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【シンガポール 14日間ホテル軟禁日記】#16_ホテルからのギフトと試される忍耐篇

2020年8月17日、シンガポールに5ヶ月ぶりに入国。

入国後14日間はシンガポール政府指定ホテルでの滞在が義務付けられている。その14日間+前後数日で、起きたこと、思ったこと、考えたことの記録。

※誤った情報が含まれる可能性、個人の思い込みや考えが多分に含まれていることはご容赦ください。

【Day 11】 ~不意打ちのチャイムと自分との戦い

PCR検査を終え、ホテルの敷地に突貫PCR検査会場を作ってしまうこの国のリーダーシップに思いを馳せながらぼーっとしていた11日目の昼過ぎ、部屋のチャイムが鳴りました。

昼食は既に終わっており、この時間にチャイムがなることは普段ありません。

なんだろうと思い部屋のドアを開けると、いつもご飯が置かれる場所に、目を疑うような素敵なプレゼントが置かれていました。

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「隔離生活、それは簡単なことではないですよね。わかります。

でも、これだけはわかってほしい。あなたが我々と共にここにいてくれる限り、私たちはあなたのためにここにいる、ということを。

これは私たちからのスペシャルギフトです。さあ、どうぞ!

ホテルより」

嬉しい。まじで嬉しい。11日ぶりに目にするアルコール。Tiger2本とHineken1本、すべてキンキンに冷えている。

そして、この部屋の冷蔵庫にビールをキンキンに保つ能力はありません。つまり、飲むなら今しかなく、今を逃せば、もう次は恐らくない。(キンキンで運べるのに、なんで冷蔵庫は壊れてんねん、というツッコミはありますが)

ただ僕は、9日前のDay 2、すったもんだの末に「この14日間はアルコールを経つ」と決めた男です。軟禁生活終了後、最高に枯渇した身体にスーパードライを流し込むと高らかに宣言した男なのです。

判断と有言実行をし続けるシンガポールへの尊敬の念をほんの3分前まで抱いていた人間が、自分がした判断を9日で覆し、有言実行の道を自ら閉ざして良いのだろうか…。人に言われたら喧嘩になりかねない、正論中の正論がガンガンと頭に響きます。

一方で、脳内には既に、ビールが喉を通る様子が完全再現され始めています。11日もの間、ビールを飲まない生活はこの数年した覚えがありません。32年間生きてきて、「喉から手がでるほど…」という表現にこれほどマッチするシチュエーションには初めて遭遇しました。

我慢の上で有言実行の14日間を過ごすのか、目の前の快楽に飛びついて自分の弱さに向き合うのか。

ここで僕を支えたのは、綺麗事でもなんでもなく、このNOTEで「14日間飲まない」と宣言していたことでした。

「自分で書いたことに責任をもとう」という高尚な思いからではなく、あれだけ大袈裟に書いておいて「今日ホテルからもらったんで飲んじゃいました、てへ」と今日の日記に書くことは自分にはできない…という見栄と弱さが、その決断のトリガーになったのです。

「信念の強さ」ではなく「心の弱さ」で欲望に打ち勝つこともある。PCR検査の一件といい、学びの多い1日です。

ただ、そんな脆弱性に満ちた理由による決断なので、その後3本の缶が視界に入るたびに未練がましくも缶を撫でて「まだ冷えてる…」と確認してしまう、という悲しい時間が続きました。

缶を撫でる自分が鏡に写って、その姿が情けなくて仕方なかったので、二度と奴らが視界に入らないよう、トランクの奥底にしまいました。

ふと見えてしまったり、荷物の出し入れで見てしまうことがないよう、あと4日間で絶対に使うことがないであろう衣服でグルグル巻きに包みました。

■示唆深いのか追い討ちなのか、意図を読みかねるホテルからのメッセージ

こうして、軟禁生活における最大のイベント「PCR検査」の1日は終わりました。

今日の夕飯にはこんなメッセージカードが添えられていました。

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「今日感じた辛さは、明日の強さに繋がる。

困難への挑戦とは、成長のチャンス」

今日、辛いことや困難への挑戦に、あまた遭遇した認識はあります。それが、大きな成長につながることを祈らずにはいられません。たかがビールの話ですが。

つづく

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