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I think of you. (3) ピンチの時に駆けつける

何度も何度も言っているが、私は友達が少ない。
そして泣き虫である。
これはその数少ない友達の中のひとりのはなし。

***

数年前、仕事が立て込んでいて、しかもトラブル続きで、精神的に疲弊していた。
ひとり仕事をしている人は、誰にも相談できず悩みや愚痴を溜め込みがちだが、例にもれず私もそういうタイプである。

とうとう我慢できず、友人のひとりに電話して話を聞いてもらおうと思ったのだが、電話口から彼女の温かい声が聞こえてくると同時に、滂沱の涙が溢れ、わあわあと子供の様に泣いた。
何で泣いているのか上手く説明なんかできなかった。理性も感情もぶっ飛んでいた。彼女は泣いている私を優しく受け止めてくれた。

ひとしきり泣いて、少し会話を交わし、電話を切った。

恥ずかしさと情けなさでいっぱいの頭を引きずりながら仕事をしていると、携帯が鳴った。
彼女からだった。

「今、マンションの前にいるんだけど、部屋番号がわからなくて…」

彼女と私の家は車で30分くらいの距離で、電話を切った後に車を飛ばして会いに来てくれたのだ。
私は「来てほしい」とも言っていないし、会いに来てくれるなんて思ってもみなかった。

マンションのエントランスから飛び出すと、そこには彼女が笑顔で佇んでいた。
恥ずかしさと嬉しさで私の顔はぐちゃぐちゃだったと思う。
おまけにすっぴんで、着替えもせず、ゆるい仕事着のままだったと思う。

そのまま私たちは彼女の車に乗って近所のカフェに行き、お茶をしながらひとしきり話し、別れた。

***

自分がピンチの時に友人が駆けつけてくれる、という経験はそれが生まれて初めてで、帰宅した後もそのスペシャルな出来事に胸がいっぱい、高揚感に包まれていた。

何かが解決したわけじゃない。
何か代わりにしてくれるわけじゃない。
責任を半分請け負ってくれるわけじゃない。

理解してくれなくても、全部分かり合えなくても、ただ寄り添ってくれるだけでこんなに満たされる。
寄り添おうとしてくれる気持ちと行動だけで、本当にありがたいし、勇気が湧いてくる。

大切な人がピンチの時、私も駆けつけたいと、そういう人間でありたいと強く思うようになったきっかけになった出来事でもある。

ありがとう。
ありがとう。
ありがとう。

私はあなたを一生大切にします。

#エッセイ #コラム #友達 #友情 #人間関係

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