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【全5回】フードマーケット未来予想図ー第4回:発表!2021年スイーツ最旬トレンド!

 全5回の連載でお送りしている、『フードマーケット未来予想図』。第4回は前回の弁当・惣菜編に引き続き『発表!2021年スイーツ最旬トレンド!』ということで、今年注目のスイーツトレンドや商品をご紹介していきます!トレンド、といっても単に「メディアで話題!」とか「売れてる!」ということではなく、前々回記事の「SDG'sでメシが食えるか!?食消費トレンドの現在地」を前提とした具体的事例を紹介しています。トレンドの背景にある消費価値観の変化を踏まえてみてみると、トレンドもより深く理解できるのではないかと思っています。

▼というわけで…前回&前々回記事もぜひご覧ください!


※なお、本記事では生鮮・惣菜・弁当・スイーツなどの食物販市場を中心として”フードマーケット”と呼称しています。
※先週、ご案内した目次から一部内容変更してお送りします。

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・フードマーケット未来予想図ーその4ー発表!2021年スイーツ最旬トレンド!


 2021年注目のフードマーケット トレンドを弁当・惣菜分野とスイーツ分野に分けてご紹介!今回はスイーツ編!スイーツ業界では、元々お歳暮・お中元などの儀礼ギフトの慣習が薄まっていたことに加え、帰省や出張の自粛、さらには会食や友人同士の集まりなども減少したことで、ビジネスギフトからパーソナルギフトまで幅広くギフト需要が低迷している。加えて、百貨店等の休業、人流抑制を背景に、行列ができるようないわゆる”ブーム”を嫌悪する傾向も広まっており、全体的には厳しい状況下にあるといえる。
 一方で、オンライン通販の広まりや安定した冷凍・配送サービスにより、新たな売り方やプレイヤーの台頭が見られるようになった。また、ギフトニーズの低迷の裏で、おやつなどの自家需要ニーズは高まっている。
 こうした背景を元に今盛り上がりを見せている”スイーツトレンド”を今回はご紹介をしていく。URLなども適宜載せていくので興味のある方はぜひチェックいただき、来店もしくは取り寄せして実際に体験してみてもらいたい。※各商品写真は公式のURLやインスタグラム 掲載のものor筆写撮影のものを記載しています。

■2021年スイーツトレンド


 ①ヒントは動画配信?お菓子のサブスク

 STAY HOMEの広まりと同時にサブスクリプションサービス”サブスク”も利用者をぐんぐん伸ばしている。いわゆる月額課金・定額のサービス全般を指す言葉で、エンタメや情報、交通や旅行など領域は多岐にわたる。一方で、食の領域に関しては、消費期限やロスの問題、衛生や安全面などのハードルがあり参入がやや遅れている印象がある。そうした中で、今注目されているのがお菓子のサブスク”スナック・ミー”である。

 スナック・ミー は定額で月1〜2回8種類のお菓子の入ったBOXが配送される定期便サービスである。これまでもお菓子の定期便サービスというのは存在したが、多くはメーカーやスイーツブランドが手がけるものであった。
※例:森永「天使のお菓子箱」、ゴディバ「ゴディバのサブスクリプションサービス
 これに対して、スナック・ミーは全国にOEMパートナーを設けている。中には「おやつ共創パートナー」として、共同で商品開発を行った事例もある。もちろん現在は自社工場もあるものの、メーカーやスイーツブランドとは商品の幅が大きく異なり常時1,000種類以上のお菓子を提供している。

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 スナック・ミーの最大の特徴は「パーソナライズ」にある。創業者の服部慎太郎氏によれば、動画配信サービスの「Netflix」のレコメンド機能を参考にしているという。何千もの動画コンテンツの中から過去の膨大な視聴データを元にアルゴリズムを作成し、ユーザー個人に合わせたコンテンツをおすすめしてくれる機能だ。スナック・ミーもメイン商品の「おやつ体験BOX」では、好きなお菓子を選ぶことはできない代わりに、個人の趣味嗜好やアレルギーや苦手な味などを反映してチョイスされたお菓子が送られてくる。Netflixと異なるのは、人の味覚はより個人差が大きいため個人毎のプロファイルが必要になる点である。したがって、スナック・ミーでは毎月送られてくるお菓子に利用者が一点一点評価を行い、今後のお菓子のセレクションに反映していく。(どうしても食べられないお菓子は返却することもできる。)このような繰り返しの顧客とのコミュニケーションによるパーソナライズ体験は、今後スイーツに限らずフードマーケットでの売り方の一つとして参考できる。

 ②実店舗を持たない個人店の台頭

 STORESBASEなど個人でネットショップを気軽に開設できるサービスもメジャーになる中で、雑貨感覚で利用できるスイーツのショップも数多く見受けられるようになった。趣味がこうじて出店したお店や地方の個人店など、これまでのフードマーケットにはいなかったプレーヤーが人気を集めている。「オーダーメイド」「数量限定」「実店舗を持たない(営業日が限定されている)などが特徴としてあげられ、量産品とは異なる価値を提供している。

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☆参考リンク ゆめのおかし  Another belly cake Yu cake

 ③焼き菓子新時代

 おうち時間が増えたことで、おうちでおやつとして楽しめる焼き菓子に注目が集まっている。定番のカヌレ・マドレーヌ・フィナンシェなどが“スペシャリテ”になる時代になった。オンラインが主戦場のため地方店舗限定販売の店舗が多いのも特徴。いくつかお店をご紹介する。

・ダンラボッシュ
 学芸大のカヌレ専門店。土日祝のみ売り切れ次第終了、オンラインでも販売日時を事前予告して販売。伝統的な製法に則ったカヌレ。

・やまねフランス
 土曜日と火曜日のみ営業する池之上の焼き菓子店。季節ごとに素材を変えて販売。元々お菓子作りを趣味にしていた店主が作る家庭で作るような温かみのある焼き菓子が地元に愛され、今では遠方からの来店も多い。

・BAKE SHOP bien Bake
 石川県金沢の焼き菓子専門店。全ての焼き菓子が冷凍で届くため、自宅で一番美味しい状態で食べることができる。特にマドレーヌはオレンジリキュールが香る人気商品。

 また、小麦粉で作られる焼き菓子は冷凍発送にも適している。自宅で解凍して食べるため、最も美味しい状態で食すことができる。実際にBAKE SHOP bien Bakeのオンライン取り寄せを行なったが、個包装で賞味期限が長いため少しずつ長く楽しめるため、とても高い満足感を得ることができた。

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 こうした焼き菓子は、生ケーキやショコラと比べると見た目こそ地味で季節感も薄いように感じられる。しかし、味や素材・調理へのこだわりは多彩で、日々のおやつとしてお気に入りを見つける楽しみはむしろ焼き菓子にこそあるのかもしれない。また、SNSを介することで作り手の想いや人柄に触れられることも魅力のひとつだ。

 ④コンセプトは”Less is more”

 最後に、今の価値観を感じさせる店舗を紹介させていただきたい。2019年9月に恵比寿にオープンした『LESS』である。

 『LESS』はGabriele Riva(ガブリエレ・リヴァ)氏と坂倉加奈子氏の2名がオーナーを務める本格パティスリーである。

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 恵比寿の住宅街の路地を入ったところにお店はある。店舗内にはわずかにハイチェアは数個ある程度(※現在はイートイン営業はしていない。)で基本は陳列カウンター一本のみで、奥に厨房が見えるシンプルな作りである。知らなければケーキ屋さんとは思わずに通り過ぎてしまうよう外観だが、これも「Less is more(≒より少ないことはより豊かなこと)」というコンセプトを反映したものだ。リヴァ氏が和食から学んだという”引き算の美学”は、もちろん店舗だけでなく、その商品にも反映されている。LESSのケーキは、ひとつひとつの素材に向き合うことのできるケーキだ。季節ごとの旬の果物を基本的には一つのケーキに一種類で構成されている。素材もそれぞれに合わせて、生でカットしたり、ドライにしたり、と最も香りや味が引き立つような調理でアレンジしている。見た目には決して派手さはないが、作り手の繊細な美学を感じさせるようなケーキである。季節ごとに素材が異なるのも好感が持てる。私が店舗に伺った時は、ケース内のケーキはたった6種類。旬の素材は季節が限られるため、毎回同じケーキが必ず並んでいるわけではないが、その時々に最も美味しい素材を楽しめる。

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 写真は実際の店舗のケースだ。このケース実は常温。みてわかる通り、一種類につき3個ずつ程度しかのせられない奥行きだ。普通ケーキのケースは冷蔵で、一列に5〜10個くらいのケーキが並ぶのが普通だ。店によっては、一番奥が見えないくらいまで並べて、且つケース奥の扉を鏡にしてさらにたくさんあるように見せるくらいである。LESSでは、作り置きをしない。裏の厨房でつくった新鮮なケーキが常にケースに並ぶ。ここにも「Less is more(≒より少ないことはより豊かなこと)」というコンセプトが表れている。
 そしてこうしたLESSの想いが伝わるスペシャリテが「パネットーネ」である。パネットーネとは、イタリアの郷土菓子でドライフルーツの入った菓子パンである。パネットーネ種という酵母を使い、保存期間が長く地元ではクリスマスの時期に長く食べられるお菓子だそう。このパネットーネ酵母は天然酵母でとても扱いの難しい酵母だそうで、実際酵母の健康状態によっては製造に時間がかかってしまうこともあるそうだ。

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 焼き菓子で見た目にも決して派手とは言えないパネットーネだが、ふんわりもちっととした食感、ドライフルーツの豊潤な香りはとても贅沢な時間を与えてくれる。さらに、最初はフレッシュな香りが、日がたつにつれてさらに熟成され、より濃厚な香りに包まれ長く楽しむことができる。まさにスペシャリテの名にふさわしい、こだわりの一品である。先ほど焼き菓子新時代のお話をしたが、ここまでの上質な体験ができる焼き菓子は他にはないだろう。お近くの方はぜひ一度食してみてもらいたい。

▼参考

・まとめ

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 繰り返しになるが、フードマーケット での消費者が求める価値観は真逆と言っても良いほど変容している。ケーキ一つをとっても盛り盛りのフレッシュフルーツを生クリームで接着したような生ケーキよりも、パネットーネのような焼き菓子体験が価値を持つ。また、行列スイーツに並ぶより、毎月パーソナライズされたお菓子が送られてくるスナックミー のようなサービスに注目があつまる。消費者にとってのオンライン・リアルの垣根がなくなる中で、デパ地下などのリアル売場はこうした価値観変容をよく理解した上でMDや販促を考えていく必要がある。
 では、”リアルな売場の価値”とは?フードマーケット の未来とは?次週『フードマーケット 未来予想図』最終回は、今年オープンした東急フードショー 渋谷を事例にしつつ、フードマーケット の未来を夢想してみたい。

フードマーケット 未来予想図ー第4回:発表!2021年スイーツ最旬トレンド!

おしまい

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 いかがでしたでしょうか?前回・今回とフードマーケット のトレンド情報お届けしました。気になったものはぜひ召し上がって体験してみてください!今回構成上省いてしまったのですが、サスティナブレッド や郷土菓子も注目トピックですので、機会があれば調べてみてくださいね。


『フードマーケット未来予想図』今後の投稿予定 ※金曜17:00頃更新予定

 7/30 第1回:”化石化”したデパ地下型商売 
 8/6  第2回:SDG'sでメシが食えるか!?食消費トレンドの現在地
 8/14 第3回:発表!2021年弁当・惣菜最旬トレンド!
 8/20 第4回:発表!2021年スイーツ最旬トレンド!
 8/27 最終回:東急フードショー渋谷の大勝負!フードマーケット の未来はどっちだ!?
 ※当初全4回の予定でしたが、急遽全5回に変更しております。

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 e.r.mutt828@gmail.com (湯浅亜木)


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