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3/30(木)社説

 文化庁が京都に移転した。文化財の保存や活用に関わる部署などが移り、文化観光推進本部も新設された。約590人の職員のうち7割弱が新天地で業務にあたる。関西圏には由緒ある寺社や伝統芸能があり、地元での発信力強化や経済波及効果が高まることが期待される。また、霞が関の硬直的な発想にとらわれない視点も生まれるだろう。民間の知恵も取り入れ、脱東京のメリットを活かす施策を望みたい。
 一方で課題もある。国会議員への説明や他省庁との連携の円滑化についてである。コロナ禍でオンライン会議は普及したものの、東京へ出張するケースはあるだろう。また、政策の企画立案や著作権、芸術文化の支援を担当する部署などは東京に残る。多くの関係団体との調整が必要なためである。
 国は「文化芸術立国」の実現を目指している。政府は京都移転を機に、文化庁の機能強化を進めると説明してきたが、新年度当初予算案は1,077億円と、今年度当初とほぼ変わらない。文化芸術を下支えするフリーランスへの支援拡充や、現場でのハラスメント対策など環境改善に向けた法整備も進んでいない。そもそもの文化庁の使命は、文化の保護と振興である。京都移転にあたり、文化芸術行政のありかたを考えたい。

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