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【詩小説】暮れる

大人だから色々ある
色々は
色々さ

面倒なこと聞いてくるやつだな
どうも調子が狂う

でも大人だから気にしない
こどもじゃないんだ

寝苦しい夜でもなかった

オンラインゲームに時間を忘れてたわけでもない

出張帰り
空港の免税店で買った洋酒を三口で飲み干すのも毎晩のこと

ブラームスを聴きながら眠りの泉に身を委ねたはずなのに

いつもよりだいぶはやくに目が覚めてしまった

コメンテーターで知る曜日

パソコンの忙しない変動を横目にコーヒーを飲む

なんだか天気予報までやけに長い

時計に目をやれば体感と二時間のずれ

なんなんだ
調子が狂う

でもわたしは大人だから気にしない
腹が減ったから早めのランチだ

開店間もないいつものカフェ
店員がまた代わっている
長続きしないカフェだ
アットホームにつっこみをいれたくなる

でもわたしは大人だから何も言わない

さっき飲んだばかりの朝のコーヒーが邪魔をする
店のコーヒーがちっともうまく感じない

早々に店を出て高層階の我が家へ帰る
パソコンなんかみる気にならない

カフェインの裏の顔が牙をむく

わたしは両目を腕で塞いでいた


カーテンがちらちら光をこぼす
わたしはベッドに仰向けになっていた
それにしてもこの光は妙に紅い
目の裏に焼き付く熱を隠し持っている

何時だ

半開きの窓を通して
外からは夕方の気配が流れてくる

何時に寝て
何時に起きたのか

これは二度寝でもなければ
昼寝でもない

「さぁ、みんなー
お昼寝の時間ですよー
先生と静かにねんねしようねー」


保育士に寝かしつけられる園児たちだ
規則正しい時間にちゃんと寝られる

ただ
それだけのことが
わたしには出来ないなんて

わたしは大人だから

わたしは
大人
だから

昼寝も出来ない

これが今のわたし

装って
頭を下げさせ
鼻で笑って

こんな奴と友達になんかなりたくない

こどもより自由なはずなのに
わたしはそれを望んだのに

暮れる
今日が沈んでく

わたしは窓を閉めて鍵をかけ
遮光カーテンを閉じた後
泣いた



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