“Warlight” Michael Ondaatje(Knopf)

『戦時の光』 マイケル・オンダーチェ(クノップフ社)

 この暗い影が落とされたような小説では、14歳の少年ナサニエルの体験と、第二次大戦後の英国の諜報活動とが絡まり合っている。
 ナサニエルの両親が父親の仕事のためにロンドンからシンガポールに引っ越すと、彼と姉はあとに残され、ほとんど知らない人の世話になる。空いた時間に悪事を働く人や風変わりな人のいる組織に二人は紹介される。次第にナサニエルは、両親がシンガポールになどいないことに気がついていく。そして、親類を襲撃したあと、母親が戻ってくる。
 母親はいままでどこにいたのか? 父親はどこにいるのか? 隠している母親の腕の傷はどうしてできたのか?
 過去を詳細に追い、母親の人生の〝真の姿〟と自分の人生を掴もうとしているうちに、こうした疑問を通じて、ナサニエルは大人になっていく。

The NewYorker [June 18, 2018]

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