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12 その日暮らしと、余裕がある暮らし

12 2つの暮らし自転車操業と余裕資金

妊活や、体調管理など、多くの患者さんを拝見できるということは、臨床家にとっては非常にありがたいことです。

そして患者さんのさまざまな訴えや、お身体を拝見することから多くの発見がありました。

☆生きることの二つのフェーズ:
    自転車操業と、体力の余裕資金

生きることは二つのフェーズがあることも、このころ痛感しました。

私達は日々を生きています。

その日々が、ただただ、一日をすごすことだけで精一杯なのか、余裕があっての日常なのかは大きな違いがあります。つまり、自転車操業的な日々と余裕資金のある日々です。自転車操業でも、なんとか、一日がすごせれば、生きていけます。なんとか、今日食べた食事で、今日生きていける。
そんな状態です。

ただ、ちょっとした出来事、たとえば、『寒い』とか、『仕事がきつかった』『睡眠不足』などがあると、自転車操業的な体力では、ちょっとしたことに対して対応することが困難となり、全身の不調となってしまう方がいらっしゃります。

このちょっとした出来事を柔軟に受け止め、全身の不調にまで波及させないようにするのが、体力の余裕資金です。これは人間の体力でも同じ事です。人生の様々な場面で、体力の余裕資金は私達の人生をバックアップし、安定させてくれます。この体力貯金が妊活では、子宮を支え、赤ちゃんをはぐくみ、出産後の授乳、子育てを支えます。

また、寒い、熱い、忙しい、寝不足などがあっても、柔軟に対応出来るようになります。この体力貯金がないと、ちょっとしたことがきっかけで、重篤な状態に陥ってしまいます。

風邪は万病の元といいますが、風邪がちょっとしたことで終わるのか、万病になっていってしまうのかも、この体力貯金の有無がおおきくかかわるのだなと、気がつき始めました。

☆女性の人生における、体力の余裕資金


女性にとって、生理があるリズムが日常です。卵胞が生理周期に并せ育ち、排卵し、子宮内膜を肥厚させ、妊娠が成立しなければリセットとして生理がきます。

この生殖のプロセスは、あたかも日常生活のように女性は感じますが、生理があってもなくても、私達が日々生きるのにはかわりがありません。
つまり、生殖のプロセスそのものが、体力の余裕資金を前提としています。

生殖は腎気の支えを基本とします。

体力預金がなければ、なんとか生理はきますが、疲れた、緊張していた、冷えた、こんなことによって日常のリズムである生理は乱れます。

東洋医学では、その体力資金、特に生殖の場合の体力資金を腎気としています。子宮は腎気の支えによって養われています。

子宮は腎気に支えられています

支えがあれば、生理周期はスムーズに進み、リセットされます。

腎気の支えが不足する生理の状況って?

腎気の支えが不足した余裕資金のない方は、
生理ー妊娠という観点では

  • 生理周期の終わり頃の高温期が辛くなります。

  • 生理そのものに疏通の悪さがあれば、生理痛がひどくなります。

  • 不妊の原因になります。

  • 卵胞が充分に養われない、子宮内膜が充分に厚くならない。

  • 成立した妊娠が継続しにくくなります。


妊娠ー出産という観点では

  • 身体そのものの大きな傾きとなる(気血両虚)

  • 出産がスムーズにすすまない

  • 産後の育児、授乳がきつい

  • メンタルの不調につながる


出産というのは大きな気血の虚損を伴います。
このときに、充分な腎気の支えがあれば、一連の出産から授乳、育児の流れがスムーズにおこなわれ、1年ほどで授乳がおわれば、自然と生理が回復し,次の妊娠に再スタートできます。

体力の余裕資金がなく気血両虚をおこしてしまえば、産後のメンタル不調につながりますし、リウマチ喘息などの虚損病が発症したりということもおこってしまいます。

妊娠などの生殖が、女性の人生において一番、体力の余裕資金があるであろう年代に限られるのも納得ができますし、この時期の充実が強くのぞまれます。

☆火事場の馬鹿力が出せるように


体力の余裕資金はなにかあったときに、私達を力強く守ってくれます。
つまり、『火事場の馬鹿力』です。
火事になった! そんな緊急事態に
ざくっと力をだし、力強く周りを守り、逃げる。
こんな力を密かに備えておくのが人間の身体のつくりです。


☆余裕資金の積み増しの難しさ。

患者さんの話を伺っていると、この二つのフェーズがごっちゃごちゃになっているような方が多くいらっしゃります。

たとえば、『身体の体力をつけたいんです』と仰り、一生懸命マラソンしていますと。この文脈、もともとの素体の力がある、つまり余裕資金がある方ならば余裕資金の積み増しとなるかもしれません。

しかしながら、もともと体力の余裕資金がなく日々の自転車操業的な日常だけが精一杯な状態の方であれば、こんな負荷は、単なる過重労働にしかならず、日常に大きな負担となり、もともと少なかった体力の余裕資金を削ってしまう結果になってしまいます。

体力の余裕資金の積み増しは、案外難しいんだなということを痛感しました。

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