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【ワインと脱炭素】小さな工夫がとてもクールな、ペットボトルワインのGarçon Wines

こんにちは、南部です。

今回は、事例紹介になります。
具体的にサステナビリティ、脱炭素に取り組んでいる企業やプロダクトを知って、読者の方にもイメージをわかせてもらえればと思います!

本日紹介するのは、Garçon Wines(以下、ギャルソンワイン)。
ワイン用ペットボトルを開発しているイギリスのBtoB企業です。
個人的には、従来イメージしていたペットボトルワインと違って、スタイリッシュで、かつ効率的な形状に仕上げられているために興味を持ちました。

そのペットボトルがこちらです。

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薄型になっています。単にペットボトルを利用しただけでなく、形を工夫したところにギャルソンワインの良さがあります。

今回はこのあたりを紐解いていきましょう。
本記事の情報と画像はギャルソンワインのウェブサイトから拝借しており、適宜引用元のURLを付しています。

ギャルソンワインの理念

パッケージを革新し、よりサステイナブルなワイン産業を実現する
(原文)Enabling a more sustainable wine industry through packaging innovation

彼らの問題意識はパッケージ、つまりガラス瓶にあります。
それを変革することで、サステイナブルなワイン産業を作っていこう、という考え方です。

ペットボトルの利点

ギャルソンワインのペットボトルは、100%リサイクル素材でできたペットボトルです。以前ペットボトルだったものがリサイクルされ、再びペットボトルになっています(いわゆる、ボトル to ボトル)。
また、キャップ、ラベル含め100%リサイクルすることができます。

ペットボトルとそのリサイクルによって、製造工程でのCO2排出はガラス瓶より少なくなっています。

また、容量は従来のワインと同じ750mlですが、重さは63gで、ガラス瓶より87%軽量化されています。
(ワインのガラス瓶は360g程度から1kgを超えるものまで幅がありますが、平均的には500g程度)

これによって、輸送時の消費エネルギーも削減することができます。

形状を"フラット化"した効果

さらにギャルソンワインのペットボトルで、一際目を引くのは、その形状です。
彼らは、伝統的なワインボトルの形状をフラット化しました。

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それにより、40%の省スペースを実現(つまり60%になっている)。
フラットな形状のおかげで、ボトル同士が接することができるため、隙間が少なくなるのです。

わかりやすいのが、ギャルソンワインの10本ケース。下の2枚の画像を見てみてください。

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かなり効率的に収まっています!
丸いガラス瓶のワインでは、ダンボール内にかなり隙間ができます。その隙間を埋めるように緩衝材や紙も詰められていますよね。

フラットボトルのおかげで荷物のサイズは小さくなり配送時のエネルギー負担はさらに削減されます。
例えばコンテナでワインを輸送する場合、仮にガラス瓶なら2台のコンテナが必要なところを、ギャルソンワインなら1台のコンテナで済むことになります。当然コンテナを運ぶトラックも一台で済みます。

郵便受けに入るワイン

またギャルソンワインは、"LetterboxWine" という言葉を生み出しました。
なんとギャルソンワインは、1本で配送する場合、イギリスの一般的な郵便受けに入る厚さだそうです。

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オンラインショッピングが爆発的に普及した現代ですが、その裏側には宅配便の再配達という負の側面もあります。
何度も戸口まで配達するのが非効率なのはいうまでもありません。
環境にも悪く、配送業者の労働環境にも悪く、購入者もなかなか受け取れないストレスがあります。

郵便受けに入れて配達が完了するのは、これを解決する良い手段になるでしょう。

※ イギリスの郵便ポストの投函口は高さ5.5cm程度。一方日本のポストの投函口は高さ4cmが多いようなので、日本だとポスト投函は難しいかもしれません。

弱み①: 品質が長くは維持できない

一方弱みもあります。

ギャルソンワインでは、1年の品質維持が保証されています。
ワインによっては、12~18ヶ月品質を維持できるペットボトル(※)が使われるようです(FAQ参照)。
DLCコーティングハイバリアPETボトルと呼ばれるような素材と思われます。これについては後日記事にしたいと思います。

いずれにせよ、長く保存するワインには適さないパッケージということになります。
実際のところ、ワインの95%は購入から数ヶ月以内に消費されるので、問題にならないようにも思えますが、在庫リスクを抱える小売業者などにとっては難しい現実です。
回転率の高いワインであれば問題はないでしょう。

弱み②: スパークリングワインは詰められない

炭酸飲料のペットボトルは、内圧を均等に分散するため、丸く凹凸も少ないシンプルな形状である必要があります。
フラットボトルには、残念ながらスパークリングワインを詰めることができません

弱み③: プラスチックの別の課題

プラスチックには、プラスチックが風化し非常に小さなマイクロプラスチックとなって海洋を汚染する問題がついて回ります。
海洋に流れでたマイクロプラスチックを魚が食べ、生態系に影響を与え、魚を通して人間もマイクロプラスチックを食べています。

レジ袋有料化など脱プラスチックの背景はこの点にあります。
脱プラスチックについては別の記事で書く予定ですが、気になる方は、以下の記事などを読んでみると良いでしょう。

これに対してギャルソンワインは、脱プラスチック(plastic-free)ではなく、賢くプラスチックを使うこと(plastic-smart)が重要である、としています。
彼らはデザインと素材を工夫することでリサイクルしやすいペットボトルを開発した上で、消費者にリサイクルを促し、ペットボトルの循環を高めようとしています。

その他の気になるポイント

Q. リサイクルペットボトルはワインの味わいに影響を与えるか

食品等級ペットボトルは非常に安定した不活性素材であるため、ワインと反応したり、ワインの味や品質に影響を与えたりすることはありません
ただしペットボトルは多孔質であるため、時間の経過とともに多少の酸素が侵入します(これが上の品質維持の面に影響しています)。

個人の感想や考察

フラットなボトルは個人的にはかなり惹かれています。

特に冷蔵庫にこんな感じで収まるのが魅力的です。
ワインを冷蔵庫に入れる場合、ガラス瓶だとコロコロ転がってしまいます。その上に他のモノも乗せられないし、一本いれただけで、冷蔵庫が狭くなるような気がします。笑

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パッケージがペットボトルでも、中身のワインに興味があればぜひ飲んでみたいなと思いますが、みなさんはいかがでしょうか?👀

しかしスパークリングワインの場合は全く別のソリューションになってしまうのが残念ですね。
そういえば、ペットボトル詰めのスパークリングワインを僕は見たことがないのですが、あるのでしょうか?もしご存知の方がいらっしゃれば教えてください😃

弱みもあるものの、ギャルソンワインは一つの未来だと思います。
ちょっとした形の工夫で、効率化が進むのは素晴らしいことです。
僕自身は非常にポジティブにとらえています。

ギャルソンワインはジャンシスロビンソン氏などによっても紹介されています。

気になった方はウェブサイトやインスタグラムもぜひ覗いてみてください!

最後まで読んでいただきありがとうございました!
コメント欄やツイッターなどにどしどし感想をお寄せくださいね😊



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