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「消えた五人の小学生」大石真・著


 ボロボロのふつうの自転車を乗りこなす小学五年生、光太くん。みんな持ってるジェット自転車が欲しくてたまらない。しかしそこは小学生のプライド、なかなか素直に「ステキだね!うらやましいなあ!」などとは言えず、ツンツンした態度をとってしまう。
 完全に、よくある小学生の日常である。ジャイアン、スネ夫、しずかちゃんのグループと、1人外れてしまったのび太の図だ。ここからどうSFになっていくの? だってドラえもんポジションのキャラは、いない。しかし「まさか!」の連続で、思いもよらない方向に向かっていく。
 こういう、日常からいつの間にか持っていかれていまう話が大好物だ。マイルドに改変される前の昔話や童話を思わせるような苦味のある結末は、小学生の頃に読んでいたら間違いなく忘れられない一冊になっていただろう。
 小学生が主人公だし、小難しい話も出てこない。がっつりSFとはいえとっつきやすい内容だなと思った。子ども向けと思って油断していた。
 いいや、子どもをなめてはいけない。大人が良かれと思って買ってきたおもちゃに興味を示さずに、プリンとかゼリーの容器で勝手に遊び始めるのが子どもなのだから。光太くんもこの経験をふまえて、自然科学の道へ進んだかもしれない。
 新たな物語との出会いに感謝であります。
 ※辻井豊さんが「ラノベ好きにおすすめしたいSF」として、エックスのポストで紹介されていました。

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