはずだ。なのにただ偶然苦手なものがコーヒーだったというだけのことで、他のものが飲み食いできない人よりも馬鹿にされることには到底納

          小説『雨下の向日葵』放課後ビッグバン①

          小説『雨下の向日葵』2018年春―②

          ※この作品は毎週更新している小説の第二回になります。 前回 小説『雨下の向日葵』 2018年春―①|明日美言 (note.com)  翌日。朝は曇っているだけだったのに、昼過ぎからはまた雨になった。仕事が終わるなりさっさと車に乗って家路につきはしたけれど、車道はひどく混みあっていて、思うように前へ進めない。打ち付けた雨が潰れて、べっとりとフロントガラスに広がっていく。濡れた窓の表面がワイパーに容赦なく拭かれて、けれどまたすぐに濡れてを繰り返す。右手の人差し指が、握ったハンド

          小説『雨下の向日葵』2018年春―②

          小説『雨下の向日葵』 2018年春―①

           カレンダーをめくるのを忘れていた。気付いたと同時に自分のだらしなさに嫌気がさした。今朝方から続く憂鬱な気分もそれを手伝って、私の気分は一層深く沈んだ。丁度夕食を終えたタイミングだったので、面倒臭さを感じつつも立ち上がり、隣の部屋に移動して、壁にかけたカレンダーの一ページ目をつまんだ。四月のページの上半分には、澄み切った青空と、その下で桃色の袖に包まれた手を広げる満開の桜の写真が載っている。どこで撮られた写真かは知らないけれど、写真の桜も、今頃はこの近所の公園のそれと同じよう

          小説『雨下の向日葵』 2018年春―①

          思い出の美しさと距離について

          浅いタイトルですね。とそんな冗談はさておき。 今日は小説を書いたりしている上で考えたことをちょろっと、書いてみようかと思います。 というわけで、今回は自分自身、小説を書く時によくテーマにする「思い出」について、拙さ全開で軽く語ってみたいと思います。 思い出って、綺麗ですよね。 苦い、哀しい、つらいとネガティブな形容詞を添えても、「思い出」という言葉を使うと途端に美しくなる。「記憶」というだけではこうはいかないと、私は思います。 記憶と思い出は、似ているようで違うものです。

          思い出の美しさと距離について

          短編小説「カザグルマ」

           風花の顔には傷があった。幼い頃、山へ母親と妹との三人で山菜取りに行った時、足を踏み外して崖から落ちそうになった妹をかばって、代わりに落ちたことで出来た傷だった。三メートル近い高さを頭から落ちたものだから、一時は死に瀕することもあったが、命だけは助かった。だが、決して無傷というわけにはいかなかった。落ちた時に、丁度崖の下にあった鋭い枝が深く、大きな傷を風花の顔につけてしまったのだ。妹の無事の代償として刻まれたその傷は、風花の右の頬を、口元からこめかみにかけて斜めに切りつけたよ

          短編小説「カザグルマ」

          好きな本の紹介その一『ペンギン・ハイウェイ』

          どうも、明日です。 突然ですが、今回は好きな本の紹介をしたいと思います。 いつもこれくらいの、本当、何をやるか分からないくらいのフリーダムさで活動していきたいです。 本題に戻りましょう。今回紹介する本は、 森見登美彦先生の『ペンギン・ハイウェイ』です! 有名な本なので、ご存知の方も多いかもしれませんね。 ここで「なんでペンギンの話なのに、画像はいつもの彼岸花なの?」と思われる方もおられると思います。当然の疑問です。 先にお答えしておきましょう。 ずばり、「手持ちの写真が全然

          好きな本の紹介その一『ペンギン・ハイウェイ』

          小説「蝶々と花」

           その雄の蝶は生まれつき小柄だった。卵から出た時から、同じ葉の裏で生まれた他の兄弟たちの半分程しか身の丈がなく、そのせいで歩くのも遅かった。芋虫は青葉を、歩きながら食べるものだから、必然的に、彼は他の兄弟よりも食べる速度も遅く、そのせいで成長が遅れ、時間の経つにつれ、他の幼虫との体格差はますます大きくなっていった。もちろん、体が小さいお陰で得た利点もあった。それは外敵に見つかりづらいということだった。彼の一番上の兄は、他の兄弟の誰よりも大きく、また葉をよく食べたのでぶくぶくと

          小説「蝶々と花」

          自己紹介

          皆さま初めまして!明日美言と申します。趣味で小説を書いています。 noteに限らず、ネットに文章を投稿する経験がこれまでになかったので、ここでは簡単な自己紹介をさせていただきたいと思います。 自分のこと この自己紹介を書いている時点では、まだ学生です。大学生です。勉強にバイトに趣味にと毎日悪戦苦闘しています。 小説は元々、読むだけだったのですが、高校に入る少し前くらいからちょろちょろと書き始め、今に至ります。 好きな作家は、太宰治さん、谷崎潤一郎さん、野溝菜穂子さん