見出し画像

リファレンスチェックの世界史と未来について

このnoteは私自身が「リファレンスチェック」という採用手法について、自身でリファレンスチェック領域の事業立ち上げをする過程でリサーチした、世界各国のリファレンスチェック事情をまとめたものです。このnoteを読むだけでリファレンスチェックについての理解が深まって貰えたら嬉しいという想いの元記載しています。

本記事の日本編だけは「リファレンスチェックの日本史と未来について」へ別記事に分けておりますので、そちらも良ければご覧ください。

リファレンスチェックとは?

皆様「リファレンスチェック」というワードはご存知でしょうか?

「知っているが体験したことはない」「リファレンスチェックを実施したことがある」「初めて聞いた」等、色々な感想があると思います。

リファレンスチェックとは人材の採用時に選考フローの中で、企業が、採用候補者をよく知る人に「採用候補者はどんな人物・性格なのか?」などの客観的な意見を詳しく聞ける採用手法です。

画像1

皆様も仕事やプライベートで、初対面の人と出会って、数ヶ月ほど時間を共にして初めて「この人、こういう一面もあるんだな」「第一印象と違ったな」と思われたご経験は必ず誰しもあると思います。

初対面から1,2回の話し合いで深く相手のことを知るのは非常に難しいことであり、この難しいことを企業の採用担当者の方々は日々、採用面接の中で行っているのです。

その時に価値を得ることができるのがリファレンスチェックです。「この人は本当はどんな人なんだろう?」という疑問を、採用候補者のことをよく知る人(上司・同僚など)からの評価を取得することで、そのニーズに対応します。

これがいわゆる「リファレンスチェック」です。元々言葉の意味を知っていた方もそうでない方も、「リファレンスチェックとは何か?」について伝わったのではないでしょうか。

リファレンスチェックについて理解したところで、早速世界各国のリファレンスチェック事情を見ていきましょう。

アメリカのリファレンスチェック事情

世界を常にリードしてきたアメリカでもリファレンスチェックの歴史は深く、現在も非常に一般的に実施されています。

「リファレンスチェック」というワード自体も元来アメリカから来ているものです。

リファレンスとは「推薦状」の意味もあり、アメリカは推薦状に関して古い歴史がある国です。例えば、アメリカで大学入学時には、必要書類に推薦状があり、大学入学時に高校の先生からの推薦状が必要だったりするのですね。他にも就活時に教授からの推薦状、転職時には上司からの推薦状など、自分が審査されるあらゆる機会に「推薦状」が必要となる文化です。アメリカは日本に比べ、ネットワーキング社会の面が強く「自分が誰に推薦されているか」はとても重要な要因なのですね。

このような文化もあり、アメリカではビジネス上の繋がりを形成するSNSであるLinkedinなどが非常に普及しています。アメリカでは国民の50%程度がLinkedinアカウントを持っており、ビジネスはLinkedin、プライベートはFacebookという利用が一般的です。日本でもLinkedinは使われていますが、現在、日本での登録者数は人口の1~2%とされているので、アメリカでの利用率と比べると大きな差がありますね。

この辺りもアメリカの推薦状文化が色強く、例えば採用面接で応募が来た採用候補者のLinkedinアカウントを見て、共通の知人を探し「この人ってどんな人かな?」とリファレンスチェックするようなシーンは非常に多くあり、Linkedinを通じたリファレンスチェックは一般的に行われています。また終身雇用制度で発展した日本と比べ、転職文化が強いので、そもそもキャリアの中で平均転職回数が日本より多いので、リファレンスチェックが必要となるシーンも多いのですね。

アメリカでは、Linkedinを活用したリファレンスチェックも特徴的ですが、リファレンスチェックに特化し、近年日本でも普及しつつあるWEB上の操作で全て完結する、オンライン完結型のリファレンスチェックサービスも数多くあります。いくつか参考に、公開されているデモ動画などを添付します。

上記のような観点からアメリカでは、リファレンスチェックがかなり一般的に浸透しているのが伺えますね。またアメリカは単一民族国家の日本と比べて、移民によって成り立つ多民族国家なので、多種多様な経歴を持つ人が生活しています。そのため、負の側面として日本よりも経歴詐称が多く、悪徳な卒業証明書や履歴書の偽装業者などもあり、リスクヘッジとして、バックグラウンドチェックも盛んに行われ、専門の調査会社なども存在します。

このようにアメリカではリファレンスチェックや、日本で「背景調査」と言われるようなバックグラウンドチェックもリスク管理の上で必要不可欠な採用手法として、浸透しています。

また採用領域ではなく、ローンの審査などでは「FICOスコア」と呼ばれる信用スコアがアメリカでは利用されていたりもしており、アメリカはあらゆる分野での個人の信用評価の仕組みは非常に整った国であると言えるでしょう。

中国のリファレンスチェック事情

中国は元来、社会主義国家として発展した平等性の強い国でしたので、全員が平等だと競争が少ないため自分の経歴をよく見せようとするインセンティブなどが働かない国でした。そのため、中国は元々、経歴詐称したり経歴や実績を盛ったりする事などは少ないという事情がありました。皆平等なので、自分をよく見せたいといった気持ちが薄いのですね。

但し、90年代に突入して中国でも市場経済が発展し、民間企業の成長が目覚ましい昨今においては、徐々に経歴詐称なども増えてきており、近年は中国でもリファレンスチェックや、バックグラウンドチェックのニーズが増えてきています。実際にリファレンスチェックなどの採用調査を行う民間企業が増えてきているようです。

その時用いられる調査手法として、1つは中国の公安局から候補者の犯罪歴の有無を確かめるため、「無犯罪証明書(Certificate of No Criminal Conviction)」を取得する方法があります。中国では国民の犯罪歴が全て公安局により管理されています。中国では犯罪歴があると会社の取締役や管理職など、一部のポジションには付けないという制限もあるため、近年よく公安局の無犯罪証明書は採用時に利用されているようです。無犯罪証明書は、候補者本人に取得して貰う場合や、候補者の代理人として、第三者の業者経由で取得する方法などがあります。

また、中国では採用時に、候補者の学歴確認なども頻繁に行われます。これには、中国政府が運営する学歴認証センターが発行する「学歴認証報告書」を取得する方法がよく用いられます。中国政府のウェブサイトを通じて、中国または海外での学位取得などの証明を確認できます。

(↑中国の学歴認証センターは日本語でも利用できるようになっています)

また、採用時のリファレンスチェックの実施も増えてきており、転職時などに企業から依頼して、候補者に前職の職場からリファレンス(推薦状)を取得して来てもらうというケースも増えているようです。特に役員などの重役の採用の場合はかなりの確率でリファレンスチェックは実施されています。

近年、履歴書や卒業証明書などの偽造業者も増えてきている中国でリファレンスチェックやバックグラウンドチェックは益々重要性が増してきている事情があるようですね。

また中国では日本の「個人情報保護法」のようなプライバシーに関して明確に定義された法律はまだなく、プライバシーの定義や線引きがやや曖昧な状況です。しかしながら無犯罪証明書や、リファレンスチェックなどは、プライバシーを考慮して明確に候補者の同意を求めるケースが増えてきているようです。

中国では、他国のように採用時にオンラインでのリファレンスチェックツールが使われているとはあまり聞かず、採用文脈とは少し逸れますが、個人の信用評価手法としては、アリババグループのアント・フィナンシャル社が運営する個人信用スコアリングサービス「芝麻信用(Zhima Credit)」などが特徴的です。

芝麻信用はAI技術により個人の信用評価を行っており、ユーザーは一人ひとり350~950点の信用スコアが算出されます。この信用スコアを芝麻信用は、クレジットカード、融資、ホテル、不動産、レンタカー、旅行、結婚恋愛、公共事業など、幅広い業界に信用調査サービスとして、提供しています。

芝麻信用の信用スコアが高いユーザーは、レンタカーやホテル予約のデポジット金の免除や、ローンが金利優遇で組めたり、病院や図書館などの公共施設でも優遇されたりと多くのメリットが享受できるようになり、非常に特徴的な個人の信用評価構造が構築されています。

芝麻信用の信用スコアが人材採用時に使われているという事例はあまり聞きませんが、中国では、まだ個人の信用評価構造の土台が未成熟な状態から、近年の急激な経済成長を迎えているため、今後、採用領域でも「芝麻信用」のような非常に先進的なテクノロジーを活用した新しいリファレンスチェックのツールや文化なども出来ていくのではないでしょうか。

東南アジアのリファレンスチェック事情

近年、発展が目覚ましい東南アジアでもリファレンスチェックとバックグラウンドチェックは頻繁に行われています。例えばインドでも、人材採用時に候補者の住所、学歴、犯罪歴の確認のため専門の調査会社への委託や、候補者の同意をとった上で、前職の企業へメールや電話などでインタビューをするなどのリファレンスチェックが一般的に行われています。

インドも中国と同様、プライバシーについて定義された法律はまだありませんが、リファレンスチェック実施時などは、候補者へ書面の同意を求めるなどのコンプライアンスやプライバシー配慮への対策はなされているようです。

またインドでも、WEB上で全て完結するオンライン完結型のリファレンスチェックサービスも導入され始めています。ご参考にいくつかインドや東南アジアで導入事例のあるリファレンスチェックサービスのデモ動画を添付します。これ以外にも多くのサービスがあり、今後人口が増え、経済発展が見込まれる東南アジアでも、リファレンスチェックの需要は益々高まっていきそうですね。

また、東南アジアでは銀行口座やクレジットを持てない人たちがとても多く、国として個人の信用評価の土台が出来ていない国が多く、中国の「芝麻信用」のような個人の与信を評価する信用スコアリングサービスも多く出始めています。今後の発展につれて、どんどん信用評価の構造も整っていくのではないでしょうか。

ヨーロッパのリファレンスチェック事情

ヨーロッパでもリファレンスチェックのニーズはあり、バックグラウンドチェックなどと併せて実施されますが、ヨーロッパでは、GDPRなど個人情報やプライバシーに関する法律が非常に明確に定義されており、そちらに従い、他国と比べて厳密にリファレンスチェックが行われています。

近年、EU諸国の中で多数のユニコーン企業を輩出し、ヨーロッパのスタートアップの聖地として注目され始めているドイツのベルリンではオンライン完結型のリファレンスチェックサービスが大型資金調達をするなど、テクノロジーを活用したツールも出始めています。

EU諸国で国をまたぎ、個人のプライバシーに関する法律が制定されているヨーロッパでは、アメリカ、中国、日本とも違った独自のリファレンスチェックツールやその文化が浸透していくのではないでしょうか。

アフリカのリファレンスチェック事情

アジアに次ぎ、これから人口爆発が起き、経済が発展していくアフリカでもリファレンスチェックは実施されています。

南アフリカなどでは、明確に個人情報保護法(POPI)が制定されており、そちらに従って候補者のプライバシーを考慮した上で、リファレンスチェックやバックグラウンドチェックが実施されます。

そのため、リファレンスチェックや、経歴確認、身元確認などを代行する業者も複数存在し、企業は調査会社に委託してリファレンスチェックをするケースも多いようです。まだアフリカでは有名なオンライン完結型のリファレンスチェックサービスは出てきていないようですが、他先進国のようにこれからの国の発達によりリファレンスチェックのフローもテクノロジーが活用されたものになっていくことでしょう。

また、アフリカでは銀行口座を持っておらず与信がなくローンが借りれないなどの課題を抱える人も多く、超小額の融資の返済履歴から個人の与信をスコアリングしたり、村集落内の集金システムをスマホで自動化して信用スコアリングをする仕組み、ライドシェアサービスの利用履歴からの与信評価など、多くの信用スコアリング事業が立ち上がっています。

今後、個人の信用評価の構造もどんどん革新的な方法で発展していくことが見込まれます。

最後に

いかがでしょうか?このように地球上のあらゆる国でリファレンスチェックは実施されています。「その人が本当にどんな人なのかを知りたい」というニーズは国境関係なく、根源的なニーズなのですね。

私達の暮らす日本でもこの数年で多くのオンライン完結型のリファレンスチェックサービスが多く出てきています。今後、日本のみならず世界全体で、より個人の信用の仕組みはアップデートされていくのではないかと考えています。

日本のリファレンスチェック事情をまとめた「リファレンスチェックの日本史と未来について」も良ければご覧ください。

国によっては人力での調査が主だったり、テクノロジーの発展が進んでいる国だと、オンライン完結型のリファレンスチェックサービスを活用したりと手法は様々ですが、これから更にテクノロジーを駆使した様々な手法、サービスが出てくることは間違いないのではないでしょうか。

私達は「Parame(パラミー)」という「個人の信用のアップデート」をミッションにオンライン完結型のリファレンスチェックサービスを運用しています。

私達は「リファレンスチェック」というソリューションを切り口に個人の信用をアップデートし、一人ひとりの個人がありのままが認められ生きていける世界を作ろうとしています。

下記の記事にParameのビジョンやミッションなども記載されていますので、良ければお読み下さい。

是非、ご声援等頂ければ幸いです!ご連絡はParameお問い合わせ窓口や代表の私個人のTwitter , Facebookなどよりお気軽にお待ちしています。