見出し画像

中小企業診断士と観光業

中小企業診断士が観光の仕事で何ができるのか

観光を専門としている中小企業診断士の方は結構います。
私が知っている中でもJTBや日本旅行出身の方もいらっしゃいます。

ただ、観光を専門としていない診断士が普段身に着けていくノウハウでどのように観光業を支援できるか、そもそも観光業とは何かということを考えてみます。

観光業の特徴

観光業は都市部にある小売業、卸売業、製造業、飲食業などとは全然違います。

顧客の獲得

観光関連の仕事はサービス業ですし、飲食と一緒にされていますが、実際はかなり違っています。

観光は基本的にその地域に住んでいる人がいるわけではありません。遠方、近隣といった距離の違いはありますが、違う地域にいる人になります。

そして観光客を獲得しようとしている競合地域はごまんとあります。日本国内だけでなく、世界にもありますし、インターネット内だって競合になっています。

結局、お客さんを呼んでくるためには需要を生み出していき、多数の競合から選んでもらうことが必要になってきます。

商品・サービス

集客できる地域資源があって、乗っかるだけというのもありますが、購買・利用訴求をしていくことはどちらにしても必要です。

大体の場合はお客さんが求めているものは「特別」なものなので、普通のものを置いているだけで満足しません。

「特別」なものの典型が松江市の「ぼてぼて茶」かなと思っています。言ってはいけないのかもしれないのですが、全然美味しくありません。でも観光客に訴求する要素が沢山ありますし、桃鉄の物件にもなっています。

予算獲得

地方の仕事は、国や自治体の補助金活用や金融機関対応支援なども必要になってきます。

行政、金融機関は昔と違い、簡単にお金を出すことはできない状態であり、審査もしっかり行い、地域のためになる、費用対効果が見込まれる、1年後には自主独立して、税金を納められるなどの要件も必要になります。

そうなると事業計画作成や事務処理についても事業者に求められることになってきます。

観光業の問題点

観光業の大きな問題点としては人材不足という点です。特に観光業に必要な事務処理能力、企画力、行動力に優れた人が欠乏しています。

基本的に能力のある人は全て東京に集まるというのがこの国の流れなので、地方には上記3つの能力の高い人は残りません。

事務処理能力の高い人:学歴が高い→東京の大学に行く
企画力の高い人:面白いことが好き→面白いコトが集まる東京に行く
行動力の高い人:我慢できない→都会・東京に行く

事務処理能力の欠乏

新しい事業を起こしていくための事務処理能力はそもそもの能力に加えて、色々な種類の仕事をしていかないと身につきません。

同じ仕事を単純にこなす能力と、新しい企画に関する事務処理能力はかなり違っています。新しい企画を1から実現化していける人というのは、本当にわずかです。

そして、そのわずかな人は皆から取り合いになるので、常に忙しく疲弊もしているというのが、大体のパターンです。

企画力の欠乏

観光業は需要を生み出す、選んでもらうための企画力が必要になります。
選んでもらうということになるとマーケティングの視点が必要になります。マーケティングができる人なんて国内にも少ないですし、地方なんて、ほとんど皆無になってきます。

結果として、大手広告代理店に丸投げして、倉庫の中には奇麗なポスター・パンフレットが眠り、生まれた時に死んでいる、見た目だけ派手なWEBページが出来上がるということになってしまうんだと思います。

行動力の欠乏

全ての事業において必要となるのが行動力です。『ワカモノ・バカモノ・ヨソモノ』と呼ばれる人たちは行動力が高いので、何かを起こすことができるのですが、基本的にはこういった人たちは地域には来ないです。

2023年の出生数は70万人を切るレベルになる中で、地方に優秀な若者が残るわけがありません。大阪ですら優秀な人はほとんど残っていません。

大学生の数からみても、東京都は70万人、大阪府は20万人、愛知県は17万人です。3つの都府県で100万人を超える人口を吸収します。

行動力のない人が何人いても新しいものは生まれません。
新しいものがなければ、人は行こうと思わないので、地域が衰退する悪循環が進んでいきます。

観光業を支援する上で必要なスキル

調整力

観光業を支援する上で診断士に最も重要なのは調整力だと思います。

スケジュール調整
企画調整
意見調整
・・・まだまだ調整が必要なものはたくさんあります。

観光業は単独では成り立ちません。いろいろなスポットだったり、団体だったり、アクセス手段だったりを調整して、発信していくことが必要になります。

調整が難しいのは間違いないのですが、そうなると石川県の加賀屋だったり星野リゾートのような一つのホテルで、宿泊、お土産、アクティビティ全てを賄う企業のほうが早くて楽、質も高いという流れになっていきます。

地域に強い企業ができると、地域全体としては落ち込んでいくという問題もあります。行政的には楽でありがたいでしょうけど。

診断士としての調整力を磨いていくにはやっぱり「まちづくり」や「商店街・団体支援」を行うことが必要な気もします。

実行力

基本的には実行力が欠乏しているので、強引にでも進めていくような実行力が必要になってきます。

待っていても動かないので、大体の場合、支援というのはお尻を叩く必要があります。

頭で考えるだけというのは、中小企業診断士のコンサルティングではないと考えています。

実行力を磨いていくのはやっぱり、民民でのコンサルティングしかないように思います。窓口支援で実行支援はなかなかできないですし。

数字力、計画策定力

最終的には診断士の支援は儲けてナンボの世界だったりします。儲からない支援は続きませんし、価値はありません。

マネタイズをするための数字の力、関係者と方針を共有できる資料作り能力もやっぱり必要になります。

この能力は再生支援や企業分析をしていくことで磨かれるように思います。

この記事を書いた理由

観光の仕事をしたいと発信しているので、ちょっとぐらいは観光について記載しておいた方がいいかなと思ったので。

ちなみに、私が関与させて頂いている観光要素が高い企業様の支援は徐々にですが、いい方向に進みだしています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?