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タジキスタン・パミール旅行記14 〜ホログ4日目 病院〜

ホログでの3日目は、チョールボーグでゆっくりと過ごし、また夕方には知人のRさん宅に行って念願のパミール・ハウスを見ることができた。一方、体調のほうはなかなか好転しなかった。

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名無しの宿に戻る

2022年8月16日火曜日。この日は朝から体調が優れず、朝食も少ししか食べることができなかった。Gさんと会っていろいろ行く予定にしていたが、この体調では無理そうだったので、今回は会えそうにないとメッセージを送った。数日後に再会するつもりだったのが、今後、少なくとも1年は対面では会えないことになってしまった。

キヴェカス・ホテルでの宿泊は昨夜までで、今夜は最初の2晩を泊まった名無しの宿での宿泊となる。キヴェカス・ホテルの宿泊費は二泊で600ソモニ(約8,000円)だった。受付の娘さんにお礼を主にシュグニー語(最後のほうは自信がなく英語になってしまった)で言い、宿を後にした。

バルハラグのポリクリニク

マルシュルートカで元の名無しの宿に行き、鍵をもらった。体調は依然悪い。明日は当初予定ではドゥシャンベに帰ることにしていたが、この体調では行けるかどうか微妙な気がした。また、この他に昨日Rさんから、今の時期はホログ→ドゥシャンベの車が取りにくいとの話も聞いていた。

宿では、ドゥシャンベでお世話になったAさんに、とりあえず明日ドゥシャンベに行く場合にはどうすれば良いかメッセージを送った。Aさんからは、車を予約してくれるとの返信があったが、肝心の私が明日行けるかどうかが不明なので、いったん留保してもらった。体調に関しては、どこか病院に行ったほうが良いだろうということで、Aさんにどこの病院が良いか聞いてみた。

Aさんによると、「バルハラグ」にある「ポリクリニク」が良いらしい。バルハラグとは「上ホログ」、つまりホログの中でもグント川に沿った上流側(東側)のことだろうか?

地図アプリで見てみるとホログ東部に「Aga Khan Medical Centre」というアーガー・ハーン財団が運営していると思われる医療施設があった。ここのことかとAさんに聞いてみたところ、そこだとのことで、行き方も教えてもらった。Aさんにはひたすら感謝である。

それにしても、元々イスマーイール派(ニザール派アーガー・ハーン派)への興味がホログに来た大きな動機のひとつではあったが、まさかアーガー・ハーン殿下の名を冠した施設のお世話になってしまうとは。。。

病院

Aさんに教えてもらった1番のタンゲン(マルシュルートカ)に乗り、病院へと向かった。快晴の空の下、ホログの東のほうの坂を登るあたりの車窓は美しかった。体調が万全ならもっと景色を楽しめただろう。

病院の受付の人にシュグニー語とロシア語で症状等を伝えようとする。しかしいまいちうまく伝わらず、「Can you speak English?」と聞かれたので、以降は英語でのやりとりになった。最終的に、お医者さんとの「Consultation」を行うことになり、受付でもうしばらく待った。

Google翻訳

やがてお医者の先生とのConsultationが始まった。まずは先生に「How are you?」と聞かれたので、「I want to say I'm fine, but in fact I'm not fine」と答えた。しかし、私の乏しい英語力では、具体的な症状の説明(または症状に関する質問に対する答え)となると、なかなか厳しい。

私がいまいち理解できないでいるのを見ると、先生はパソコン画面でGoogle翻訳を出し日本語で書くように言った。日本語の文字が入力できない環境だったが、試しにローマ字入力したところ、きちんと英訳してくれた。以前、某SNSの自動翻訳がローマ字表記のペルシア語をきちんと訳してくれているのを見ていたので、Google翻訳もローマ字日本語でいけるかもしれない、と思っていたが、期待通りの働きをしてくれた。

とはいえ、ローマ字表記の日本語を入力するというのは、どうも手間のかかることだった。普段のローマ字入力+かな漢字変換の日本語入力と比べ、かな漢字変換というステップが無いにもかかわらず何故かより面倒に感じた。翻訳結果が正しいかどうかを別途判断しなければならない、というのも手間に感じたのかもしれない。結局、こちらも主に英語で入力するようになり、翻訳というよりキーボード入力での文字化という筆談的な側面のほうが大きくなった。

達筆の処方箋(?)

診察の結果は、原因不明とのことだったが、今日のところは薬を出すので、明日また来るように、ということになった。別の先生に交代になり、処方箋(?)を書いてもらったが、達筆なロシア語で書かれており、なかなか解読し難い。こちらが読むのに苦労していると、先生は別の紙に英語訳も書いてくれたが、こちらも達筆であり、ロシア語版のほうは読めても英訳版のほうは読めないという箇所もあった。とはいえ、両者をじっくり比較すればどうにか解読できそうな気もした。また、各々の薬の使い方については口頭でも説明を受けた。

専ら英語での診察となったが、最後にシュグニー語で「クルグ」とお礼を言って診察室を後にした。

処方箋(?)。右がロシア語版で左が英訳。こういう達筆な筆記体がすらすらと読めるようになりたい(あと、自分でも書けるようになりたい)。

病院内の薬局に行くも指定の薬は無いとのことなので、市内の「ポリクリニク」の近くの「アプチェーカ #12」という薬局に行くよう指示された(アプチェーカ = Аптека/Aptekaはロシア語で「薬局」の意)。診察料の支払いがよくわからなかったので、いずれ順番が来るだろうとしばらく待っていると、だんだんとスタッフの帰宅準備も始まってきた。支払い窓口っぽいところのスタッフの人に支払いはどうすれば良いか聞いてみたところ、今日の診察は無料とのことだった。かなり値段がかかるのではないかと覚悟していたが、ただただ感謝である。

薬局

病院から帰りのタンゲンに乗り、ホログ市内のポリクリニク前でタンゲンを降りた。ポリクリニク東隣の薬局でここがアプチェーカ #12かと聞くと、違う、隣だとのことなので、いったん外に出た。

ポリクリニク内を見てみるとここにも薬局と思しきものがあったので、薬局のおばさんにここかと訪ねてみると、違う、もっと向こう(西側)に行ってこう行って、と興味津々そうな笑顔で案内された。とりあえずもっと西に行くようだったので、外に出てポリクリニクのやや大きめの建物の角まで西に歩いたところ、角の通りを少し入ったところにロシア語の「Аптека」(アプチェーカ)とタジク語の「Дорухона」(ドールーホーナ = 薬局)が併記された看板の掲げられている建物があり、そこがアプチェーカ#12だった。

薬局のスタッフさんは、達筆のロシア語の処方箋をすらすらと読み(私もそのくらいの筆記体読解力が欲しい)、薬を揃えてくれた。ただし、ひとつだけ無いものがあるとのことなので、それ以外の薬を購入した。値段は605ソモニ(約8,000円)ほどだった。それなりの出費だが、保険非適用価格で覚悟していた範囲内であり、帰国後に旅行保険の補償も申請できるだろうから、こんなものだろう、と思った(但し、旅行保険の補償の申請は結局しそびれたままになってしまった)。無い薬がどの薬かスタッフさんに教えてもらっていたが、薬局を出るとすぐに忘れてしまったので、購入した薬と露英両言語での処方箋(?)とを見比べ、どれが無いのかを探った。なかなか確証が持てなかったが、無いのはどうも「АкваМарис」(アクヴァマリス)というもののようだった。

残りの薬を入手すべく、別の薬局に行くことにした。とりあえず先程のポリクリニク内の薬局に行き、顔見知りになった(?)薬局のおばさんに処方箋(?)を渡すと、件のアクヴァマリスを出してくれた。値段は70ソモニ(約900円)。これで薬は全部揃った。

名無しの宿にて

宿に戻り、しばし休息。夕食は宿の前のカフェでホットドッグを注文した。

カフェのテレビではイラン系の放送が流されているようで、文字はペルシア語で書かれており、CMの一部にイラン国旗が描かれていた。内容は女性歌手のポップな歌(一部英語のようだったがペルシア語が含まれていたかどうかは聞き取れなかった)など、24時間カフェにふさわしい(一方でイラン政府は認めないであろう)内容がメインで、おそらく在外イラン人がイラン国内向けに作っている放送だろう。先日Nさん夫妻と行ったレストランでも、同様のイラン向けペルシア語放送が流れていた。

肝心のホットドッグはほとんど食べることができず、持ち帰ることにした。

フラシリンの使い方

食事から宿に戻った後は、ロシア語と英語の達筆の処方箋(?)を見比べ、病院で受けた説明のおぼろ気な記憶もたよりに、薬の使い方、飲む量を調べた。

使い方は概ね判明しその通りに服用したが(鼻に使用するРыбий Жир / ルィビー・ジール=魚油は正しい使い方だったのかいまいち不明だが)、ラベルにキリル文字で「Фурасилин」(フラシリン)と書かれている黄色い液体の使い方がわからない。処方箋(?)の達筆なロシア語は、私の解読できた限りでは「Фурацилин」(フラツィリン)と書かれており、ネット上でも検索で出てくるのは「フラツィリン」である。「フラシリン」と「フラツィリン」は同じものを指しているものと思われるが、絶対にそうだと言い切れる自信は無い。タジク語にはロシア語の「ц」(ツァ行の子音)の音は無くアルファベットからも削除されているので、タジキスタン向けには「フラシリン」という名称が使われているのかもしれない(なお、シュグニー語には「ц」の音が存在している)。

問題のフラシリン

「フラシリン」と「フラツィリン」が同一のものである場合、ネットで調べた限りではフラツィリンには発がん性があるようで、とりあえず飲んではいけないものと思われる。フラシリンの使い方をAさんに聞いてみたところ、温めて口の中をゆすぎ、それから吐き出す、と教えてくれた。ただし、どのように開封すれば良いかがよくわからず(温める施設も宿内には無さげで)、結局アドバイスを活かすことができなかった。申し訳ない。

ドゥシャンベへの帰還のほうは、とりあえず明日はもう一日ホログでしっかり休んで、明後日の帰還を目指すことにした。持ち帰ったホットドッグは、結局宿でもほとんど食べられなかった。

(続き)


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