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【長編小説】0組の机にポエム書いてるの私です。

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【あらすじ】 目立たないようにひっそりと高校生活を送っている中原 央の唯一の楽しみは、「0組」の机に自作の詩を書くことだった。学年の全生徒が授業や部活で使用する教室を、生徒たちは… もっと読む
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記事一覧

「0組の机にポエム書いてるの私です。」第1話

 浅海 悠日は、0組で目にした読み人知らずの詩をふと思い出していた。窓から差しこむ夕陽が…

玄川阿紀
2年前
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「0組の机にポエム書いてるの私です。」第2話

 やってしまった。  央は懸命に足を動かしていた。うしろを振り返っている余裕などない。彼…

玄川阿紀
2年前
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「0組の机にポエム書いてるの私です。」第3話

「あれ! うしろの席、央ちゃんなんだ!」  長いような短いような一ヶ月半の夏休みが終わり…

玄川阿紀
2年前
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「0組の机にポエム書いてるの私です。」第4話

 日曜日の学校は、私の知っている学校じゃないみたい。  央は校門をくぐり、体育館のほうへ…

玄川阿紀
2年前
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「0組の机にポエム書いてるの私です。」第5話

「いらっしゃいませー! タコ焼きいかがですかー!」  中庭につくった小さな屋台から、悠日…

玄川阿紀
2年前
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「0組の机にポエム書いてるの私です。」第6話

 今年の冬は寒くなるんだっけ。悠日は真っ白な息を吐きながら、数ヶ月前にニュースで聞いた気…

玄川阿紀
2年前
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「0組の机にポエム書いてるの私です。」第7話

「夏目先生に会いに行くって言ってたけど、どこまで行くつもりなの……?」  緑道を早足で歩きながら、央が悠日に問いかけた。沿道の桜の木は、葉一つ残っていない寒々しい状態である。 「金沢」 「金沢?! 今から?!」 「そうだよ」  悠日は淡々と答えた。夏目先生の故郷が金沢であることくらい、央も知っていると思ったんだけど。何をそんなにびっくりしているんだろう。こっちは急いでいるのに。またしても苛立ってしまう。 「ちょっと待って、金沢ってどうやって行くの? 新幹線? そんなお

「0組の机にポエム書いてるの私です。」第8話

 16時19分、新幹線は予定通り金沢駅に到着した。  悠日はInstagramのDMを開いた。夏目先生…

玄川阿紀
2年前
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「0組の机にポエム書いてるの私です。」第9話

「あ~~なんっっか違う」  桂冠高校最寄り駅付近にあるカラオケボックスでは、2年3組のクリ…

玄川阿紀
2年前
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「0組の机にポエム書いてるの私です。」第10話

「ねぇ、央ちゃん。進路希望調査用紙、なんて書いた?」  窓際の列の前から3番目の机で、ガ…

玄川阿紀
2年前
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「0組の机にポエム書いてるの私です。」第11話

「ねぇ央。それ、悠日くんにあげるの?」  2月13日の夜、央は夕飯の食器を片づけたキッチン…

玄川阿紀
2年前
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「0組の机にポエム書いてるの私です。」第12話

 桂冠高校の修学旅行は、2学年の3学期、2月末に行われる。  年度によって行き先は異なるも…

玄川阿紀
2年前
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「0組の机にポエム書いてるの私です。」第13話

 シンデレラみたい。  清水坂を駆け下りていく央の後ろ姿を、悠日は呆然と眺めていた。お城…

玄川阿紀
2年前
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「0組の机にポエム書いてるの私です。」第14話(最終話)

「2年3組、1年間お疲れ様でした! かんっぱーい!!」 「かんぱーいっ!!」  もんじゃ屋『よしこ』に、2年3組の生徒一同が集結していた。木村の音頭に合わせて、ジュースの入ったグラスをカチンとぶつけ合う。2年3組最後の“打ち上げ”が幕を開けた。  もんじゃ屋『よしこ』は、桂冠高校の最寄り駅付近、学校側の出口とは反対の出口を、真っ直ぐ20分ほど歩いた線路沿いに位置している。文化祭や体育祭の打ち上げなどで桂冠生がよく利用している、御用達のもんじゃ屋だ。  合唱コンクールの打