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女性国会議員を10年で30%に。どうすれば実現できるか。

6月19日、自民党は女性国会議員の比率を30%まで増やす10年計画を発表しました。遅れを指摘されてきた女性の政治参加について、自民党がリーダーシップを持って進め、多様性の尊重と包摂的な社会の実現にコミットする歴史的な一歩を示すものです。

歴代総理のポートレートが並ぶ自民党総裁室で基本計画を岸田総裁に手交。

「10年間、党のモメンタムとして維持していくためにも、目に見える形で方針を示し努力を続けることが大事。」

と岸田総裁。計画はあくまでスタートであり、その内容を着実に進めるよう、力強い指示を頂きました。

基本計画を岸田総裁に手交(2023.6.19)

昨年11月より約7ヶ月間。党改革実行本部の上川陽子座長の下、事務局次長としてこのプロジェクトの企画・立案に関与し、実際の計画の起草にも深く関与してきた立場から、今回の基本計画策定の経緯と意義についてご紹介します。

なぜ女性の政治参画が大事か

今年1月にフィンランドを訪れ、サンナ・マリン首相(37)と面談した際に非常に印象的だったのが、彼女からの以下の指摘でした。

「なぜ日本では女性の政治家が少ないのか。国内では議論になっていないのか。」

マリン首相との面談(2023.1.13)

マリン首相の指摘する通り、日本の女性の政治参画の遅れは、深刻な問題として国際的にも広く知られています。世界経済フォーラムのジェンダーギャップ指数では2022年のわが国の政治分野での順位は139位と極端に低く、アジア諸国の中で韓国や中国、ASEAN諸国より低い結果となっています。現在日本の国会議員に占める女性議員の割合は衆参合わせて15%に留まるなど、諸外国と比較し国会議員や閣僚、首長などの女性比率が低いことが原因です。

国政における女性政治家の割合の国際比較(令和4年版男女共同参画白書)

政治分野における男女のバランスがなぜ重要なのか。その背景には多様な視点と経験の共有が、より質の高い意思決定と政策形成をもたらすという考えがあります。妊娠や子育て支援など女性にとって特に関心の高い政策分野も多く、またそれ以外の政策テーマにも女性の視点が反映されることにより、社会全体の納得と理解が進み、より包摂的で公正な社会の実現に近づくことが期待できます。さらに政治分野での女性ロールモデルの活躍は、経済界や社会活動など多様な分野での女性の登用・活躍を進める上でも大きな原動力となります。

こうした考えから、第5次男女共同参画基本計画(令和2年12月25日閣議決定)においては、「政党に対し、政治分野における男女共同参画推進法の趣旨に沿って、国政選挙における女性候補者の割合を高めることを要請する。その際、衆議院議員及び参議院議員の候補者に占める女性の割合を35%以上とすることを努力目標として念頭に置く。」として政府から各党に対して要請が出されています。

ガバナンスコードが党改革の起点に

長年深刻な問題として指摘されながらも、なかなか前に進まなかったこのテーマ。党改革実行本部では、この難しい党改革の推進に向けて知恵を絞ってきました。

昨年6月、党改革実行本部で提案し、日本の政党として初めて導入された自民党のガバナンスコード。その原則2-1に、党として女性活躍のための基本計画を策定することが明記されたのは大きな一歩でした。

原則 2-1 :各級女性議員の育成、登用に関する基本計画の策定
本党は、わが国の政治分野における女性活躍の更なる進展を最優先の重要課題
と位置づけ、これに全力で取り組む。本党は、政治分野における男女共同参画の
推進に関する法律及び男女共同参画基本計画の趣旨に則り、女性の国会議員及
び地方議員の育成、候補者選定、登用に関する中・長期的な基本計画を策定し、
各ステージでの積極的な取組みを通じ、その実現に努めるとともに、組織運動本
部及び女性局のもとで基本計画の進捗を継続的に確認し、検証する。

自由民主党ガバナンスコードより

その実現に向けて、昨年11月より、基本計画制定に向けた検討が静かに始動しました。丸川珠代参議院議員を座長に、坂本哲志座長代理、牧島かれん事務局長、小林史明事務局次長などと一緒に特命チームを組み、実効性ある計画の形を模索しました。

なぜ女性議員が増えないのか。その要因を把握するためにまずは当事者の意見を徹底的に聞こうということで、今年2月に自民党の女性国会議員、地方議員、立候補予定者などに広くアンケートを実施し、200名以上の方からご回答を頂きました。続く意見交換の中でも実体験に即した多くの切実なご意見・提案を頂き、基本計画づくりの大きな参考となりました。

アンケート回答抜粋
・地方のボトムアップに頼らず、党本部からある程度強制力のある公募の指示が必要
・子育て中の女性は配偶者や親世代の協力の有無で立候補を躊躇してしまう
・地域の有力者からセクハラやパワハラを受けることがある
・子供の面倒を見ながら参加できるオンライン形式の研修は有難い
・プライバシー侵害やSNS上のトラブルが怖い
・知識の偏りをなくす学びの場を設けてほしい

党改革実行本部「女性議員・女性局・講座受講者アンケート」

数値目標導入の是非

基本計画策定における最大の焦点は、具体的な数値目標を書き込むか否かでした。

当初は、「議席を得るべきは能力のある者であって、性別による区分は不適切。まずは人材育成に取り組むべきだ。」として、数値目標の設定に消極的な意見もありました。一方で、長年この問題に取り組んでこられた先輩議員などからは、「自然体ではいつまで経っても現状は変わらない。単なる数値目標では不十分で、クオータ制(数値義務)のような、より強制力のある制度を導入するべきだ。」とする声もありました。

繰り返し議論を重ねていく中で、現状の女性議員の割合があまりにも低すぎること、能力と志があっても女性が立候補を決意することは容易でない現状があること、現状の早期改善に向けて実効性ある具体策が必要であることについては、多くの議員が意見の一致を見ました。そして、執行部の体制が変わっても中長期的に取り組みを持続させる仕組みとして、数値目標を導入する方針が固まりました。

30%という数字についても議論を重ねました。現状で女性国会議員の割合が12%に満たない我が党において、現職も大勢いる中で10年で30%という目標値については、実現困難ではないかと危ぶむ声も一部ではありました。しかし過去の選挙データから何度もシミュレーションを行い、覚悟を持って様々な改革を実施すれば、実現することは決して不可能ではない水準として30%を書き込むこととしました。

数値目標の実現に向けて

10年で30%という目標の達成は容易ではありません。そこで、私たちはアンケート結果などを踏まえ、候補者の発掘・選考過程と、選ばれた候補者が当選するための支援策として実効性あるメニューをできるだけ盛り込みました。

候補者の発掘・選定に関わる施策
・選挙区での原則公募による候補者の選定
・衆議院の比例代表上位を女性に
・参議院比例代表において積極的に女性を擁立する
候補者に対する支援策
・女性候補者支援金制度の創設
・ベビーシッターや一時保育の利用料等の費用負担
・ハラスメント、ストーカー対策の強化

自民党 女性議員の育成、登用に関する基本計画

これら支援金制度やハラスメント対策については早急に具体的設計を進め発表したいと考えています。一人でも多くの能力と志を持った女性が、安心して政治の世界に挑戦して頂ける環境を整えていきます。

また過去には総裁や幹事長が交代するたびに、女性議員を増やす取り組みがリセットされてしまう課題がありました。そこで、この基本計画が持続可能なものとなるために、党改革実行本部として正式に計画を機関決定すると共に、外部有識者を含むガバナンス委員会が毎年進捗状況をチェックする仕組みを導入しました。

計画策定に取り組んできた党改革実行本部のメンバー

自民党の長い歴史の中で初めて機関決定された女性議員の活躍に関する基本計画。この基本計画の実施が、より豊かで包摂的な社会の形成につながると信じています。基本計画に書き込んだ様々な施策の推進に向け、引き続き全力で取り組んでまいります。

これからもご支援とご協力をよろしくお願い申し上げます。

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