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ポイントブレイク

オダマキの花は、きれいに咲いてるほぼその姿のママ、急に崩壊する。
ふと見ると、ハラハラハラと崩れ落ちていて、愕然とする。
ついさっきまで、あったものが無くなる。
一瞬、息が止まるような喪失感に襲われる。

世界が一瞬にして、別の世界に変わってしまったかのような、畏怖と喪失感。

映画『戦火の馬』。
英国軍の騎馬隊が突撃して行くと、待ち伏せてた独軍が最先端の機関銃で一斉射撃する。

次のシーンは森の中を馬が駆け抜けている。その背に兵士たちはひとりもいない。主人を失った馬だけが、大挙して走り去って行く。馬たちに怪我はなく血の一滴もついてないけど、その走り抜けて行く様だけを見て、兵士たちは全員死んでしまった、と一目でわかる。

なぜか、撃たれて死ぬシーンをたくさん見せられるよりも遥かにショックを受けた。息が止まるような喪失感。この映画は確か続きを見られなかった。後に行くほど感動できる映画だろうとわかっていたのに。今でも観ていない。

ある形、状態を保っていたものが一瞬で崩壊すると人は強烈なショックを受けるものなんだろう。その状態が続いた時間の長さに応じて。

あったモノが無くなる。

でも、崩壊する、無くなるのは、モノ・形だけかもしれない。
生命やピュアな思いは残り、形を変えて、また現れる。
そう、思う。


若い頃、輪島市に行ったことがある。
御陣乗太鼓を聴きに。
東京から延々と車で行った。
確か夏の大きなお祭りだったと記憶している。

御陣乗太鼓は、
この人生で聴いた太鼓演奏の中で、
最も美しく悲しく恐ろしく強くて、
細胞のひとつひとつに染み通った。

今でもその光景は思い出せる。
怒りの面、悲しみの面。
今でもその太鼓の音は聴こえる。
思い出すと、腹に響く。

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