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子どもの小説

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「子ども」が主人公だったり、印象的だったりする話。
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#妖怪

【短編】 塩辛猫の思い出

 小さい頃、私は猫というのは人間の言葉を喋るものだと思っていた。 「やあキヨハル、去年より背が伸びたな。お土産はちゃんと買ってきたか?」  母方の実家で飼われている猫は、私にそう話し掛けてくる。 「キヨハルはいつもお土産を忘れないから、オレ好きさ」  お土産というのはイカの塩辛のことで、猫の大好物だった。 「猫はイカや塩辛いものはダメだから、いつもは食べさせてもらえないけど、キヨハルのお土産なら仕方なくオーケーになるんだよな」  母方の実家には、祖父と祖母が住んでいるだけ

【短編】 座敷わらしみたいな少女

「あたしは、見える人にしか見えないの」  確かに、その座敷わらしみたい姿をした少女と話をしたり、誰かに紹介しようとすると周りから変な目で見られてしまう。 「よく分からないけど、妖怪っていうのはそういう存在だから、あまり気にしてもしょうがないでしょ?」  少女はそう言うが、自分にだけ何かが見えてしまうのはとても怖いことだし、見えないほうがたぶん幸せだ。 「あたしは、自分の姿がちゃんと見える人間がいるだけで嬉しくなっちゃう。あなたみたいな人間に会ったのは百年ぶりよ」  少女は、