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妄想でフィーバー!CR「女囚さそり」

私が生まれて初めて打ったパチンコはCR「中森明菜・歌姫伝説」だった。
導入されたのが2006年だったので当時23歳。
パチンコに対してネガティブなイメージと抵抗感を抱いていたが明菜様のパチンコが出たと知ったらもうそれは打つしかないでしょ!と、奮い立ったのはいいのだが、何も知らないど素人ひとりで店内に踏み入る勇気が出ないで躊躇っていた。(パチンコ=ギャンブル=こわい)の構図。
でも明菜様のパチンコで遊んでみたかった。
大当たりしたら「DESIRE−情熱−」なんか流れるんだろうな〜、などと想像するだけでもニヤけてしまう。
丁度その頃自暴自棄になるほどむしゃくしゃしていた私は同級生のパチンコを嗜んでいたAくんを誘って(実際はついてきてと頼んで)明菜様の台が置いてあるパチンコ店に行った。

両耳から今まで味わったことのない騒がしい音が滝行のように絶え間なく打ちつける。一瞬クラっとしたが私の肩をポンポンと叩いたAくんの指差した方向に真っ赤に燃える真紅の台がズラーっと一列に並んでいた。
CR「中森明菜・歌姫伝説」だ!

全て埋まっていたので諦めて帰るしかないのかとAくんを見ると両腕を組み鋭い目つきで台を品定めしていた。
ほほう…待つものなのね…と、数分知らない背中たちの向こうで無造作に釘に弾かれ落ちていく銀の玉と様々な演出で明菜様がモデルと思われるキャラクターたちが目まぐるしく動き回る数字と共演していた。
どこからか1984年の元旦にリリースされたあの名曲の前奏が聴こえた。

「は!あの台から『北ウイング』が!!」(心の声)

借りてきた猫状態で立ち尽くしていたらAくんがやって来てこっちこっちと私を誘う。
当たらなかったのか、諦めて帰った人がいたようでその席を確保して案内してくれた。
私は色んな意味で緊張しながら、むしゃくしゃしていた鬱憤を晴らすべく諭吉札を投入口に入れた(Aくんにお金はここに入れるんだよと教えてもらった)
やけくそだった私はきっとパチンコはこのくらい散財するだろうという額をあらかじめATMでおろして準備していた。

この銀の玉一粒が4円…。
冷静な金銭感覚の自分が現れる。
((やめときなって。遊びとはいえギャンブルだよ。))
((そんなことは覚悟の上。むしろ散財してめちゃくちゃになりたいんだよ。))((とかなんとか言って後悔するのが怖いくせに……。))
一人会話劇が繰り広げられていた。
もう、引き返せない。やるぞ。

そしてハンドルの握り方から狙う場所、力加減までAくんにつきっきりで教えてもらいながら抽選が行われる穴をじっと見つめていた。

入らない。

はじかれていく一粒4円の銀の玉たち。
ざっくりと頭の中で、あぁー、もうこれで40円(10玉)使ってるよーと、全くギャンブルに向いていない弱気な自分と、捨てる気できたからいいんだ!の、強気(自暴自棄)な自分とが攻めぎあっていた。

知らない内に液晶画面では緑色のスポットライトが「DESIRE−情熱−」のおかっぱヘアーのキャラクターを照らしていた。
打つのを一旦やめた方がいいと、Aくんにハンドルを戻すよう促され、え?何?今何が起ころうとしてるの?と、あたふたしつつ、画面を凝視した。

既に「DESIRE−情熱−」のイントロが流れていた。

わあーーー!「DESIRE−情熱−」だーー!(心の叫び)

私は前奏が流れただけで大喜びして胸がドキドキしていた。Aくんが後ろで見守っていなかったら口ずさんで歌っていたかもしれない。
すると別に明菜ファンでもないAくんは私の耳元で「緑色とこの演出はアツい」と大声で教えてくれた。
私の楽しみ方とAくんの向き合い方の温度差を感じながら、アツいってことは…と、少し期待した。

「いっくよー」
と、明菜様の声がした。

あーー!!今明菜様がいっくよーって言ったーー!!(心の叫び)
左右の2つの数字が揃っていた。リーチである。

〽まっさかさーまーにー 堕ちてdesire

おぉーー!明菜様が歌っておられる!!
なんかキャラクターの後ろで数字が燃えとる!かっこええー!(心の叫び)

〽恋もdance dance dance danceほど 夢中になれなーい なーんてね
さーびーしいーーー…………

揃った数字と違う数字が止まっていた。

ん?まだ歌いきってないぞ…
画面はスンと暗くなり元の画面に戻っていた。

ハズレたのだった。

私は後ろを振り返った。
Aくんは苦笑いで首を横に傾げた。こりゃダメだね、が伝わってきた。
上皿の玉を使い切ったらもういいや、やめようと思った。
私は「DESIRE−情熱−」を聴けただけで満足していた。
Aくんはあまりよくない流れの台だとみきりをつけていた。
お互い違う理由だったがきりあげようという意見は一致していた。これもある意味リーチである。
軍資金は数千円で済んだ。

これが私のパチンコ初めて物語である。


今日なぜかふと、こんな台があったらまた行ってみたいなと思えるものについて妄想していた。
むしゃくしゃしているわけではないが、なんか行き詰まってモヤッとしているからだろうか。

そこで真っ先に思い浮かんだのがCR「女囚さそり」であった。
もちろん梶芽衣子さん主演の映画「女囚さそり」全4シリーズを詰め込んだ一台である。
(以下壮大な妄想)

    

    CR「女囚さそり」

       −演出紹介−


◆さそりチャンス

0~9までの図柄があり、7、0、1の順に停止したら「さそりチャンス」突入。
「怨み節」の前奏が流れる。

〽花よきれいとおだてられ

梶さんが歌いきったら大当たり。

◆擬似連

〽おんなー おんなー おんな涙のー……

少しためてから
〽うーらみーーーぶーしー

と、これが続けば続くほど期待度が上がる。

◆次回予告演出

映画の予告をそのまま使わせてもらう。


猛る!
うごめく!
檻の中!
復讐を誓ったひとりの女囚(おんな)!
その名は!

さそり!


これが入ればかなりアツい。

◆群予告

SDガンダムみたいに小さくてかわいいイラストで横縞ワンピース風囚人服の松島ナミ(梶芽衣子さん)が走って横切る。これもかなりアツい。

◆さそり役物

液晶画面横にさそりのオブジェ。
色んな場面でさそりの尻尾やハサミが動く。

◆暴動(アバレ)モード

警報音(サイレン)が鳴り女囚役の根岸明美さんが「みんな!暴動(アバレ)だよ!」とその他全員の女囚を先導し倉庫へ立てこもる。
このモード中に根岸さんが看守たちに「松島ナミを差し入れてもらおうか」と要求する。雷雨の中、さそりが倉庫へやって来たら大当たり。

◆発展リーチ

図柄が揃うとアニメキャラが映画の名シーンを再現する。

①煮えたぎった味噌汁リーチ(第1シリーズより)
信頼度★☆☆☆☆
さそりをいじめる雑魚女囚が懲罰部屋で手足を縛られたさそりに飯の時間だよ〜と、笑いながら近づいてきて寸胴鍋の煮えたぎった味噌汁を柄杓でかけてくる。
薄い毛布を口で引っ張って雑魚女囚を転ばせ寸胴鍋を頭からぶっかけることができたら……

②閻魔落しリーチ(第1シリーズより)
信頼度★★☆☆☆
休むことも許されず一晩中ひたすら穴を掘っては埋めてを繰り返させられるさそり。
他の女囚たちもとばっちりを受けてやらされている。当てつけにさそりに土をかけた雑魚女囚の足場をさそりがスコップで崩すことができたら…

③地下鉄から逃げろ!リーチ(第3シリーズより)
信頼度★★★☆☆
地下鉄の電車内で刑事二人に挟まれたさそり。
咄嗟に逃げるが手錠をはめられてしまう。そのまま電車のドアはしまり絶体絶命のピンチ!
持っていたナイフで刑事の腕ごと切り落とせたら…

◆スペシャルリーチ

リーチ後に実写の映像が流れる。
発展リーチより期待できる。

①VS刑務所所長(第2シリーズより)
信頼度★★★☆☆
2作品に渡ってさそりと火花を散らした因縁の相手。
部下にさそり暗殺を命じご満悦の所長。
しかし生きていたさそりに車を襲撃され高架橋へ逃げる。
果たしてさそりは所長に復讐を果たせるか…

②VS大場ひで(第2シリーズより)
信頼度★★★★☆
白石加代子さん演じる大場は女囚のリーダー的存在。さそりと共に脱走するが途中でさそりをバスから蹴落とし裏切る。
追い詰められた大場たちに偵察に行かされたさそりと対峙する。
にらみ合う二人。
今まで一言も言葉を発さなかったさそりに「あたしを売ったね」と言わせることができたら……

③VS杉見次雄(第1シリーズより)
信頼度★★★★☆
松島ナミをさそりに変えた張本人。
警視庁の刑事だが手柄の為にさそりの一途な心を利用した。
復讐に杉見の前に現れたさそりに足を刺され屋上へ逃げるも…
杉見にとどめをさすことができれば…

◆全回転

大当たり確定の告知音が突然鳴る。
液晶画面にはつば広ハットにロングコートの全身黒ずくめのさそりが歴代の復讐相手にとどめをさす場面が一挙に流れる。
「怨み節」を歌い終わると777が揃っている。


おおまかな構想を綴ってみた。
これは妄想上の企画書である。
娯楽の王様と呼ばれていた歴史を踏まえてもギャンブルであることにはかわりはない。
それはみな自己責任で趣味の範囲で楽しむことが理想である。

私はこんな風に推しの台を妄想することが楽しい。Aくんに付き添ってもらった時のように自暴自棄にはもうならない。充分この妄想で発散できている。実に安上がりな趣味である。





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