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雪の日に裸足の人形を心配する娘

朝、目を覚ますと寝室が暗い。
まだ夜明け前かとひとつ隣の布団を見ると、夫が居ない。もう6時過ぎだ。
そこで思い出す。今日は雪の予報だったなと。暗いわけだ。
隣の娘に小声で「おはよう」と声をかけても、微動だにしない。

7時前に夫が寝室へそろりと滑り込んできた。
小声で「朝だよー・・そろそろ起きないと」と声をかける。
近づいて娘に手を当てても、娘は寝息を乱さない。
「しかたないね。夫君、先に行ってもらっていいよ。もう少し寝かせるわ」
「そうだね。昨夜は寝言がすごかったから、眠れなかったんじゃないかな」
「え?そうなの?」
「うん。それでママが ”うん、うん・・” って娘子をポンポンしてたよ」
「全然、記憶に無いな・・」
夫はハハハと静かに笑って部屋を出た。


私も娘に声をかけ、先に1階の居間へ下りた。
夫がバタバタと身支度をしている。
「雪、もう降ってるかなぁ」
「まだみたい。雨も降ってないよ」
「そっか、どうだろうねえ」
「どうだろうねえ。じゃ、行ってきます!」
夫が先に家を出ていった。
私も洗顔し、保育園の荷物詰めをしているところで娘の喚き声が聞こえた。
「ママァ~・・どこにいるの~?ママァ」
いまだに重宝しているスマホアプリのベビーモニターで、寝室を確認する。
まだ毛布の中でゴソゴソしていた。

2階へ上がり、寝室に入って布団に近づくと、ニヤァっと娘が見上げる。
最近はすごく、ママっ子になっている。
なんでもママじゃないとだめ。ママの真似もしたい。ママと一緒にいたい。
パパあっち行って。パパしょんぼり。
2人目が生まれたわけでもなし、赤ちゃん返りは成長過程で訪れるのかな。


リクエスト通り娘をおんぶして、居間のこたつに着地させる。
「今日はさあ、雪が降るかもしれないんだって。すっごく寒いから、保育園までバスで行こう」
そう伝えて、朝食を見守り、保湿して着替えて、一緒に玄関へ向かう。

私が忘れ物に気づき、バタバタと引き返して玄関に戻ると、娘は腰をかがめて靴を履いているらしかった。
関心関心。まだ一人じゃできないけど、頑張ってるのね。
そう微笑ましく思い、覗き込んでみると
なぜか私のスニーカーに足を突っ込んでいる。しかも娘の隣にはメルちゃん人形がいて、メルちゃんは娘の靴に足を突っ込んでいた。
「ええっ?」
私が呆れた声を出すと、娘はニヤァとして
「メルちゃん、靴無いんだもん。寒いよ?ねぇ?」とメルちゃんに同意を求めていた。メルちゃんは半そで薄ワンピなのだが、それは気にならないのだろうか。

しかし、バスの時間が迫って焦る私には、丁寧に対応する余裕はない。
「そうね、寒いよね。ばあばがメルちゃんの服つくってくれたでしょ?ママも頑張ってメルちゃんの靴、作ってみるわ。だから今は、自分の靴を履きなさいね」
正直、靴なんて作れない。嘘ついちゃうなぁと罪悪感が滲んできたが、それよりもバスに間に合うかが今は最優先課題だ。
しかし結局、バスには間に合わなかった。寒いが自転車で送り届けた。


帰宅していろいろと用事や家事を済ませた後、コーヒーを啜りながら思い出した。メルちゃんの靴。簡単に作れるんだろうか。
検索をかける。ヒットした記事やYouTube動画を見る。
「・・・できそうかも」

私の母親は、かつて和裁を仕事にしていた。それに憧れた幼少期は、自分もお針子さんになると夢に見ていたものだ。
結局は、自分の不器用さと、需要縮小の問題と、別の興味のためにすっかり消えてしまったけど、いまでも下手の横好き程度に、裁縫セットや布切れ、ミシンなどは持っている。

型紙を入手し、初心者向けのはずが2,3時間もかけて作ったのがこちら。

かかとの内側は「キョロ目」シール。
メルちゃんに履かせたらゆるゆるだったので、脱げ防止に付けた。

参考にした記事や動画では、ミシンで縫っていた。しかし私は、手縫いよりもはるかにミシンの方がヘタクソになってしまう。ので時間がかかってしまった。しかし、思いのほか出来栄えは悪くないんじゃないか。

娘が帰ってきたら、どんな反応をするのか、わくわくしている。
もしかしたら、気に入らないかもしれない。すぐに無くしてしまったり、糸がほどけてしまうかもしれない。
しかし関係はない。試行錯誤しながら、なんとか作り上げたという結果があればよい。メンタルで休職中の自分にはこういう行為が向いている。

この記事も、娘に見せる前に自己満足・自己達成感を満たすために書いている。がんばったでしょう。読んでくださりありがとうございます。


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