橘玲 『貧乏はお金持ち』

★★★☆☆

 2009年に出版された本書は2011年に文庫化もされています。僕はソフトカバー版で読みました。
 副題に「『雇われない生き方』で格差社会を逆転する」とあります。前半部分はともかくとして、後半部の「格差社会を逆転する」という内容かはちょっとわからないですね。「格差社会を逆転」は、そう簡単にはいかないと思います。

 内容はというと、マイクロ法人をキーワードにして、会計・税務・ファイナンスについて述べています。

 マイクロ法人とはなんぞや?と思うでしょう。
 要するに、フリーランスや個人事業主(あるいはサラリーマン)が法人化(株式会社を設立した)した、最小単位の法人というだけです。

 そうすると、どんないいことがあるのだ?と思うでしょう。
 要するに、節税を始めとして、さまざまな制度を利用することで出ていくお金を減らせますよ、というだけです。

 大まかにいうと、それだけ。

 そこに会計や税務に関する具体的な説明が加えられているわけです。説明自体はいつものように明解ですが、内容が内容だけに、ある程度の知識か、がんばって理解しようとする気概がないと、読むのにいくぶん苦労するかもしれません。
 わかるとなかなかおもしろい内容ですし、ためにもなります。

 ただし、本書ではあくまで徴収される額を減らすための工夫が述べられているだけで、肝心のお金の稼ぎ方には触れられていません。
 法人化して節税できたとしても、そもそもの収入がなければ話になりませんよね? そこに関してはどうすればいいのかというと、各自でがんばって的なことが書かれているだけです。

 ……そこが一番むずかしいと思うのですけど。

 とはいえ、稼ぐ方法について書かれた本などないので(あるとしたら、その内容は眉唾ものでしょう)、あたりまえです。自分でがんばるしかないのです。

 金融関係の興味深い話がちらほら出てくるので、そこだけを読んでもなかなか楽しめます(そうした挿話が僕は一番おもしろかったです)。フリーでやりたいと思っている人なら読んで損はないでしょう。

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